第359話 ガオとガームの逃走
「待て、落ち着け!!落ち着くのだ!!」
「……ガーム将軍、これが落ち着いていられるか!!」
「その通りです!!どうして……どうして国王様の遺体にガオ王子が作り出した騎士団の剣が刺さっていたのですか!?」
「し、知らない!!僕は何も知らないんだ!?」
ガオとガームの元に兵士達は集まり、武器に手を伸ばす。それを見たガームはこのままでは自分の甥が国王を殺した犯人に勘違いされると考え、まずは兵士達に冷静になるように促す。
「落ち着け、お前たちの気持ちはよく分かる!!だが、まずは冷静になるのだ!!」
「冷静になれだと……そういうガーム将軍はどうしてそこまで落ち着いていられるのですか!?国王様が、国王様がお亡くなりになられたのですぞ!!」
「それは……」
「た、隊長!!ここに倒れているのはユダン様です!!国王様の専属治癒魔導士のユダン様で間違いありません!!」
「何だと!?」
近衛隊長の男はガームに怒鳴りつけると、すぐに彼の配下の兵士が倒れているユダンに気づき、慌てて様子を確認すると既に死亡している事に気づく。しかも死に方が普通ではなく、毒物の類であると一目で分かる。
どうして国王の治療を行っているはずのユダンがこんな場所で死んでいるのか、しかも死に方が毒殺という事に兵士たちも戸惑う。だが、ここで近衛隊長はガームが手にしている武器に気づいた。
「ガーム将軍、それはなんですか?何を持っておられるのですか?」
「何?こ、これは……」
「見た事もない武器ですな……そもそも、どうしてここに貴方と王子がいるのですか?王子は謹慎を言い付けられていたはずですが……」
「そ、それは父上が危篤と聞いてやってきたんだ!!父上が僕を呼んでいると使者が訪れて……」
「そんな話は我々は聞いていない!!我々は国王様から王子を呼び出すなどと言う連絡は受けていませんぞ!!」
「何だと!?」
近衛隊長の言葉にガームは驚き、彼のガオが国王の危篤である事を使者から伝えられ、呼び出されたと話を聞いていた。ガームも王都にて勇者が訪れたという情報を聞き、ガオが王位継承権を剥奪されたという話を聞いて駆けつけてきたのだが、ガオから国王が危篤状態に陥ったという話を聞く。
どうしてそんな重要な情報が自分の元に届かなかったのかとガームは戸惑うが、急いで謹慎中のガオを連れ出して彼は王城へ乗り込んだ。だが、近衛兵はそのような使者を王子に派遣したなど聞いておらず、そもそもガームが訪れている事も怪しむ。
「ガーム将軍もどうして今日、この場所にいるのか答えてもらえますか!?将軍が訪れるなど我々も聞いておりません!!」
「落ち着け、私も国王が危篤状態であると聞いてここへ訪れたのだ!!」
「では、その武器は何なのですか!?答えてもらいましょうか!!」
「これは……」
ガームはここで未だに自分が襲撃者が所持していた「クナイ」を持っている事に気づき、倒れているユダンと彼が倒れている通路に存在した自分とガオに疑いを掛けられている事を知る。
状況的に考えれば近衛隊長が本来はここへ立ち入る事が禁じられている王子と、事前に連絡もなしに王城へ乗り込んできたガーム、更には得体のしれない武器に倒れているユダンを見れば怪しむなという方が無理な話であった。
「ガーム将軍、貴方の事は尊敬しておりますが、今この状況では我々は貴方達を疑わざるを得ません!!どうか抵抗せず、ご同行を願えますか!!」
「ぬうっ……!!」
「な、何だと!?まさか、お前たち……この僕が、父上を殺したというのか!?」
近衛隊長の言葉にガオは顔を真っ赤にさせて怒りを抱くが、そんな彼に対して兵士達も尋常ならざぬ怒気を纏い、この状況下ではガオが何と言おうと逆効果でしかない。つい先日に国王から王位継承権を奪われ、謹慎を言い渡されているガオだからこそ信用できなかった。
彼が今回の処罰の剣で逆恨みし、自分の配下を利用して国王を暗殺したという可能性もある。黒狼騎士団は解散され、その武器の類は没収されたが、彼が特別に制作した武器が国王の遺体に刺さっていたというだけで疑うには十分な証拠である。
(いかん、このままではガオの身が危ない……我々は嵌められた!!)
国王の危篤を伝える使者の存在が近衛隊長が知らされていないという時点でガームは何者かに嵌められたと判断した。
冷静に考えればユダンの急死、彼が生前に告げたた国王の死因が病であるのに対し、兵士の報告が胸元に剣を突き刺されて死んでいたという時点でガームは何者かの手によって自分たちが犯人に仕立て上げられようとしている事を悟り、唇を噛み占める。
(まずい、ここで捕まえればガオは殺されてしまう!!どうにかしなければ……!!)
忠誠を誓った国王が殺され、更に何者かの陰謀によってガオが無実の罪を被せられようとしている事にガームは怒りを抱き、まずは彼を救い出すために彼は強行突破を行う。
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