第80話「セシリーとサイカの相談」

 サイカはカタカタと言いながら、セシリーに手招きする。

 それを見たセシリーはイチコとのガールズトークを切り上げて、側へと近づく。


「カタカタ、カタカタカタッ! カタカタカタ!!」


 セシリーはいっきに捲し立てるサイカの言葉を聞くべく、スキル:テレパシーを使用すると、


「おいおい、聞いてくれセシリー! うちのロメロの旦那がヤバすぎる!!」


「いったいどうしたんですか?」


「この後に及んで、ロメロの旦那は、イチコのことをすごいスキルを持っているから監視しなくちゃとか言ってるんだぜ」


 その言葉を聞き、セシリーの表情も凍り付く。


「えっと、それはサイカの悪趣味なジョークじゃなくて?」


「俺はこんなツマラン冗談は言わん!」


「そうよね。私たちがいなくなるのだから、家に迎えるくらいしてもいいと思うのだけど……」


「だよなっ! で、監視するのに、まだ俺が必要だから、もう少し居てくれって言うんだが」


「それって、どう見てもイチコさんに会う為の理由付けよね」


「セシリーもそう思うよな!!」


 セシリーの中で、ロメロにヘタレのレッテルが張られる。


「ついでに、イチコさんは、屋敷を手に入れて一国一城の主になるって言ってるわよ。そこで、最高のシチュエーションで私たちを成仏させるから、もう少し待ってって」


 サイカはカッカと骨を鳴らして、笑う。


「どっちが男だか分からんな! で、その提案をセシリーは飲んだってことだろ。俺もちょうどヘタレな旦那に恋愛指導をしなきゃって思ってたから丁度いい。もう少しこの世に残るとするか」


「そうね。私も精いっぱい2人が付き合える様サポートするわ。ところで、サイカって、そんな人様に恋愛指導出来る程、経験あったかしら? それとも私の知らないところで……」


 セシリーは変わらず笑顔なのだが、異様な圧があり、サイカは思わずたじろぐ。


「いや、待て、セシリー、俺はお前一筋だからっ! だ、だけど――」


 一瞬口ごもるサイカを見て、セシリーは圧を強め、さらに詰め寄る。


「だけど、何かしら?」


「うぅぅ、だけど、俺はお前と付き合う為に、めちゃくちゃ努力したんだよっ! 恥を忍んで同僚に恋愛相談したりっ! 友人にレクチャー受けたり! なんだったら、雑貨屋や菓子屋でリサーチもしたしっ! と、とにかく、お前と付き合う為に、俺は俺なりにスゴイ努力したんだよっ!」


 セシリーはポッと頬を赤らめると、照れてそっぽを向くが、ぽつりと溢した。


「あ、ありがと……」


 廃墟と化していたシルバーリッター邸跡地に甘い風が吹いた。

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