第624話 魔王の目的
「終わりじゃ、ナナシとやら……勇者様の手を煩わせる必要もない、儂の手で楽にしてやろうではないか」
「待ってくれ、まだこいつから情報を聞き出せるかもしれない」
「むっ……口を割るような奴には見えんが?」
カレハは仲間の仇を討つために止めを刺そうとしたが、それをリルが止める。ナナシを捕まえた以上は彼から情報を引き出すため、生かしておく必要がある事を告げ、レイナに任せる。
先ほどは我を忘れて止めを刺そうとしたレイナだったが、ナナシが生きているのならば「解析」の能力で情報を読み取る事は出来た。そして今のレイナの解析の能力ならば質問無しでもナナシに聞き出したい情報は表示される。これも毎日のように解析の能力を使い続けた結果、彼女の能力も成長していた。
(こいつらが街を襲った目的は何だ……解析!!)
心の中で解析を発動させる事を念じると、瞬時に詳細画面が表示されてナナシが知る限りの情報が表示される。文章を読み取るのに時間が掛かるが、それを考慮してレレイナは事前に「速読」という技能を身に付けている。
『速読――あらゆる文章を瞬く間に読み解く事が出来る』
『暗記――短時間で文章を記憶する』
この技能のお陰でレイナは以前よりも文章を読み解く速度が上昇し、瞬時に知りたい情報を読み解けるようになった。その結果、ナナシが知る情報の中で自分が知りたい内容を探し出して記憶する。その結果、ナナシ達の計画の全貌を知った――
――魔王軍の目的は王都の壊滅、そして魔王と呼ばれる存在をこの地へ降臨させるための準備だった。魔王軍の幹部が直々に王都へと乗り込み、混乱の最中に彼等は勇者であるレアを捕縛するのが狙いだった。
どうして勇者であるレアを殺すのではなく、捕縛するのか問うと、それは魔王を呼び出す事に関係する。魔王にとって勇者は討ち取るべき存在ではなく、自分がより優れた力を手に入れるために必要な存在だったからである。
そして3人の勇者が存在するヒトノ帝国ではなく、このケモノ王国で保護された勇者を選択した理由、それは単純に4人の勇者の中で最も優れた能力を持つ者がレアである事を魔王が判断したからに過ぎない。レアの力を狙った魔王は魔王軍の戦力を投入し、彼等に捕縛を命じた事をレイナは知った。
「まさか、お前達の目的は……!?」
「……俺の記憶を読み取ったか、だが……もう遅い。あの方は間もなくこの地に訪れる」
「だ、団長!!見てください、街のあちこちから狼煙が……!!」
「何だと!?」
兵士の言葉にレイナ達は振り返ると、街のいたるところで「赤色の煙」が舞い上がっていた。それを確認したレイナ達は街に見回りに出向いた白狼騎士団の騎士達が緊急事態を告げるために煙を上げた事を知り、その光景を目にしたナナシは笑みを浮かべる。
「あの女狐もようやく動いたたか……ならば、俺の役目はもう終わりだな」
「ふざけるなぁっ!!」
「レイナ!?」
ナナシの言葉にレイナは拳を振りかざし、勢い良く叩きつける。その結果、ナナシの顔面が陥没し、もう喋る事も出来なくなった。そのレイナの行動に他の者は驚くが、すぐにレイナは指示を出す。
「この王都に牙竜の群れを引き連れたジョカが近付いている!!いや、もう乗り込んでいるかもしれない!!」
「牙竜だと!?」
「まさか、あの狼煙は……!!」
「それだけじゃない!!」
牙竜の群れが襲来するという言葉に全員が動揺する中、レイナは更に驚愕の事実を告げた。
「雷龍ボルテクスがこの王都へ向かっている……奴が、魔王の正体だ!!」
「なっ……」
「雷龍は操られているんじゃない、雷龍こそが魔王だったんだ!!」
『っ――!?』
信じがたいレイナの言葉に誰もが動揺する中、ここで空を見上げると、王都へ向けて接近する黒雲が見えてきた。もう間もなく、この地に雷龍が乗り込んでくるという事実に全員の顔色が変わった――
※短めですが今回はここまででにしておきます。
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