第200話 勇者の実力
「ごほんっ!!陛下、そんな事よりも勇者殿を呼び出した理由を教えたらどうです?」
国王との会話中に先ほどレアを睨みつけてきたいかつい顔立ちの大男が口を挟むと、慌てて国王は話を本題に戻す。
「おお、そうじゃったな……勇者殿、この男の事は知っているか?」
「いえ、知りません……前に会った事がありました?」
「いや、他国から来たのならば知らなくとも無理はない。この者はケモノ王国の大将軍にして王都の守護神の異名を持つライオネルだ」
「ふんっ……ライオネルだ」
ライオネルと呼ばれた大男はレアの前に近付くと、その獅子を想像させる風貌にレアは圧倒される。身長は間違いなく2メートルを超え、体格に関しても大きく、今にも鎧を内側から弾けさせるのではないかという程に発達した筋肉、そして猛獣の如き気迫を放っていた。
ヒトノ帝国にいた頃にもレアは何名か将軍と出会ってはいるが、ここまでの威圧を放つ人物とは出会った事がない。あまりにも迫力にレアは気圧されていると、ライオネルと呼ばれた男は国王に告げる。
「陛下、はっきりと言うが俺はこの男が「勇者」だとは思えない!!この男には覇気が感じられない、ただの普通の人族の少年にしか見えん!!」
「こ、こら……ライオネルよ、言葉が過ぎるぞ!!」
「いや、言わせてくれ!!この男はどう見てもただの子供だ!!あの伝説に聞く勇者とは思えん!!そもそも、リル王女はこの男を勇者と言い張っているが、その証拠があるのか?」
「そ、それはそうじゃが……」
ライオネルの発言には他の大臣達も顔を合わせ、その場で話し合う。国王は困った表情を浮かべてライオネルとレアを見比べ、どうした物かと頭を悩ませた。
だが、実を言うとライオネルの発言にも一理があり、リルはレアの事を勇者と紹介して王都へ連れて来たが、肝心の勇者であるという証拠は見せていない。昨日の一件でギャンがレアを痛めつけた際、流れに乗ってリルは彼を自分が連れて来た勇者だと教えたに過ぎない。
しかし、一晩経過して誰もがリルが連れて来た勇者が本物なのかという疑問を抱き、リルが訪れる前に国王は勇者を呼び出して直々に問い質す。
「勇者殿、気を悪くされるかもしれんが我々はまだ、其方が勇者であるという証を見ていない。伝承によればこの世界に召喚された勇者は特殊な能力を覚えていると聞いているが、その力を見せてくれんか?」
「特殊な能力……ですか?」
「うむ、勇者は「加護」と呼ばれる特別な力を扱えると聞いておる。そこで其方が本物の勇者であるならばその加護の力を見せて欲しいのだが……構わんか?」
「加護、ですか」
国王の言葉にレアは思い悩み、無暗に自分の「文字変換」の能力の事をリル達以外の存在に知らせるべきかと悩む。文字変換と解析の能力の秘密を大多数の人間に明かすのは危険であり、リルから釘を刺されている。
しかし、状況的にレアは勇者である事を証明しなければただでは帰して貰えるとは思えず、仕方なくレアはライオネルに視線を向けた。彼は自分を見つめてきたレアに疑問を抱くが、その反応を無視してレアは解析を発動させた。
(解析……うわ、凄いなこの人!?)
―――ライオネル・ガオン―――
種族:獣人族
職業:戦士
性別:男性
年齢:24
状態:健康
レベル:58
特徴:ケモノ王国の大将軍、王都周辺の軍隊の管理を任されている。自分がこの国で最も強い男だと自負している
――――――――――――――
表示された内容を見てレアは驚き、リルの倍以上のレベルである事を知る。この世界ではレベルが50を超える人間はそうはおらず、しかも年齢も想像していたよりもずっと若かった。外見は40代ぐらいにしか見えないのだが、20代でしかも後半ではないという事実の方に逆にレアは外見の怖さよりも驚いてしまう。
(58、か……まともに戦えば絶対に勝てない相手だな。でも……)
レアは昨夜の内に日付が変更する前に自分のステータスの改竄を行っていた事を思い出す。そして覚悟を決めたようにレアは国王に振り返って告げた。
「分かりました。では、この国で一番強い人と戦わせてください。そうすれば俺が勇者である事を証明できます」
「何っ!?それは真か?」
「ほうっ……良い度胸だ。では、陛下!!この私にこの少年と戦わせる機会を与えてください!!」
戦って力を示す事を告げたレアに国王と大臣達は戸惑うが、その返事を聞いてライオネルは嬉々として自分が戦う事を申し出た。その反応を見てレアは詳細画面に表示された特徴の項目を確認し、彼が名乗り出る事は予測していた。
ライオネルは仮にも将軍のトップに立つ男であり、しかも自分こそがこの国の最強の男だと自負している。そんな彼だからこそレアは敢えて「この国で一番強い人」という言葉を使えばライオネルが名乗り出る事は安易に予想できた。だが、国王は困った表情を浮かべ、本当にレアにライオネルと戦うのかを尋ねる。
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