第308話 火山地帯
「――はああっ!!」
「ガアアッ!?」
密林の中を移動してから数十分後、レイナ達はファングの群れと遭遇し、交戦していた。シロの背中にネコミンが乗り込み、チイはクロと共に飛び回って短剣で敵を切り裂く。一方でレイナとリルは背中を合わせて次々と向かってくるファングを切り裂く。
「こいつら、何匹いるんですかね!?」
「血の臭いに釣られて次々と新手が来ているんだ。これではこちらの体力の方が限界を迎えそうだな」
「二人とも、ここは先へ進みましょう!!これでは切りがありません!!」
「賛成」
「「ウォンッ!!」」
シロに乗り込んだネコミンがレイナの元に近付き、リルの元にはクロに乗り込んだチイが駆け寄る。先ほどから戦闘を続けているが、ファングの大群はいくら倒しても新手が出現して対処できず、このままでは体力切れで全滅は免れない。
ファングの戦闘力自体は決して高いとは言えないが、数の暴力で襲い掛かってくるのでいくら切り伏せても終わりは見えず、チイの提案でレイナ達は逃走を開始した。だが、シロとクロと仮にも同じ狼型の魔獣のファングの追跡を撒くのは難しく、しかも慣れない密林の中を進まなければならなかった。
「レイナ、しっかり掴まってて」
「わ、分かった」
「ウォオオンッ!!」
『ガアアッ!!』
数十匹のファング群れが後方から追いかけてくるが、シロは2人の人間を乗せながらも徐々に距離を離し、最終的にはファングの姿が見えなくなるほどまでに距離を離す。レイナにはまるで森の中を走るジェットコースターに乗り込んだように視界の風景が移り変わり、落ちないようにしっかりとネコミンの身体を掴む。
「ね、ネコミン!!もういいんじゃないの?」
「後ろからまだ臭いが感じる。もう少し離れてから……シロ!?止まって!?」
「ウォンッ!?」
鋭い嗅覚でネコミンは何かを感じ取ったのか、唐突にシロに止まるように命じた。その命令にシロは驚いて急停止すると、勢いを殺しきれずに反動でレイナとネコミンは地面に落ちてしまう。
「あうっ!?」
「はうっ……そ、そこは駄目ぇっ……」
落ちた際の拍子にレイナはネコミンを抱きかかえた状態で倒れ込み、彼女の年齢の割には大きく膨らんだ胸を鷲掴みにする。ネコミンは頬を赤くするが、レイナの方は背中を打ってかなり痛い思いをする。
どうして急にシロを止まらせたのかとレイナは抗議しようとしたとき、いつの間にか自分達が密林を抜け出している事に気づく。先ほどまでは樹木で覆われていたのだが、現在のレイナ達が存在する場所には植物が生えておらず、まるで荒野のような場所に存在した。
「何だここ……どうなってるんだ(ふにふに)」
「んんぅっ……そ、そういいながら私の弱い所を刺激しないで、やんっ……」
ネコミンの胸を揉みながらレイナは起き上がると、彼女と一緒に周囲を見渡し、そしてある事に気づく。どうやら荒野のような場所だと思い込んでいたが、それは誤りでレイナ達はリルが発見したという火山の麓に辿り着いたらしい。
移動に夢中で気づかなかったがレイナ達は目的地に辿り着いたことを悟り、火山の周辺には植物は生えておらず、恐らくは噴火した際の影響で火山の周辺の植物は焼き付くされてしまったのだろう。
「ここがリルさんの言っていた火山か……本当にこんな場所を探索しても大丈夫なのかな」
「その前に困ったことがある。リルとチイとクロの姿が見えない」
「えっ!?」
レイナはネコミンの言葉に驚いて振り返ると、彼女の言う通りについ先ほどまでは共に逃げていたはずのリル達の姿はなかった。どうやら逃げている最中にはぐれてしまったらしい。
「そんな……すぐに探さないと!!」
「落ち着いて、リル達ならファングに捕まるはずがない。それに地図製作を使えるチイと火山の位置を知っているリルなら道に迷う事はない」
「あ、そっか……なら、ここで待ってる?」
「それは駄目、まださっきのファングが追いかけてくるかもしれない。私達はこのまま火山に入って調査を進めた方がいいと思う」
「俺達だけで?それは危険なんじゃ……」
「大丈夫、ここに頼もしい勇者がいる」
ネコミンはレイナの袖を掴んで頷き、自分達だけで先に調査を行う事を提案した。レイナはネコミンの提案に対して考え込み、この場所に残っていたとしてもリル達が合流できるとは限らない。
火山は相当な大きさのため、リル達が訪れたとしてもレイナ達がいる場所まで辿り着けるとは限らない。それならばいっそのこと、火山の調査も兼ねてレイナはとりあえずは火山の周囲を移動して調査を行う事にした。
「そうだね、ならまずは麓から回ってみよう。もしかしたらリルさんたちとも会えるかもしれないし……」
「賛成、火山を登るのは最後でいいと思う」
「ウォンッ!!」
シロは二人に駆け寄ると自分に乗れとばかりに身体を伏せ、レイナとネコミンはシロに乗り込んで移動を開始した。
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