第313話 火竜の強さ

「アァアアアアッ……!!」

「シャアッ!?シャアアッ!!」



顎が外れかねないほどに口を開いた火竜に対し、それを見た子供は怯えた表情を浮かべ、その場を立ち去る。火竜は口を開いた状態でレイナ達に顔を向けると、胸元の部分を赤く発行させ、口内から火炎を迸らせた。


その光景を確認したネコミンは目を見開き、火竜の攻撃の中で最も危険な「火炎の吐息ブレス」を放とうとしている事を気づいた彼女は警告を行う。



「レイナ、シロ!!炎が……!!」

「くっ……!?」

「アガァアアアアッ!!」



ネコミンの声を聞いてレイナはどうにか痛む身体を置き上げようとデュランダルを地面に突き刺したとき、火竜が血走った眼を見開いて火炎を放つ。それは正に火炎放射という表現が正しく、凄まじい火炎がレイナ達に襲い掛かった。




――火竜の体内には心臓よりも重要な役割を持つ「核」と呼ばれる物が存在する。この核の正体は、火竜が火属性の魔石を食らい続けた事で形成された高密度の火属性の魔力を秘める魔石である。通常の火属性の魔石とは比べ物にならないほどに圧縮された魔力を宿し、その核の力を使えば火竜は火炎を吐き出す事も出来る。





体内から生み出したとはいえ、火炎を吐き出せば火竜にも影響があるのではないかと思われるかもしれないが、この世界の法則では自身が作り出した魔法で自分自身の肉体が損傷を受ける事はない。例えば魔術師の場合は自分の魔法を自分自身に使っても火傷や凍傷を引き起こす事はあり得ず、火竜もそれと同じで自分の作り出した火炎に体内を焼き尽くされる事はない。


最も普段から溶岩さえも摂取する火竜ならば本物の炎を体内に流し込まれようと無事な可能性もあるが、それはともかく火炎を吐き出した火竜に対してレイナはデュランダルを構え、自分の腰に差しているフラガラッハに一瞬視線を向ける。



(頼むぞ相棒……!!)



一番最初に武器として作り出した聖剣の力を信じたレイナはデュランダルを引き抜くと、迫りくる炎に対してデュランダルを突き出す。その結果、デュランダルから衝撃波が放たれ、正面から迫りくる炎を吹き飛ばす。



「うおおおおっ!!」

「アガァッ……!?」



フラガラッハの「攻撃力3倍増」の効果も発揮され、デュランダルの性能が強化されると、通常時よりも強烈な衝撃波が火竜の火炎の吐息を拡散させて周囲へと散らばる。その様子を見たネコミンは慌てて岩陰に隠れると、周囲に炎が散らばってしまう。


火竜は自分の火炎を正面から跳ね返すレイナを見て戸惑い、その一方でレイナの方はデュランダルを構えながらも衝撃波を生み出し続け、徐々に火竜の元へと近づく。



「この、暴食肥満トカゲめっ!!」

「ガアアッ!?」



先ほどの攻撃の仕返しとばかりにレイナは衝撃を生み出しながら火竜に接近すると、片腕でデュランダルを支えながらも鞄に手を伸ばし、エクスカリバーを引き抜く。そして刀身を輝かせると、光刃を生み出して火竜の顔面に放つ。


エクスカリバーの生み出す光刃は普通の生物に対しては効果は薄いが、それでも当てれば軽い衝撃を与える程度の効果はある。結果的には攻撃を受けた火竜は怯んでしまい、火炎の吐息を中断してしまう。どうにか所持した3つの聖剣の力で火竜の攻撃をしのいだレイナはエクスカリバーを地面に突き刺すと、今度は最も切れ味に鋭いアスカロンを引き抜く。



「このぉっ!!」

「ギャアアッ!?」



デュランダルとアスカロンの二刀流で火竜に迫ったレイナは剣を振り抜くと、火竜は鉤爪で受け止めようとした。しかし、アスカロンを受け止めようとした鉤爪は想像以上の切れ味を誇るアスカロンによって爪は切断され、指が切り落とされる。


アスカロンの切れ味は聖剣の中でも一番を誇り、火竜が相手だとしても現在のレイナのレベルならば通じるらしい。アスカロンならば対抗できると知ったレイナは続けて胴体の部分にアスカロンを振り抜こうとすると、火竜は両翼を羽ばたかせて上昇した。



「ガアアッ!!」

「うわっ!?」

「レイナ、無茶しすぎ……!!」



翼を羽ばたかせただけで風圧が襲い掛かり、レイナは地面に転んでしまう。それを見たネコミンがレイナの行動の無謀さを咎めるが、火竜の方も警戒したように上空へと逃げてしまう。


火竜が空へ避難した事でレイナは追撃を行おうと立ち上がるが、ここで先ほど叩きつけられた時の怪我が痛み、その場に膝を付く。先ほどまでは怒りで痛みを忘れていたが、やはり肉体の方は限界が近く、レイナは顔色を青くさせる。



「う、ぐうっ……!?」

「レイナ、逃げて!!」

「シャアアアッ!!」



ネコミンがレイナの異変に気付いて駆け出そうとしたとき、火竜の幼体が好機だと判断したのか岩陰から飛び出してレイナの元へ迫る。その姿を見てシロは起き上がり、火竜の幼体の方へ向かう。

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