第282話 合流と状況確認
「そういうレイナ殿はどうやってここまで来たのでござる?」
「俺達の方はここから結構離れた場所にある古城に避難してたんだよ。話すと長くなるけど……」
レイナは移動の最中にハンゾウにこれまでの経緯を説明した後、他の皆も無事である事を伝える。これで第三階層に入った全ての団員の安全が確認され、誰一人の犠牲者も出さずにここまで辿り着いたことが判明した。
「皆が無事でよかったでござる……しかし、あの化物のせいで拙者たちは転移台に近付く事も出来ず、拙者は一人で様子を観察していたでござる」
「そうだったんだ……他の皆は?」
「とりあえずは街の中でも比較的に安全な場所で避難しているでござる。あ、話している間にも見えてきたでござる。ほら、あそこ……」
ハンゾウが指差したのは元々は酒場だと思われる建物らしく、出入口の扉は塞がれていた。魔物が入り込めないように封じたらしく、入るときは建物の壁をよじ登って二階の窓から入るしかない。
「ここから中に入れるでござる。レイナ殿、先に行ってほしいでござる」
「分かった」
二階の窓を見てレイナは瞬動術を発動させ、勢いよく跳躍して窓を通過すると、勢いよく中に入り込む。その際に窓の近くに複数の人影が存在する事に気づき、レイナが中に入った瞬間に驚いた声が上がった。
「うわっ!?な、何だ!?」
「ハンゾウさん!!入るときは驚かせないでくれと言っただろ……あれ?」
「も、もしかして……レイナさん!?」
「レイナ?」
中に入ってきたのがハンゾウではなく、レイナだと気づいた団員達は驚きの声を上げ、その中にはネコミンの姿もあった。彼女はレイナの姿を確認すると嬉しそうな表情を浮かべ、レイナの元へ駆けつける。
「レイナ、生きてた!!」
「うわっと……ネコミン、無事でよかったよ」
「うん……ちょっとやばかった」
ネコミンは尻尾と猫耳を震わせてレイナを抱きしめ、彼女の臭いを確かめるように鼻を鳴らす。時間的にはせいぜい半日程度しか離れていないのだが、何故だかレイナはネコミンと会うのが久しぶりなような感覚に陥る。それほどまでに彼女と離れている間に色々とあったのでそんな風に感じてしまうのも仕方ない。
窓から入ってきたレイナに団員達が驚くが、そのすぐ後にハンゾウも入り込み、皆に状況を伝える。既に街の中には他の団員も到着した事を知った団員達は安堵した。
「他の団員も無事なんですね!?良かった……」
「いや、喜んでばかりはいられないだろ!?これからどうするんだよ……少ない食料がまた減っちまう」
「馬鹿、皆生き残ってたんだからよかっただろうが!!すいません、こいつ人一倍食いしんぼうで……」
「皆は食料はどれくらい残ってるの?」
「それが……砂漠で逃げる途中でアリジゴクや砂鮫に荷物を奪われた奴らも多くて、もう食料と水は殆ど残ってないんです」
「拙者も折角レイナ殿受け取った鞄も無くしてしまったでござる……申し訳ない」
「私の鞄には薬品しか入れてこなかったから食料は入ってない……」
事前にレイナは出発前に白狼騎士団の幹部級の人間には文字変換の能力を使って鞄の収納制限を「無限」にさせ、事前に各自の鞄には大量の物資を入れておいた。この鞄のお陰でレイナは大量の食糧を持ち込み、団員達に振舞う事が出来た。
しかし、ハンゾウの場合はここへ転移した時に運悪く他の団員がアリジゴクに飲み込まれそうになったのを救出する際、誤って自分の鞄を落としてしまったという。そのせいで鞄はアリジゴクに飲み込まれてしまい、回収も出来ない。ネコミンの場合は彼女が治癒魔導士という事もあって後方支援のために薬品の類を主に保存していたため、食料の類は殆ど持ち合わせていないという。
レイナは自分の鞄の中に視線を向け、まだ食料は残っていた事を思い出してとりあえずは団員達に振舞う事にした。
「あの……良かったら俺の食料がまだ残ってるから、皆で分け合って食べていいよ」
「えっ!?いいんですか!?」
「でも、そんな事をしたらレイナさんが困るんじゃ……」
「大丈夫だよ、どっちにしろ今日中に脱出するつもりだから食料を余らせても仕方ないし、それに皆がしっかり食べて動けないと困るからね。ほら、水もあるから遠慮せずに受け取ってよ」
「あ、ありがとうございます!!」
「お前ら、食料だぞ!!」
「ううっ……て、天使だ」
外の暑さと碌な食糧が残っていなかったので追い詰められていた団員達はレイナの言葉を聞いて喚起すると、彼女が持ち込んだ食料を分け合う。その様子を見てレイナは安心する一方、ハンゾウが声をかける。
「他の団員もこの街にいるのでござるな?それならば拙者が呼び寄せてくるでござる」
「あ、お願いできる?皆は街の南側の方にいると思うから、気を付けてね」
「承知!!」
ハンゾウは窓を抜け出してリリスやレイナが引き連れてきた団員達の合流のために捜索を行い、それからしばらく経過すると残りの者たちも酒場へと辿り着き、遂に全員の合流を果たした――
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