第126話 クロミン推参!!
「う、嘘だろ……何だよ、あれ」
「もう、終わりだ……」
「諦めるな!!な、何とか食い止めるんだ!!」
「食い止めるって……どうやってだよ!?」
迫りくる数体の牙竜の姿に対して兵士も冒険者も半数は諦め、城壁に移動したレイナ達も冷や汗を流す。災害の象徴とされる竜種が数体、それもアンデッドと化して迫りくる光景を見て殆どの人間が諦めかけた。
レイナでさえも流石にこの状況を覆す策は簡単に思いつかず、駄目元で解析の能力を発動させた。クロミンの時のように牙竜を操作する事が出来るのかを試すが、解析は「生物」にしか通用しないのかアンデッドに対しては詳細画面が開かない。
(アンデッドには解析が使えないのか!?なら、どうすれば……!!)
迫りくる牙竜の数は4体、それに対して城壁を防衛する人間はせいぜい300~400人程度、数の上では1体辺りに100人で抑えつけるしかないが、相手は並み大抵の敵ではない。
解析が通じない以上は自力で戦って倒すしかなく、レイナはエクスカリバーを取り出して対処するしかないのかと思われた時、地上の方から城壁に飛び移る影が現れた。
「「ウォンッ!!」」
「ぷるるんっ!!」
「うわっ!?びっくりした!!」
「シロ、クロ?それにクロミンまで……」
「どうしたんだ急に……」
頭にクロミンを乗せたシロとクロが城壁に現れ、急に自分達の元に戻って来た彼等にリル達は戸惑うが、クロミンが何かを伝えるようにレイナの元へ急ぐ。
「ぷるぷるぷ~るっ!!」
「え、何?自分も戦いたい?」
「レイナ、スライムの言葉が分かるのか!?」
「いや、何となく意思が伝わるというか……」
レイナは胸元に飛び込んできたクロミンが身体を震わせて何かを伝えようとしている事を察し、すぐにクロミンの考えを読み取る。そして迫りくる牙竜に視線を向け、ここはクロミンに任せるしかないかと思い、自分の分の聖水を取り出す。
クロミンを元の姿に戻すために必要な文字数は「4文字」のため、クロミンを戦わせるなら本日中はレイナは文字変換の能力は使えなくなってしまう。だが、この最悪な状況を覆すためにはクロミンの力は必要不可欠だった。
「解析……頼んだぞクロミン!!」
「ぷるっくりんっ!!」
「そんな鳴き声も上げられるのか……いけ、クロミン!!君に決めた!!」
解析を発動させてクロミンの詳細画面を文字変換の能力で改変すると、レイナは城壁から聖水を咥えたクロミンを落とす。その事に他の者達は気付いた様子はなく、絶望の表情を浮かべて迫りくる牙竜達を見ていた。
しかし、投げ放たれたクロミンは空中にて身体を光り輝かせると徐々に巨大化を果たし、やがて「黒竜」へと変身する。城壁の人間達は唐突に地上に出現した黒竜に気付き、更に大きな悲鳴を上げた。
「ガアアアアアッ!!」
「う、うわぁああっ!?」
「な、なんでここにも牙竜がっ!?」
「まずい、逃げろっ……えっ!?」
黒竜は咆哮を放つと口元に咥えていた聖水の瓶を破壊し、牙に聖水を滲ませる。この聖水は魔物に対しては影響は与える事はなく、アンデッド以外の存在には無害であった。そして聖水を牙に馴染ませた黒竜は駆け出すと、真っ先に牙竜の1体に噛みついて叩き潰す。
「ガアアッ!!」
「ギャウッ!?」
『ガアッ……!?』
数秒も経過しない内に牙竜の一体が黒竜によって地面に叩きつけられ、そのまま首の骨をへし折られてしまう。
通常の牙竜よりも体格が大きく、亜種特融の高い戦闘力を誇る黒竜にとっては通常種の牙竜など相手にもならず、聖水を滲ませた牙を食い込ませて首元を引き千切る。
「アガァッ!!」
「ッ……!?」
首を千切られた牙竜は断末魔の悲鳴を上げる事も出来ずに倒れ込み、そのまま灰と化す。その様子を見ていた他の牙竜は強力な生物の気配を感じ取り、真っ先に黒竜へと向かう。
『ガアアッ!!』
「グガァッ!!」
怪獣映画の如く迫りくる3体の牙竜に対して黒竜は尻尾を振り払い、顔面を引っぱ叩く。戦闘力という点では黒竜の方が勝るが、アンデッドと化した牙竜は痛覚は存在せず、躊躇なく傷を負っても襲いかかって来た。
「ガアアッ!!」
「ガウッ!!」
「アガァッ!!」
「ッ……!?」
黒竜の身体に3体の牙竜の牙が食い込み、流石の黒竜も苦痛の表情を浮かべ、3体がかりで抑え込まれてしまう。
その様子を城壁の上で見ていたレイナは見ていられず、シロとクロに頼んで黒竜の元まで運んでもらおうとした。
「シロ君、クロミンの所まで連れて行ってくれる」
「ウォンッ!!」
「なっ!?本気かレイナ!?危険過ぎるぞ!!」
「だからって、このまま見捨てられないよ!!」
「やれやれ……仕方ない、私達も行こう」
「仲間は見捨てない、それが銀狼隊の……いや、騎士団の掟」
レイナの言葉にチイは驚くが、ネコミンとリルも賛成してくれ、4人はシロとクロに乗り込むと黒竜の援護のために城壁から飛び降りようとした。
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