第240話 矢印
「この転移台を使って地上へ抜け出す場合、中央の台座に手を添えた状態で「外界」と叫べばいいそうです。逆に次の階層へ行きたい場合は目的地の階層の名前を告げる必要があります」
「名前?」
「第二階層とか第三階層とかではなく、その階層の特徴を告げる必要があります。また、各転移台には上下の階層の名前が刻まれているそうですが……ほら、ここに書いてあるでしょう」
「あ、本当だ……」
よく調べなければ分からないが、台座の根元の部分には文字が刻まれており、分かりやすいように矢印のマークまで刻まれていた。転移台には『↑荒野』『↓外界』と刻まれ、どうやら目的地へ移動するための合言葉が記されているらしい。
この文章を見る限りだと第一階層よりも下の階層は存在しないので地上への脱出方法が記され、次の第二階層へ移動するには「荒野」と呼ぶ必要がある様子だった。
「次の階層は「荒野」か……」
「あ、駄目!?合言葉を口にしたら……」
「えっ?」
レアは台座にしゃがみこんで刻まれた文字を読んだ瞬間、無意識に台座に手が触れており、リリスは慌てて彼を止めようとした。だが、転移台の側で言葉を口にした影響なのか、水晶玉が唐突ひ借り輝き、魔法陣が発光を始めた。それを見たリリスは慌てて逃げ出すように促す。
「駄目です!!台座の何処に触れても合言葉を告げると勝手に発動するんですよ!!すぐに魔法陣の外へ出てください!!」
「ええっ!?そういう仕様なの!?」
「きゅろっ!?」
「ぷるぷるっ!?」
祭壇の外で待っていたサンとクロミンは異変に気付き、慌てて階段を登ってレア達の元へと急ぐ。レア達も急いで魔法陣から脱出しようとしたが、陣の外に出ようとした瞬間にネコミンが慌てたせいで転んでしまう。
「あうっ!?」
「ネコミン!?」
「ちょっ!?二人とも、早く――」
「すぐに外へ――」
転んでしまったネコミンを見てレアは反射的に彼女の元に駆けつけてしまい、先に魔法陣から抜け出したリリスとハンゾウが二人に声を掛けるが、次の瞬間には二人の身体は光の柱に飲み込まれて消えてしまう――
――次に意識を取り戻すと、レアはネコミンと抱き着くような形で地面に倒れている事に気付き、その際に彼女の豊満な胸元に顔を埋めた状態だと気付く。
「むぐぐっ……!?」
「あん、駄目ぇっ……そういうのはまだ早い」
「ご、ごめん……」
自分の胸元に顔を押し付けるレアにネコミンは頬を赤く染め、どうにか引き剥がす。男の姿の時に女性の身体に触れてしまったレアは慌てふためき、やはり女の姿の時よりもネコミンの事を異性として意識してしまう。
女性時の姿の時は肉体が女性であるせいか、あまり他の女性に関して興味を抱かない節があり、冷静に考えれば白狼騎士団の面子は美少女揃いである。レアは改めてネコミンを見て可愛い女の子だと意識してしまうが、今はそれよりも冷静に周囲の状況を把握する必要があった。
「ここは……」
「多分、第二階層だと思う」
2人は辺りを見渡すと、先ほどまでの広大な草原のような風景とは打って変わり、一切の緑の自然がない荒れ果てた荒野が広がっていた。地面には雑草の1本も生えておらず、無数の岩山がそびえ立っていた。
どうやら本当に第二階層へと移動したらしく、ネコミンに手を貸して起き上がらせながらレアは他の仲間達の姿を探す。だが、2人のほかに人影は存在せず、どうやら転移したのはレアとネコミンだけらしい。
「他の皆は第一階層の残ったのか……ごめん、ネコミン。俺のせいでこんな事になるなんて」
「反省は後……今は皆と合流する方法を探す」
「そうだね、となると……やっぱり、転移台を探すしかないのかな」
とりあえずはこの場所に留まって全員を待つという選択肢は存在せず、リリスから転移台で移動する場所は毎回ランダムであるという話はレアもネコミンも聞いていた。つまり、仮にリリス達がレア達の後を追って転移したとしても都合よく同じ場所に現れるとは限らない。
しかし、転移台を探すといっても今回は草原のような見晴らしの良い場所ではなく、複数の岩山が存在するので探索には時間が掛かりそうだった。ネコミンと共にレアは周囲を警戒しながら歩いていく。
「すんすんっ……うっ、臭い」
「えっ!?ご、ごめん……そんなに臭かった?」
「違う、レアが臭いんじゃない。レアの場合はお日様のような良い臭いで好き……だけど、この階層から凄い獣臭が漂う」
「俺、お日様みたいな臭いなんだ……でも、獣臭?」
リリスの言い方にレアは疑問を抱き、ここでリリスから聞いていた第二階層の特徴を思い出す。第一階層はゴブリンが支配する地域に対し、第二階層の荒野は魔獣種の「オーク」と「ボア」と呼ばれる魔物が現れるという。
「そういえばリリスの話だとここの階層にはオークとボアが現れるらしいけど……」
「だと思った……レア、すぐに転移台を見つけ出した方が良い。私達二人だけだと戦闘になったら大変」
「そうだね……」
ゴブリンよりも手強いオークやボアに見つかった場合、戦闘に陥ると苦戦を強いられる可能性がある。いざという時はレアも文字変換の能力を扱う場面が訪れるかもしれず、用心して進む。
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