第332話 マグマゴーレム

「だ、団長も凄い!!この3人、強すぎる……!!」

「呆けている場合か!!俺達もやるぞ!!」

「お、おう!!」

『ゴオオオッ……!?』



次々と倒されていくゴーレムの姿を見て団員達も奮起すると、レナ達の援護のために彼等も諦めずに戦う。やがてロックゴーレムの数が半数近くを切ったとき、ここであるロックゴーレム達は奇妙な行動に出た。


ロックゴーレムの集団は戦闘を中断して一か所に集まると、その場で互いの身体を衝突し合う。唐突な行動にレナ達は呆気に取られ、仲間割れでも起こしたかの様にお互いの身体をぶつけ合うロックゴーレムの行動に戸惑う。



「な、何だ!?こいつら、何をしてるんだ?」

「仲間割れか?」

「いや、様子がおかしいぞ……何かまずい!!」

「止めを刺すんだ!!」

『ゴガァアアアアッ!!』



お互いに体当たりを繰り返すロックゴーレム達は衝突する度に火花が生じ、肉体から煙が噴き出す。やがて全身の岩石が赤黒く変色すると、異様な熱気を放ちながらロックゴーレムは拳を振りかざす。



「ゴアアッ!!」

「くっ……うわぁっ!?」

「どうした!?」



盾を構えていた一人の団員がロックゴーレムの攻撃を受けようとしたとき、盾が拳に触れた瞬間に反射的に手を離す。防具を捨てた団員を見て他の者たちは戸惑うが、直後に彼が盾を捨てた理由を理解する。


金属製の盾がロックゴーレムの拳に触れた瞬間に溶解している事が発覚し、盾の表面が溶けてドロドロに変化していた。その様子を見てロックゴーレムの異変の正体にレナが気づき、赤黒く変色したロックゴーレム達の体温が異常なまでに上昇しているのだ。



『ゴオオオッ!!』

「あ、熱っ!?何なんだこいつら!?」

「まずい、これじゃあ下手に近付けない!!」

「落ち着いてください!!恐らく、火花や熱を取り込んだことで体内の核を刺激して肉体全身を高温状態にしたんです!!」

「そんな馬鹿な!?そんな力があるロックゴーレムなんて聞いた事がない!!」



リリスの予測に団員達は混乱し、その一方でレイナはロックゴーレムの様子を伺い、ここで解析を発動した。過去に戦った敵とはいえ、相手の正体を見極めるためにレイナは視界で詳細画面を表示させる。



(解析……何だこいつ!?)



解析を発動した結果、表示された文字はかつてレイナが戦ったロックゴーレムのステータスとは異なり、第一に名前の時点で違っていた。




――――マグマゴーレム――――


種類:マグマゴーレム(ゴーレム亜種)


性別:無し


状態:興奮


特徴:ロックゴーレムが冷えたマグマを取り込み、新たな能力を得たゴーレム。通常時はロックゴーレムとほぼ変わらない外見だが、自分の肉体に熱を宿すと高温を発する。興奮時は肉体の温度は本物のマグマに匹敵する


―――――――――――――――




今まで戦っていた相手の正体がロックゴーレムではなく、マグマゴーレムと呼ばれる亜種だと判明した。レイナはこの事実に他の皆に伝えようとしたが、その前にマグマゴーレムの集団は団員達に襲い掛かろうとしていた。



「ゴオオッ!!」

「ぎゃああっ!?あ、あちぃいいっ!?」

「何だ、こいつらの攻撃……ふ、防げない!!」

「ぶ、武器も溶かされる!?」

「全員、下がれ!!」



団員達はマグマと同じ温度を誇る攻撃に対して成す術がなく、武器も防具も触れた瞬間に溶かされてしまう。これでは攻撃も防御も出来ず、追い詰められる寸前にリルが動き出す。


彼女はムラマサを構えると妖刀ならば簡単に解かされることはないと判断し、マグマゴーレムの一体に対して攻撃を仕掛けた。ムラマサの刃を受けたマグマゴーレムは怯み、斬りつけられた箇所が凍結するが、すぐに体内の熱によって氷は溶かされてしまう。



「ゴオオッ!!」

「くっ!?」



攻撃には成功したが致命傷を与える程ではなく、ムラマサの一撃でもマグマの温度を持つゴーレムには通じず、仮に凍らせてもすぐに溶けてしまう。リルはマグマゴーレムから距離を取るが、これでは戦いようがない。



(私の攻撃が通じない……いや、一瞬とはいえ凍結化には成功した。問題なのは凍らせてもすぐに溶かされてしまう事か、ならもっと凍結化を強化させれば……そうだ!!)



リルはある事を思いつき、勇者レアに変装したハンゾウの方へと振り返って彼女に協力を求めた。



「勇者殿!!私に力を貸してくれ!!」

「ぬっ?一体何を……?」

「リル様?」

「何か思いついたんですか?」




レイナではなく、ハンゾウを呼び出した事に他の者たちは不思議に思うが、呼び出されたハンゾウは彼女の元に近付くと、リルはハンゾウが所持している聖剣を貸してくれように頼む。



(ハンゾウ、その剣を私に貸してくれ)

(ぬあっ!?拙者の家宝を!?)

(家宝も何もそれはレイナ君が作り出した物だろう……いいから今はそれを早く貸してくれ!!)

(仕方ないでござるな……しかし、フラガラッハを貸してもリル殿には使えないでござるよ?)



聖剣は正当な所有者でなければ武器として扱う事は出来ないのだが、リルはハンゾウから許可を得て借り受けると、彼女はフラガラッハを身に付けた状態で再度挑む。

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