第80話 戦技と魔法の習得条件
「あの……聞きたいことがあるんですけど、皆さんはどうやって戦技とか、魔法とかを覚えたんですか?」
「ん?どういう意味だい?」
「いえ、ちょっと気になって……やっぱり、SPとかを消費して覚えたんですか?」
レイナは未だに自分がリル達の扱う「戦技」や「魔法」を覚えられていない事に疑問を抱き、他の勇者達はあっさりと戦技や魔法を覚えているのに対して自分はレベルを上げているのに未だに覚えていない事に不思議に思っていた。
もしかしたら単純にレベルを上げるだけではなく、戦技や魔法を習得するには他に何か条件があるのかと思ったレイナはこの際にリル達に尋ねてみた。
「戦闘職や魔法職……剣士や格闘家などの系統の職業は戦闘職、砲撃魔導士や治癒魔導士のような魔法を扱う職業は魔法職と呼ばれているんだが、戦技や魔法を扱えるのはこの二つの系統の職業しか覚える事は出来ないよ」
「例えば生産職の「農民」や「鍛冶師」は戦技も魔法を覚える事も出来ない。だが、戦闘職や魔法職として生まれた人間は身体が成長するにつれて自然と戦技を覚える。剣士ならば剣の技術を磨けばより早く戦技を覚える事ができるし、魔術師の場合は魔法の技術を磨けばより高度な魔法を扱えるようになる。それとSPを消費して覚えられるのは技能や固有能力だけだ。戦技や魔法の習得は強化は行えない」
「えっ……じゃあ、戦技や魔法を覚えられない職業の人は」
「どっちも覚える事は出来ない。諦めるしかない」
リル達の言葉にレイナは唖然とした表情を浮かべると、事情を察したネコミンが慰めるように肩を叩き、リルとチイは憐れみの視線を向ける。
話を聞いてレイナは道理で自分が未だに戦技も魔法を覚えられない理由を悟り、どうやら「解析の勇者」は戦闘職でも魔法職にも含まれない職業(称号)らしい。
折角、魔法が存在する異世界に召喚されたというのに自分だけが魔法も戦技と呼ばれる特殊能力も扱えないという事実にレイナは落ち込み、実は密かに魔法を扱う他の勇者達に憧れを抱いていた。自分もいつかは彼等の様に魔法を扱えると信じていただけに落胆も大きく、深々とため息を吐き出す。
「ま、まあ……別に戦闘職や魔法職ではない人間が戦えないというわけでもないさ。彼等もSPを消費すれば身体能力を強化する能力は覚える事が出来るからね」
「そ、そうだぞ!!落ち込むことはない、それにお前の場合は私達には真似できない特異な能力を持っているだろう?」
「大丈夫、レイナは戦わなくてもいい。私達が代わりに守る」
「ありがとうございます……はあっ」
ネコミンの「守る」という言葉は気を遣って言ってくれたのだろうが、今現在はこんな姿をしていてもレイナは「男」であり、自分と同世代ぐらいの女子に守られなければならないという状況に何となくだが恥ずかしく思う。
これまでの戦闘でレイナが生き残ることが出来たのは武器が有能だったという点が大きく、聖剣や現実世界の武器のお陰でどうにか魔物達を倒す事が出来た。また、SPを消費して覚えた技能も役立っており、文字変換の能力の性質を考えると戦技や魔法が覚えられずとも、補って余りある特殊能力である事に変わりはない。
(落ち込んでても仕方ないか……これからの事を考えてもっと役立つ技能を覚えておかないと)
レベルが20に上昇した事で技能の習得制限も解除されているはずであり、これまでの傾向から考えても今度も覚えられる技能の数は「5つ」の可能性が高い。大分技能も増えてきたが、戦技や魔法に頼れないレイナには最早技能に頼るしかない。
SPは有り余っており、技能の習得も強化も問題はない。既に20個の技能を覚えているが、今後の事を考えてレイナは「拳銃」を使用する際に覚えておいた方が得をする技能を探す。
(これから銃を使う場面に陥った時のために役立ちそうな技能は……お、これとかいいな?)
未収得の技能の一覧から「射撃」と「速射」という文字を発見したレイナは技能を調べると、今の自分が求める能力だと知る。
『射撃――弓矢、銃などの武器の威力上昇』
『速射――矢、弾丸などの攻撃速度の上昇』
拳銃を扱う際には心強い技能を発見したレイナは迷わずに習得を行い、先に覚えた「命中」や「連射」も含めるとこれで銃を扱う時に誤射する可能性も低くなる。また、他にも役立ちそうな技能があれば片っ端から覚えていく。
『遠視――視力を高めて遠くの景色を確認する』
『毒耐性――猛毒でも耐えうる肉体に変化する』
『頑丈――肉体の耐久力が強化』
不安を打ち消すかの様にレイナは黙々とステータス画面を操作して技能を覚え、合計で25個目の技能を覚えた瞬間に恒例の習得制限の画面が表示された。レイナはステータス画面を閉じると、リル達は丁度食事を覚えて出発の準備を整えていた。
「さあ、そろそろ行こう。ここから先はシロとクロがいても襲いかかってくる魔物が現れるようになるからね。気を付けてくれ」
リルの言葉に全員が頷き、カップ麺を片付けるとレイナ達は村がある方向へ向けて駆け出す――
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