残りの仕事

 


 シドとの話がついて、しばらくの間、ケルズ・サラを事務所で預かってもらう事となった。


 サラが泣き出して一時はどうなるかと思ったけれど、うまく話が纏まって本当によかった。


 さて、私はと言うと、まだ残っているアルバスさんの依頼を完遂するために店に戻ると早速、手に入れたキルレプターの毛皮を使い、インテリアの製作に取り掛かっていた。



「うーんと……。まずは、カットして」



 ソファのサイズにあった毛皮を切り取って、はりつけていく作業なんだが、これまた丁寧な作業を求められる。


 アルバスさんが座るサイズに合わせたソファを作ったわけなんだが、毛皮に傷がつかないように気をつけなければならないのだ。


 しばらく、その作業に没頭しつつも、休憩を挟み、上手いこと順調に毛皮を使ったソファを三つほど完成させた。



「シャンデリアは以前、作ったストックがあったから、良いとして、後は……」



 私は頭を悩ませながら考える。


 リビングには後、テーブルや暖炉がいるだろうし、ひとまず現場に行って家を組み立ててみないことにはなんとも言えない。


 私は仕方ないか、と呟くと車に荷物を乗せて現場に向かう事にした。


 昨日帰ったばかりなのに休まる時間がない、楽しいから良いのだけど。


 しばらく、車を走らせ、私は先日、基礎工事をした現場に着く。


『メモリア』と『バレッタ』もしっかりと持ってきているし、必要な機材は全部用意した。


 さて、これから別荘を建てる工事に入るんだけれども。



「まずは玄関の位置からだろうな、うーん、そうだな、玄関は……」



 私はブツブツと独り言を呟きながら基礎の周りを見定めるようにして顎に手を置いたまま考える。


 うん、そうだな、方角的には東に玄関をつけた方が良い、北東寄りが理想的だろうな。


 北東に玄関を配置すれば、南から西にかけて部屋を配置できるし、光や南風を取り入れやすくなる点もメリットになる。



「よし、それじゃ早速……。この辺りかな」



 私は『バレッタ』に弾を詰めながら、先程、決めた配置場所に照準を合わせる。


 設計図には少しばかり修正を加えないといけないが、まあ、多少の誤差だし問題ないだろう。


 私が放った合成術を施した『メモリア』はしばらくすると発現し、あらかじめ私がデザインしたドアが出現する。


 三徹した中で作ったものだが、我ながら良い出来だと思うな、うん、これならアルバスさんも喜んでくださるだろう。


 次に作るのは廊下、これに関しても問題なく作ってきている。



「よし、どんどん作っていくか」



 廊下を作り、螺旋階段、部屋を三つ、どれも作った基礎の上にしっかりと錬成し、基礎とのズレがないかを確認しながら別荘を建てていく。


 ある程度、形は見えてきた。ログハウスながら家の中はオシャレで心落ち着くような作りだ。


 さて、では、メインであるリビングの制作に取り掛かる事にしようか、ここは私が力を入れたい箇所である。



「リビングの広さは割と取ったしな、とりあえず……」



 一旦、リビングの部屋を『メモリア』で錬成する。


 広い空間、この中にキッチンを配置して、テーブルや暖炉、ソファ、などのインテリアを配置していくのだけど。


 その前に、上の照明だけ飾っておくことにしようか。



「よし、こんなものか……、どうだろうな」



 とりあえず灯りをとシャンデリアを飾り付けた私はいろんな角度から見て違和感が無いかを確かめる。


 うーん、右にもうちょっと寄せた方が良いかもしれないな。


 微調整を繰り返し、納得した配置にできたところで、次は一階の廊下、各部屋に必要な照明を作らないといけない。



「それはとりあえず明日だな、今日はこんなもので……。

 後は外から歪んで無いかと、基礎にしっかりハマってるか確認して、帰るとしよう」



 私はそう呟くと家の外に出て、『メモリア』で作った部屋やリビング、廊下などの一階におかしなところが無いかをチェックする。


 おかしなところや、違和感があればその都度、修正をしなければならない、その修正がなかなか難しかったりするので大変なのである。


 単に別荘をぱっぱと作ることなら簡単にできるが、拘りを持った別荘を作るのであれば、しっかりとしたものを作り上げる為に尽力しなければならない。


 それが、私の仕事の流儀である。あ、これ、なんか今、テレビで言えそうなかっこいい事言ったかもしれない。



「この箇所と……。

 この箇所はちょっと修正を加えようかな?」



 建ててる最中の別荘の周りをグルリと回りつつ、私はメモ帳に気づいた修正箇所をメモしていく。


 設計図もちょっと変えなきゃいけないし、うん、こりゃ今日はここまでだな、仕事、家に持ち帰ってできるのだけやろう。


 私は一息入れるように懐から煙草を取り出すとライターに火をつける。


 しかしながら、相変わらず自然が綺麗なところだ。こういうのを見ながら煙草を吸うのも気分が良い。


 煙草を吸い終えた私は吸殻を錬成した携帯灰皿に捨てると荷物をなおして車に乗り込み、エンジンをかける。



「あ、そうだ、せっかくだし。

 帰る途中にちょっと仕入れとくか」



 私は思い出したようにそう呟くと車を発進させ、現場を後にした。


 仕入れというのは、錬成する素材のことだ。もちろん、先日のように自分の足で仕入れることもあれば、そういう素材を取り扱ってる専門店ももちろんあるわけで。


 帰る途中に私が車で寄ろうと思っていたのは、行きつけの専門店というわけである。



 私は店の前に車を止め、エンジンを切り、車から降りる。


 車を止めた店には、コレクターという看板が掲げられていた。


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