第186話 再び地下牢へ
「儂が顔を覚えていないとでも思ったのか?馬鹿な女だ……本物の勇者は何処にいる?」
「さあね、答えると思ってるの?」
「貴様、まだ自分の立場をよく分かっていないようだな……おい、そいつを地下牢へ運び込め!!」
『……はっ!!』
ギャンの命令を受けた兵士達はレア、改めレイナの身体を立ち上がらせると、そのまま彼女を連れて廊下を移動する。ギャンはその様子を見て一瞬だけ違和感を覚えたが、すぐに気を取り直して後に続く。
それからしばらくの間はレイナは通路を歩くと、大きな南京錠が取り付けられた扉の前まで移動を行い、兵士達が鍵を外すと扉の先には階段が広がっていた。それを見たギャンは笑みを浮かべ、レイナの顎を掴んで耳元に囁く。
「正直に吐くのならば許してやるぞ……だが、何も言わないのなら覚悟しておけ」
「……拷問でもする気?」
「いや、久しぶりに人間の女を味わうのも悪くない……さあ、下りろ!!」
「くっ……」
兵士に拘束されたレイナは逆らう事が出来ず、階段を降りていく。やがて看守室らしき場所を通り過ぎた後、レイナは檻が並んでいる部屋に運び込まれた。帝都の牢獄よりも環境は酷く、最近まで使用されていた形跡が存在し、地面や壁には血が染みついていた。
レイナは檻の一つに放り込まれると、兵士達に縄で縛りつけられてしまう。この際に縛られたのは両手首だけであり、背中に手を回した状態で縛り付けられる。その様子を見ていたギャンは口元に笑みを浮かべると、兵士達に命じる。
「その女の服を脱がせ!!」
『…………』
「おい、聞こえんのか!?早く脱がせと言っておるのだ!!」
「いいよ、覚悟は出来てるからやっちゃって」
兵士達は何故か固まって動けず、それを見たギャンが叱りつけるとレイナも観念した様に頷く。すると兵士達はレイナの元へ近づき、まずは上着を脱がそうとしたが、両手首を縛り付けられている状態なので上手く服が脱がせられない。
「ギャン様……縄で縛りつけられていたは服が脱がせません。ここは縄を解放した方が……」
「馬鹿かお前等はっ!!それならば服を引き裂けばいいだろうがっ!!」
「で、ですが……」
「大丈夫、怒らないからやりなよ」
レイナは兵士達に対して一切の抵抗を行わず、その彼の反応にギャンは違和感を抱くが、兵士達は仕方がないとばかりに服を切り裂く。この際にレイナの身体を痛めつけないように気を付け、やがて上半身にサラシだけを巻いた状態のレイナが露わになる。
人間ではあるが容姿自体は幼いながらに整っており、胸元も大きいレイナを見てギャンは年甲斐もなく鼻息を荒くすると、兵士達の方はレイナから離れて緊張する様子を浮かべる。その様子をレイナは確認するとため息を吐き出し、ギャンに質問した。
「ねえ、これがこの国の勇者のもてなしなの?」
「くくくっ……減らず口が利けるのもそこまでだ。今からお前はどうなるのか、分かっているな?」
「さあ、分からないな。こんな姿で何をさせるつもり?」
「ちっ……生意気な小娘め、気が変わった。儂が自ら調教してやろう」
ギャンは看守が囚人たちを拷問するために用意されている鞭を取り出し、手元に握り締めて檻の中に入り込む。その様子を見て流石のレイナも表情が引きつり、それを見たギャンは初めて余裕をなくしたレイナに恍惚の表情を浮かべた。
「ふふふっ……流石に鞭は怖いか?」
「さあね……」
「ちっ、この小娘がっ!!」
「あうっ!?」
この期に及んで虚勢を張るレイナに対してギャンは鞭を振りぬくと、レイナの背中に叩き込む。その際の激痛にレイナは必死に耐えるが、ギャンは我慢出来ずに何度も鞭で叩きつける。
レベルが上昇し、肉体に関しては元の世界にいた頃よりも強化されているレイナではあるが、鞭のような武器の場合はいくら身体が鍛え抜かれようと痛みに関してはどうする事も出来ない。数発叩き込まれた時点でレイナは意識を失いそうになるが、ここでやっとギャンも鞭を止めた。
「ふう、ふうっ……どうだ、鞭の痛み?」
「くっ……こんな事をして、ただで済むと思うなよ」
「まだそんな口が利けるか……もういい、今度は下も脱がせ!!」
「…………」
「何をしておる!!儂の命令が聞けないのか!?」
ギャンは先ほどから反応がおかしい兵士達に怒鳴りつけるが、彼等は何故かギャンに対して敵意を滲ませた瞳を向け、その様子に気付いたギャンは呆気に取られる。そして床に倒れ込んだレイナは自分の肉体に刻まれた鞭の跡を確認すると、引きつった笑みを浮かべる。
「これだけあれば十分かな……皆、捕まえろっ!!」
『はっ!!』
「な、何だと!?辞めろ、何をする!?」
レイナは事前に「魅了」の能力で自分の僕と化していた兵士達に命じると、彼等はギャンに飛び掛かり、彼を拘束した。その間にレイナは「縄抜け」の技能で手首の拘束を解除すると、階段の方から足音が鳴り響く。
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