製作
私は車を走らせ、現場からようやく家へと帰り着いた。
必要な荷物を全て荷台から下ろして、家の中へと置いていく。
家に帰ったからといって私の仕事が済んだわけではない、やるべき事はまだ残っているしね。
疲れたからすぐにお風呂に入りたいのは山々なんだけども、どうせ作業で汚れてしまうからお風呂に入るのはその後だ。
さて、帰った私が早速取り掛かるのは『コレクター』で仕入れてきた素材の合成作業だ。
折角、お金を払い買ってきた素材だしね、できれば有効に使ってアルバスさんが喜ぶようなインテリアを作りたい。
「んー、こうしてみようか」
早速、私は青サボテンの花の粉塵を使ってカーペットを作ることにした。
元々、カーペットの素材は用意している。これに粉塵を加えて合成術を用いて錬成をするだけで良いんだが、問題はそのデザインである。
高級感がありすぎても、なんだか落ち着かなくなるし、あまり地味すぎてもそれはそれでなんか勿体ない。
色に艶やかさがあって、それでいて、部屋に合う見栄えする綺麗な家具。
理想的なのはそんな家具だろう、まあ、なかなか出来ないんだけどね。
「よし、良い色になってきたな、赤がメインのサブが黒、これならあの家にも合いそうだ」
私は錬成しているカーペットを見つめながらそう呟く。
さて、それからしばらくして、無事にカーペットの錬成は終わった。なんとか綺麗な色には仕上がったと思う。私の個人的な感情だけど。
大丈夫、気持ちは込めたから、真心込めたカーペットならアルバスさんも満足してくれるだろう。多分。
続いては暖炉の錬成なのだが…。
「これは現場で錬成した方が良いだろうな、家に埋め込むわけだし」
これは現場で調整しながら錬成する事にした。
そうでなければ、調整も効かないし、何よりここで作るより現場の方が実際に家に合ったデザインなのかもわかる。
というわけで、今日の作業は一旦ここで終わりだ。
これらのインテリアを作ると同時に、二階の部屋の製作もしなければならないしな。
「さて、寝るか」
私は風呂に入り、寝巻きに着替えてとりあえず寝ることにした。
必要なものはあらかたあるし、作業も順調に進んでいる。これならば、予定した通りの期間で別荘を完成にまで持っていけるだろう。
あと、気になるとしたら、シドに預けたガラパの町長の娘の事が少しだけ気がかりだ。
私はそんな事をベットの上で横になりながら考えていたが、考えているうちに目蓋が重くなったのでそのまま目を瞑る事にした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
アルバスさんの別荘の建築から三週間。
別荘の方はほぼ完成に近づいていた。というか、後は何か欠陥がないかをチェックする段階くらいだ。
特にこれといって問題なく、作業はトントン拍子に進んでたしな、私の腕が良いのもあるが、予定よりちょっと早いくらいで完成まで持って行けそうだ。
というか、最初が問題がありすぎたのである。
ナーガが周辺に出たり、素材を集めに行ったら野盗に襲われていた娘を救ったり、普通の「ビルディングコーディネイター」なら考えられないような仕事の内容だ。
でもまあ、そんな面倒事が最初に来てくれた事が幸いしてかこうして問題なく別荘も作れているし、その点に関しては良かったと思う。
何事も終わり良ければ全て良しだ。
「へぇー、立派なものねー」
「だろう? 私の腕が良いからな」
そう言って感心したように私の隣で声を溢すのはアーデだ。
彼女はナーガがもたらした生物の生態の調査をしに来たついでに私の作ったアルバスさんの別荘を見に来たというわけである。
自分が作ったものが褒められるなんてこれ以上嬉しい事はないな、うん。
しばらくすると、別荘を並んで見ていた私達の後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「ほぅ……こりゃ凄い」
「あら?」
「あ、アルバスさん、どうも」
そう、その声の主は私の依頼主のアルバスさんである。彼の横には控えるように執事が共をしていた。
どうやら、アルバスさんは私に依頼した別荘がどうなっているのかが気になって様子を見にきたようであった。
外観は周りの自然に溶け込むように意識して建てたつもりだ。
周りの景色に合った家というのもアルバスさんから話を聞いた時に要望があったのでね。
「うむ、これなら景色に溶け込んでいるし、絵になるの、ホッホッホ」
「そう言って頂けて光栄です。……ただ、まだ多少、手直しがいるところがありますけどね」
「うん、気に入ったよ、完成楽しみだ。待ち遠しいよ」
嬉しそうに笑うアルバスのその言葉に私は笑みを浮かべながらも内心、ホッとした。
期待に添えられているような家造りができているなら、これで心置きなく内装も進められる。
「とこで奥様の容体は……?」
「あぁ、心配要らんよ、君の家を楽しみにしてると言っていてね、以前よりも元気になったくらいだ」
「それは嬉しいですね! 頑張り甲斐がありますよ」
私はアルバスさんのその言葉に思わず笑みを溢す。
アルバスも奥さんも心待ちにしてくれている。これは何がなんでも早く完成させなくちゃいけないな。
とはいえ、やる事に関しては後はさほど残ってはいない、お二人に家の中を見せるのもそんなに日にちは掛からないだろう。
内装は1番の肝だからね、満足してもらえるようにしないとな。
「うむ、……それじゃ、私はこれで失礼するよ」
「はい、お気をつけて」
私はアルバスさんをアーデと二人で静かに見送る。
それから、車に乗り込んだアルバスさんが立ち去って行くのを見送る。
アルバスさんが立ち去った後、私は再び別荘を向き直ると首を左右に振る。さて、作業を再開しようかな。
腕を回しながら、意気揚々と残りの作業を終わらすべく、作業途中の別荘に向かうのだった。
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