第187話 ギャンの失敗
「ギャン!!貴様の悪事もここまでだ!!」
「き、貴様等……どうしてここに!?」
階段を降りてきたのはチイとネコミンであり、彼女達の後ろにはリルの姿もあった。ギャンは兵士達に取り押さえられ、階段から現れたリル達を見て動揺する。その一方でリル達は傷付いたレイナの姿を確認すると、3人とも怒りを露わにした。
「よくもレイナを……」
「下衆がっ!!」
「……覚悟は出来ているな?」
「ま、待て貴様等!!儂を誰だと思っている!?この国の宰相だぞ!!」
檻の中に入って来たリル達を見てギャンは怖気づいてしまうが、そんな彼を無視してリルは自分が纏っていたマントをレイナの身体に纏わせる。その様子を見てギャンはわめき散らすが、そんな彼にリルはレイナの身体を抱き寄せて見下す。
「ギャン、貴様はもう終わりだ……はっきりといって今すぐに貴様の首をこの場で刎ねたいところだが、罰を与えるのは我々ではない」
「な、何だと……それはどういう意味だ!?」
「ギャンよ……お、お主何をしておるのだ?」
リルの言葉にギャンは戸惑うと、階段の方角から別の声が響き、それを耳にしたギャンは目を見開く。そこには何時の間にか国王の姿が存在し、彼の他に数名の大臣も存在した。
檻の中に兵士に抑えつけられるギャンを見て国王は戸惑い、しかもギャンの手元には鞭が握り締められていた。ギャンは国王の姿を見て慌てて兵士達を振り払い、その場に跪く。
「こ、国王様!!どうか落ち着いてください、これは……」
「いったい何をしておるのかを聞いておる!!どうして屋敷に謹慎を言い渡したお主が城の中にいるのだ!?」
「そ、それは……」
国王の言葉にギャンは咄嗟に言い訳が思いつかず、黙り込んでしまう。その行動が益々国王の猜疑心を強めると、かわりにリルが説明を行う。
「この男は最初から自分の屋敷など戻っていなかったのです父上、私の配下が連れて来た勇者殿を連れ去り、この場所で拷問をしていたのです」
「な、何だと!?」
「き、貴様!?儂はそんな事は……」
「リル様に貴様とはなんだ!!臣下の分際でありながら王族を軽んじるつもりか!!」
リルの言い分に対して咄嗟に素に戻ったギャンが黙らせようとするが、すぐにチイが言い返す。ギャンは咄嗟に口元を抑えるが、今更吐いた言葉は戻せず、更に国王は彼を怪しむ。
その間にリル達は檻を抜け出すとレイナを国王の元まで連れて行かせると、国王はマントを羽織ったレイナを見て疑問を抱く。
「む?お主は昼に会ったリルの新しい騎士ではないのか?」
「そ、そうです国王様!!そいつは勇者ではありません、王女が連れていた、ただの従者でございます!!」
「あの時の従者がどうしてここに……」
レイナの顔を見て国王は訝しみ、彼はギャンが連れ去ったのは勇者という話を聞いていたが、目の前に存在するのは昼に遭遇したリルが連れて来た少女にしか見えなかった。しかし、そんな国王の疑問に答えるようにリルは説明を行う。
「いいえ、国王様。彼をよく見て下さい、昼に連れて来た少女ではありません」
「何?いや、しかし顔が……」
「証拠を見せましょう。勇者殿、マントを脱いでくれませんか?」
「はい、分かりました……」
「な、何をっ!?」
堂々とレイナは国王達の前でリルから受け取ったマントを脱ぐと、その肉体は何時の間にか女性から男性へと変化しており、サラシで抑えつけていた膨らんだ胸元は引っ込み、顔立ちの方も微妙にだが変化していた。
上半身がほぼ裸になったレイナ、改めレアの姿を見た国王達は驚くが、彼等よりもギャンの方が動揺を隠せないでいた。先ほどまで拷問を行っていた時は間違いなくレアは女性の姿をしていたのだが、目の前に立つレアは間違いなく男性である事を確認する。
「どうですか国王様?彼こそが私達がヒトノ帝国から連れ帰った勇者レア殿です」
「おっ……おおっ、確かに何処からどう見ても男だな。昼間に会ったあの娘とよく似ているが……」
「彼女は私がここまでの道中で知り合った娘です。勇者殿と非常によく似ていますが、身長が大分違うでしょう?」
「ふむ、言われてみれば確かにあの時の少女ではなさそうだな……」
「そ、そんな馬鹿なっ……!!」
レアの身体を見て国王は昼に顔を合わせた「レイナ」とは別人である事を確かめると、国王は彼の事をリルが紹介する勇者だと信じた。そして改めてレアの身体に刻まれた鞭の跡を確認すると、痛々しそうな傷跡に頬が引きつった。
「そ、それよりも勇者殿のこの傷跡は……」
「……そこにいるギャンという人にここまで連れてこられ、背中に鞭を打たれました」
「何だと!?それは真かギャンよ!?」
「ち、違います!!国王様、これは違うのであります!!」
国王はレアの言葉を聞いたギャンに振り返ると、彼は慌てて否定するが、状況的に考えても言い逃れは難しい状態だった。ここへ着た時に国王はギャンが鞭を所持しており、同じ檻の中でレアが捕まっているのを確認している。
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