第337話 火山の異変
「な、何だ!?」
「地震か!?」
「まさか、噴火か!?」
「きゅろろっ!?」
「ぷるるんっ!?」
唐突に火山全体が激しく揺れ始め、レイナ達はその場に伏せて振動が収まるのを待つと、火口の方向から異変が発生する。突如として火口の内部から巨大な赤黒い岩石のような物体が出現し、更に人型である事が判明した。
その光景を目にしたレイナ達は嫌な予感を覚え、即座にその予感は的中した。火口から姿を現したのは巨大な「マグマゴーレム」である事が判明し、第三階層に存在したブロックゴーレムにも匹敵する巨大なマグマゴーレムが火口から姿を現す。
『ゴガァアアアアッ!!』
「な、何だあれはぁあああっ!?」
「馬鹿、大声を出すんじゃない!!気づかれたらどうする!?」
「……もう、遅いみたい」
巨大なマグマゴーレムを目にしたオウソウが咄嗟に叫び声を上げると、チイが慌てて彼を注意するが、ネコミンは既にこちらに気づいている事を指摘する。溶岩の中から現れたのか、マグマゴーレムは身体中に纏わりついた溶岩を振り払い、ゆっくりと火口から抜け出す。
現在のレイナ達が存在する場所は火山の中腹付近だが、マグマゴーレムは火口から抜け出すと滑り落ちるように降りてきた。その様子を見てリルは戦っても勝ち目はないと判断すると、転移台へ逃げるように促す。
「全員、走れ!!チイ、転移台の場所まで誘導してくれ!!」
「は、はい!!」
「オウソウ、走って!!」
「いででっ!?か、髪の毛を引っ張るな!!ほら、いくぞスライム!!」
「ぷるんっ(迷惑をかけるね)」
オウソウの背中にサンが乗り込み、クロミンも抱えてもらうと彼はチイの後に続く。その一方でレイナはマグマゴーレムに視線を向け、こちらに近付いてくる敵を見てすぐに解析を発動させた。
(解析!!)
解析を発動した瞬間に視界に詳細画面が表示され、その内容を確認して通常のマグマゴーレムよりも厄介な存在だと判明した。
――――ゴーレム・キング――――
種類:ゴーレム(ゴーレム最上位種)
性別:無し
状態:激怒
特徴:全てのゴーレムの最終進化形態にして最強のゴーレム。環境に合わせて特殊能力を身に付けるため、数種類のゴーレムの能力を持ち合わせている。また、死に際の際は核が大爆発を引き起こす
――――――――――――――――
どうやらレイナ達に迫っているのはただの「マグマゴーレム」ではなく、ゴーレムという種族の中でも最上位に位置する「ゴーレム・キング」だと判明する。この文章を見る限りではどうやら環境に合わせて能力を変化させるらしく、マグマゴーレムの力を持ち合わせたゴーレム・キングが出現した事になる。
レイナは真っ先に文字変換を発動させてゴーレム・キングを倒す事を考えたが、最後の「死に際の際は核が大爆発」という文章を見て指を止めた。
(あいつが死んだら大爆発するのか!?じゃあ、下手に殺す事が出来ない……!!)
爆発の詳細な規模までは記されていないが、大爆発という表現がされている以上は只事ではなく、レイナは仕方なく倒す事を諦めて逃げる事に専念した。しかし、マグマゴーレムは坂を滑るように降りてくるため、すぐにレイナ達の背後へと辿り着いた。
『ゴォオオオオッ!!』
「ひいいっ!?あ、あんなのと戦えませんよ!!早くに逃げましょう!!」
「前に見たブロックゴーレムよりもでかくないか!?」
「だが、動きは遅いぞ!?」
「馬鹿、あれだけの巨体だぞ!?すぐに追いつかれる!!」
ゴーレム・キングはブロックゴーレムよりも巨体だが、動作自体は非常に緩やかに見えた。しかし、実際の所は体格差が大きすぎてゴーレムキングが一歩踏み出すだけでレイナ達は一気に距離を詰められる。しかも歩く度に地面に振動が伝わって上手く動けず、全速力で駆け出す事が出来ない。
この中には攻撃魔法を行える人材はおらず、遠距離攻撃が行えるのは聖剣を所有するレイナだけだった。レイナは勇者レアに変装したハンゾウに呼びかけ、協力するように願う。
「ハン……いや、勇者さん!!その聖剣、貸して!!」
「ぬあっ!?きゅ、急に何を!?」
「いいから早く!!」
レイナはハンゾウの腰に装着した聖剣を掴むとその場に立ち止まり、デュランダルを構えた。刃を振動させて接近するゴーレム・キングの足元に視線を向け、横なぎに振り払う。
「喰らえっ!!」
「おおっ!?」
『ゴアッ……!?』
前方に片足を伸ばした状態の時を狙い、レイナはゴーレム・キングの巨体を支えるもう片方の足に向けて衝撃波を放つ。フラガラッハの恩恵で強化された衝撃波はゴーレム・キングの足に衝突すると、体勢を大きく崩したゴーレム・キングが倒れ込む。
流石に片足の状態では強化されたデュランダルの一撃は耐え切れないらしく、ゴーレム・キングは悲鳴を上げながら麓に向かって滑り落ちていく。その光景を確認したレイナは時間稼ぎに成功した事に安心するが、すぐにリリスが声をかけてきた。
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