多面的新世界

Finnland000

幸福論

ある晴れた朝だった。

ふと顔を上げると、、なんでもない日々だった。


この街は確かに数十年の間変化していなかった。古臭い音楽に包まれた商店街、街を死んだ顔で往来する人たち。中には恋人を連れて幸福感に満ちている人間も見られるが、彼らはどうみても幸せではなかった。


僕はこのなんでもない一日を性懲りもなく生きている。

一日はスマートフォンの通知から始まる。だが、、そんなものは大抵たいした情報ではなくカレンダーアプリが日時を通知するだけの情に乏しいものである。

ふと考える。私にとってこれは幸せなのだろうかと。

他者の価値を勝手に判断し、自己完結の思考回路から抜け出すことすらままならないでいる。

どんなに自分の現在を正当化しようと過去が襲う。未来が襲う。

何よりも社会からの期待、いや【普遍】という圧力がその影をちらつかせるのだ。


時計が彼を現実へと無情に引き戻す。

「おっと。もう8時か。考え始めてから小1時間経っているじゃないか。」

汗が額を撫でる。5月の暑さは思考を鈍らせるため以外他ならない。

途端にある思考が頭を過るのだった。


「幸せってなんだろう。これも幸せか。」と彼はつぶやいた。


ある晴れた朝だった

私は今日も変わらず7時に起床している。

朝には部屋のカーテンを全開にして風を感じ、世界が私基準で活動していることを悟る。


朝の支度は全て家政婦がやる。

家庭の一斉合切は1人の女性家政婦が必死になって回している。

機械のように自動的に動き出して家事をするもんだから利用価値しかない。


ふと開いた窓に目配せすると、空が嘲笑していた。風が冷たい。もう5月なのに。

熟練の業によってピンと伸ばされたワイシャツは風に揺られて中途半端に踊っている。

「ネクタイも私に着られることを光栄に思っていることだろう。」

そんなことを思いながら、洋服に手をかけた。

8時だ。そろそろ家を出よう。

そんなつぶやきと共に玄関のドアを開放する。


「夏の始まりが肌で感じられるなぁ。

成功者には幸せしか映らないとはこのことか。」


しかし、一握りの心配が拭えない。

「今日の商談はうまくいくだろうか、いかないわけがない。だってなにせ私がプロジェクトリーダーを任されているんだから。あ、でも今日までにミーティングスケジュール完成させないといけないんだった。しまった。まだ課題は山積みじゃないか。成功者ですら家で科目に働く【あの女】のように寡黙に勤務しないといけないってか。」


ボソボソ独り言を言いながら横断歩道を渡る。

すれ違った人は笑いを堪えられないらしい。「あの人の独り言聞いた?」

後ろから追い越してくる自転車の男は電話している。「かなちゃん、愛してる」

私といえば、ただ歩いている。独り言と心配に駆られて。


「あれ、幸せってなんだろう。私は何を得たのだ?」


ある日のある瞬間は共有されることがない。

全ての個人的な経験は自分と共にある。

本当に自分と他者を比べることだけが幸せなのかい?

正直僕はまだわからない,,,


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