第351話 宝箱の中身は……
「う~ん、そこら辺は良く分かりませんね。勇者の家系でも血が薄すぎると駄目なのか、あるいは私の場合が特別なのか……そこは色々と検証する必要がありますね」
「検証って……じゃあ、また第五階層に挑むの?」
「何を言ってるんですか、当たり前じゃないですか!!まだ全部の宝箱を確認してないんですよ?」
「宝箱?何の話だ?」
「あ、言い忘れてました。実はですね……」
第五階層には大量の宝箱が存在した事も話すとリル達は驚き、しかも宝箱をいくつか持ち帰ってきたことも話すと更に驚愕した。ミナの前にレイナは漆黒に塗りつぶされた金属製の宝箱を運び込むと。
「これがその宝箱です。名前はブラックボックスらしいんですけど、これの凄いのが宝箱を閉じると異空間に物体が収納されるのでいくらでも物を預ける事が出来るんです」
「収納……私達のレイナに作って貰った鞄みたいに?」
「そんな感じですね。但し、あくまでも蓋を閉じている間だけ中身が異空間に収納されます。仮に蓋を開くと異空間から物体が取り出されるので気を付けてください」
「確かに凄い機能だとは思うが……それは何の役に立つんだ?」
宝箱を閉じると異空間へと繋がり、そのまま物体が異空間に保管されるのは凄いことだが、結局は宝箱を開くと異空間から放出されるのならば宝箱の中に入れる量しか入れられない事になる。
どんな物も預けられるはずの異空間に封じ込める事が出来るのに、結局は宝箱の大きさの質量しか入れられない事にチイは不便に感じたが、すぐにリリスが訂正した。
「何を言ってるんですか、重要なのは宝箱の中身が異空間に封じられるという事です。例えばこの宝箱の中にたくさんの金貨を詰め込んだとします。するととんでもない重量になりますよね?」
「ああ、それはそうだろうな」
「しかし!!この宝箱を閉じた瞬間、その大量の金貨は異空間に放り込まれます!!したがって宝箱の重量は元々の宝箱の重さだけになります!!だって中身が異空間に吸い込まれたんですからね、どんなに重い物を宝箱にしまおうと関係ないんですよ!?」
「い、言われてみれば確かに……」
「それに食べ物とかもいれても腐る事はなく状態を保ったままですからね。冷蔵庫のように冷やす機能はありませんけど、宝箱に入れた時の状態を保つのは便利でしょう?」
「なるほど、確かに言われてみれば凄い箱だな」
「クロミンをいれたらどうなるのかな?」
「ぷるぷるっ(止めてっ)」
異空間に入り込むのは嫌なのかクロミンはネコミンの後ろに隠れ、ともかくブラックボックスの性能の高さを証明したリリスは肝心の宝箱の中身を話す。
「それでですね、宝箱の中身の方なんですが……結局、回収できたのは武器と防具だけです。しかも残念ながら今のところは聖剣や魔剣の類はありません」
「そうか……宝物の類はなかったのか?」
「一応は魔水晶は発見しました」
「魔水晶!?それは凄いな……見せてくれるか?」
レイナは布で包んだ魔水晶を渡すと、リル達は初めて見た魔水晶に驚き、その光の輝きに目をくらませる。こうして布に包んでいなければ輝きは抑えきれず、しかも魔力感知を覚えていない人間でさえも魔力を感じ取る程の代物だった。
この魔水晶だけでも凄い価値のある代物だが、他にも持ち帰ってきた武器や防具の類を確認し、聖剣デュランダルにも使用された「アダマンタイト」と呼ばれる世界最硬の魔法金属で構成されていると知ると、リルは漆黒の長剣を手にして驚く。
「この剣がレイナ君のデュランダルと同じ素材で構成されているとは……しかも、かなり重いな」
「え、ええっ……見かけよりも重いので扱うのは難しそうです」
「重くて腕が持ち上がらない……」
「きゅろっ?そんなに重い?」
獣人族であるリル達は筋力は人間よりも優れているが、残念ながら持ち帰ったアダマンタイト製の武器や防具を取り扱うのは難しそうだった。一方でサンの方は軽々とアダマンタイトの闘拳を持ち上げ、おもしろそうに振り回す。
伝説の聖剣の素材が利用された武器と防具だとしても、残念ながら取り扱うのには相当な筋力を必要とする。現時点で扱える人間がいるとすれば勇者のレイナか、ダークエルフであるサンと、他にも扱える人間がいるとすればオウソウぐらいだろう。
「残念ですがこの武器と防具は持ち帰っても金銭的な価値は低いですね。何の能力も付与されていないので、せいぜい非常に頑強なだけの重い道具でしかありません」
「しかし、加工を加えれば他の使い道はあるんじゃないのか?」
「まあ、確かに伝説の金属ですからね。そこら辺は私も専門外なので本職鍛冶師に聞いてみないと分かりません」
「そうだな、なら王都へ戻るときに私の友人の鍛冶師に尋ねておくよ。ところで、その箱はまだ開いていないようだがいったい何が入ってるんだ?」
レイナが持ち帰ったブラックボックスは5つだが、その内の1つだけが中身を開いておらず、鍵を差し込んだ状態のままだった。それを見たリルは首を傾げると、レイナとリリスは互いの顔を見て頷く。
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