第49話「ロメロの雄姿」
ロメロは巨大な骸骨の腕を使い、そのままこの屋敷の主を掴むと外へと連れ出す。
入れ替わるように中へと入ると、セバスの傷を癒した。
「奥方もすでに避難させています。あとは貴方を逃がすことと、このクズを始末するだけです」
セバスに対し優しく言っているようだが、その奥に秘めた怒りを隠しきれておらず、執事のセバスは頼もしさと恐ろしさが同居した複雑な感情を抱いた。
「今の一撃、手ごたえがありませんでした。さっさと立ち上がってきてくれませんかねぇ?」
ロメロの挑発的な物言いに、瞬時に背後から声が聞こえた。
「随分と余裕だなぁ。その顔がどう歪むか見物だぜぇ」
下卑た物言いで返され、ロメロは眉を寄せる。
「はぁ、瞬間移動ってところですか? いったいなんのモンスターですかね」
「瞬間移動? はっ! そんなちゃちな能力じゃねぇよ」
ナイフがいつの間にかロメロの腹部へと突き刺さり、そのことに意識を向けていると、
「ほら、次、行くぜぇ!! その顔以外を滅多に刺しにしてやるぜ」
どこからか現れたのか、空中に無数のナイフが突如現れ、ロメロへと襲い掛かった。
しかし、ロメロはそのナイフの中、平然と歩みを進める。
「なるほど。瞬間移動に武器の同時射出。これらが出来るモンスターの能力は時間操作。魔獣クロックラビットの力ですか。あの魔獣は臆病で時間操作は逃げる為だけに使いますが、それを攻撃用に転用したのですね。ですが、攻撃力不足ですね。折角の力、本来通り、逃げる為に使えば良かったものを」
「おいおい、テメー、本当に人間か? なんで平然としゃべりながらこのナイフのシャワーの中歩けるんだ?」
「だから言ったでしょ。攻撃力不足だと。所詮投擲した程度のナイフでは、皮や肉は断てても、骨までは切れないんですよ。僕が操れるのは死人の骨だけだと思いましたか? 基本はそうなんですが、自分の骨すら操れないでどうして他の骨が操れるというのですか」
「いや、テメー、このナイフの量だぞ。自分の骨だけでカバーできるはず」
「ああ、バレましたか。僕の体の中には僕以外の骨がいくつも入っているんですよね」
ナイフを最初に刺された脇腹からナイフを押しのけ骨の手が生えると、コートの男に迫る。
「くっ!」
時間を止めて、男はなんとか迫りくる骨から逃れるが、すぐに追撃が襲う。
「僕は今、気分が悪いんですよね。そんなウサギみたいにピョンピョン逃げ回らないでくださいよ」
「誰がテメーみたいな化物とまともにやり合うかよ」
再び避ける為、時間を止めて、ジャンプする。
「はぁ、忠告したんですけど。骸骨兵士、そこです!」
男の着地地点、その床から急にロングソードの刃が出現し、コートの男の脚が串刺しとなる。
「時間が止められようと、所詮ただの人間。跳べば落ちるし、その場所は変えられない。だから、ピョンピョン跳ぶなと言ったんですけどね」
「う、ううっ……」
この場から動けなくなったコートの男は絶望の表情を浮かべる。
「僕は別にそんな顔を見たくもないですので、お気を使わず、さっさと死んでください」
ニッコリと言い放つと同時に、ロメロから生えた骨の腕は拳を形作り、今まさに男の顔を潰さんとしたとき。
「うわぁぁぁっ!!」
カルロの悲鳴が響き、ロメロは瞬時に走り出していた。
※
ゴールドバーグ家。庭内。
「ハッ!! し、しまった。なんか、ロメロ様のカッコイイところを見逃した気がするわ!! くぅ、もしそうだったら、このイチコ最大の不覚っ! いいえ、イチコ、嘆くのは後でも出来るわね。今は一刻も早くロメロ様の雄姿を目に焼き付けなくてはっ!!」
エスパーのごとき、察知能力でロメロの活躍を感じ取ると、イチコは目を覚ました。
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