第6話 ■初対面
教室に入る前から、いつもでは絶対に漂っていない良い匂いがどこからとなく漂ってきていた。
教室内には普段見ることが絶対できない女子生徒が、男子の横の席に座っていた。
彼女たちは丸椅子に腰をかけていて、男子と机は共有で使うそうだ。
彼女たちは椅子の下に荷物をまとめ、膝の上にはバインダーやノートや教科書が置かれていて、自分の机上に置くことを許可した男子生徒の机にのみ彼女らの私物を置くことが許されていた。
僕の席に座っていた女子が僕の存在に気づくと、あわて驚き立ち上がり、緊張した面持ちで僕に笑顔を見せてくれた。
何もいやらしいことなどは、されてないはずなのに、想像以上の興奮に包まれた僕は、少し緊張しながら自分の席を引こうと手をかけると、隣の彼女が僕の椅子をひいてくれた。
「あ、ありがとう・・・」気持ち悪いほどひきつった声で彼女に礼を言った。
「どういたしまして」また彼女もたどたどしく答えた。
先ほど女性教員が体育館で話たことは本当のようで、彼女達はやはり少なからずの教育は受けていた。
僕たちは着席をしても隣の女子に積極的に話すことは出来ず、誰もがどうしたらいいのか戸惑っており、その戸惑いを隠すためにも他の男子にちょっかいをかけたりするのであった。
彼女達はそんな男子たちの様子を戸惑うことなく見つめており、その視線が僕たちを更に緊張と興奮の渦に巻き込んだ。
僕たちが着席してしばらくすると先生が入ってきた。
先生はいつものように号令をかけると、皆が一斉に立ち上がる。
普段と何も変わらぬはずの動作も、教室に女子がいるというだけで、どこかいい匂いがその場に漂い。いつもよりしっかりと先生にお辞儀をした。
先生もどこかいつもと違う声色をしているような気がした。
「えー、では先ほど女子校の先生からもあったように、男子たちは今日から1週間、女子たちとの共同生活を学校で行うこととします。
まず最初に、この学校についての説明だが、私たちの学校は開校から今日まで男子校だった為に女子トイレは1階に来客用のトイレが一つあるだけです。 これだけでは流石に足りないということもあり、今日から全フロアの男子トイレを男女共同トイレとすることにします。そして更衣室等についても、男子と同じでいいということを先ほど先生から言われましたが、念のためにきいておきますが、今の説明に何か不服などがあるものがいれば、今この場で挙手をするように」
男子たちは勿論のことだが、誰一人の女子からも異論や反対意見は出なかった。
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