【男尊女卑が当り前の世界の男子高生】~男子目線の日常~

村上夏樹

第1話 ■日常/通学

■日常/通学


ある日当たり前のように生活していただけだったのに世界はすっかりと変わってしまった。

これまで外に出て登山などをして活発に過ごすことが好きだった妹のアイカと、母親はめったに外に出なくなってしまった。それも仕方ない。あの「男尊女卑法」が発足されて以来、街中には女子や女性の姿は少なくなってしまった。

このような法律が発足されると、男どもは女に群がりとんでもないことになるんでは無いかと思っていたが、実際に女性が一人で歩いていたところで、必ずしも襲われるような環境では無い。

そもそも男尊女卑というだけであって、強姦や理不尽な暴力、児童ポルノは法律で禁止されていたため、幸い外ではなんとか秩序が保たれているといった感じだったが、その一方で以前とは全く同じとは言い切れない状況だった。


とある男子校に通う僕は悶々とした日々を送っていた。

法律や難しいことはよくわからないが、なんだか男にとって過ごしやすそうな法律ができたっていうのに、学校には女子どころか女性の教員もいない、むさっ苦しい学校の為と、普段から特に目立ったところのない僕がこの法律の恩恵を直接受けている実感は殆どなかったが。お店での女性店員のサービス精神は確実に向上していたし、どんなに年上の女でも敬語を使わなくてもいいようになり、むしろ使われる側となったりと日常の些細な変化には気づき始めていた。

以前では女性による外出自粛の為、一時期は街中に全く女性がいないこともあったが、さすがに一生家には籠るわけにはいかないのか、行き場を求め始めたのか、働きたくなったのか、街中には徐々に女性の数が戻ってきたように思えた。

通学途中の電車内ではシートに男性が座り、女性は男性のシートの前で正座しなければならなかったし。

僕も空いてるシートに腰をかけた。次の駅で20代前後半のお姉さんが乗り込んできて僕の前に正座した。

彼女はタブレットに集中して一生懸命に何かを読んでいた。

「ピピーッ!」という大きな笛の音が聞こえたかと思うと

僕の斜め向かいではシートに腰をかけるいかにも生意気そうなギャルがいた。

ギャルは驚きを必死に隠しながら警官と駅員に強がって威嚇してみせたが、警官の逮捕という声をきいて急に大人しくなった。

「まぁー、男尊女卑法を知らなかった?ということだからぁ、今回は大目に見てあげるけどさぁ。次やったらマジで逮捕だからね?ん?」警官は小ばかにしたようにギャルに詰め寄った。

「は、、はい」安心したのかギャルの目からは涙がボロボロとでていた。

「では、どうしますか駅員さん。彼女は反省しているようですし、ここはひとつ罰ゲームを命じて赦してやるというのはどうでしょう?もちろん駅員さんがきめていいですよ」これが日本の警察なのかと思うと背筋がぞっとしたはずなのに、僕の股間は何かを期待しているように、タブレットをいじる女の前でぴくぴくと動いてしまった。女性はそれに気づかずタブレットに集中していた。きっとこのやり取りは全て聞こえているはずなのに、現実逃避をするかのようにタブレットに集中することで、心のバランスをとっているのかとさえも思えた。

「は、、はぁ。。」駅員は困ったように返事をし「じゃ、、じゃあ。この路線は痴漢がとても多い路線ですので、これだけ男性のお客様もいらっしゃいましたら痴漢願望をおありのかたもいらっしゃると思うので、半日でいいので合法的に痴漢される罰ゲームというのはいかがでしょうか。。。?あ。。無理にとはいいません、その時は告訴させていただきますが。。」

この駅員はほぼ間違いなく童貞でオタクでは無いのか?と思わせるような話し方だった。

「じゃ、どうするんだ?ん?」駅員とギャルの間にたった警官がギャルの肩と二の腕を掴みながら聞いた。

「わ、、わかりました。。。」ギャルは一通り出し終えた涙を拭きながら答えた。

「何がわかったんだぁ?自分でいってみろぉ?あとは謝罪も大切だな?わかるよな?ん?」

〈わかるよな?〉というセリフは〈わかれよな?〉という意味を持つというのは彼女もわかっていたのだろう

「ごめんなさいっ、、、女のくせにシートに座って、、、ぅっ、、、すみませんでした。。。半日間、、、合法的に、、痴漢される罰ゲーム、、、わかりました。。」


この一部始終を見ていた男たちは一斉ににやけた、女性たちは我関せずといったものもおれば、心配そうなまなざしを向ける女性もいれば、男性よりも恐ろしい薄ら笑いを浮かべているものもいた。

僕は学校に遅刻することを選んで、ギャルを観察することにした。


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