第283話 ブロックゴーレムの対策会議
――紆余曲折はあったが遂に全員の合流を果たしたレイナ達は酒場の一階に移動を行い、持参した食料を分け合って会議を行う。
当初の目的はこの第三階層の調査を行い、次の階層の合言葉を調べて引き返す予定だった。だが、これまでの調査の結果としては第三階層は環境が厳しく、資源に関しても第一階層と第二階層よりも劣ると判明した。
「この第三階層に生息する砂鮫、サンドゴーレム、トレントは危険度が高い割には得られる素材があまりにも少なすぎます。しかも環境も厳しく、長時間の外での行動は命の危機にも関わりますね。はっきり言ってこれだと第一階層や第二階層の方がマシですよ」
「つまり……はずれか?」
「いえ、一概にもそうとも言い切れません。確かにこの階層の資源に関しては他の階層と比べると得られる物は少ないですが、この街や私達が発見した古城に関しては調べる価値はあると思います。私達が遭遇した死霊魔術師の件もありますし、この階層には色々な謎が残っています」
「謎?」
「最も今は脱出する事に専念しましょう。そのためにどうしても避けられない相手がブロックゴーレムですね」
リリスはサンが発見した石板を取り出して机の上に置き、現在自分たちが存在する街と転移台を指で示す。
転移台を使用するには転移台の傍に常に控えているブロックゴーレムをどうにかしなければならず、これまでブロックゴーレムを観察していたハンゾウによると、ブロックゴーレムは常にあの場所に控えて離れないという。
「拙者はブロックゴーレムの様子を観察していた結果、あの広場から全く離れる様子はないでござる。しかも迂闊に近づこうとする存在がいれば即座に反応して襲い掛かってくるので打つ手がないでござる」
「ハンゾウやレイナさんが隠密の技能を使えば気づかれずに転移台まで移動できるんじゃないですか?」
「それは拙者も考えたのでござるが、転移台へ近づこうとしたとき、何故か気づかれたのでござる。その時は隠密と気配遮断と無音歩行の技能を発動させていたので気づかれるはずがないのでござるが……」
ハンゾウによると転移台を調べようとしたときに彼女は見つかったらしく、ブロックゴーレムに危うく殺されかけたという。
しかし、その後の観察を行った際はブロックゴーレムがハンゾウの存在に気づく様子はなく、何故か転移台に近付こうとしたときに限ってハンゾウは存在を見抜かれてしまった。
「ふむ……転移台に近付いた時にだけ存在を知られたというのは、恐らくは転移台が反応したからでしょうね」
「転移台が反応……?」
「転移台は人間(この場合は人間だけではなく、獣人も指す)が近づいたときに反応するんですよ。転移台は魔物には扱えませんからね、実際に私達が転移台に立ち寄ったときに魔法陣が僅かに光を放っていました。ブロックゴーレムはその僅かな反応を察知して何者かが転移台に近付いたことを気づいたんでしょうね」
「なんと!?だから拙者が転移台に上ったときに気づかれのでござるか!?」
「それではこっそりと転移台に移動して転移する事もできないのか?」
「むうっ……八方ふさがり」
ブロックゴーレムが存在する限りは転移台を使用するのは難しく、仮に気づかれないように転移台に近付いてどうにか転移を発動させようとしても逃げるのは難しい。転移が発動するまでは僅かではあるが時間が掛かるため、その時間をブロックゴーレムが見逃すはずがなく、襲い掛かってくると予想される。
ハンゾウが数時間ほど観察した限りではブロックゴーレムはあの場所から離れる様子はなく、ブロックゴーレムをどうにかしない限りは転移は期待できないという。そうなるとレイナ達が取る行動は一つしかなかった。
「仕方ありません、多少は危険ですがブロックゴーレムを倒しましょう」
「はあっ!?本気で言っているのか!?」
「あの巨人を倒す手立てがあるのでござるか!?」
「い、いくら何でも無茶すぎますよリリスさん!?」
リリスの発言にオウソウは目を見開き、ハンゾウも驚きを隠せず、他の団員達も動揺を隠せない。しかし、リリスはレイナに視線を向けて暗にブロックゴーレムを倒せるのかどうかを尋ねると、レイナは頷く。
(倒すだけならどうにでもなる……ブロックゴーレムが現れた時に解析を発動させて、詳細画面に表示された「状態」の項目を書き換えるだけで済む)
レイナの文字変換と解析の能力を使用すればブロックゴーレムであろうと倒す事は不可能ではない。しかし、問題があるとすればレイナの力の事を知っているのはこの場には数名しか存在しない。
団員達にレイナの能力を明かすのはあまりにも危険であり、他の団員に気づかれずにブロックゴーレムを倒す方法を考えなければならない。流石に提案も行ったリリスも無茶なことを言っているという自覚はあるのかすぐに訂正する。
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