第39話「カルロと襲撃計画」
「俺、ロメロの兄ちゃんに、魔道具の噂話を調べるよう言われていて、それで調べていたんだけど――」
カルロはその日、何気なく街をふら付いていた。
そうしていると、見知った紋章をつけた馬車がアイテム屋の前で止まった。
「銀色の狼の紋章って確か……」
つい先日、自分をボコボコにした相手が轢かれた馬車が、これと同じ紋章を付けていたことを思い出した少年は、何気なくその馬車を眺めていた。
「おい。小僧! お前、何を見ているっ!! お前のような下賤な者に見られては我がシルバーリッター家の格が落ちる! さっさとそこをどけっ!!」
カルロは大人しくそこを退くと、声を掛けた男は吐き捨てるように、「ふん、ゴミがっ」と暴言を浴びせた。
少年はイラッとしたが、豪商に逆らっても仕方なく、ましてやその男はロングソードを携え得ていた。
馬車は男を乗せると、何事もなかったかのように走り去っていった。
「ん? なんでアイテム屋なのに、剣なんだ?」
不思議に思ったカルロは、馬車が走り去った方向へ向かって駆け出した。
しばらく、馬車を追いかけて走ると、中心を抜けたにも関わらず馬車の姿は見えない。
西に位置する自領へと戻った可能性もあるが、カルロはもう1つの可能性、治安の悪いと言われる南側へと向かったかもしれないと思い、そちらへと向かった。
「チラッと見て、馬車が見つからなければ帰ろう」
そろりそろりと南地区へ向かうと、南地区の入り口に馬車が停まっていた。
しかし、紋章はシルバーリッター家のものではなく、金色の獅子、ゴールドバーグ家の紋章に変わっていたが、カルロは、車体に付いた傷や馬から先ほどまで自分が追っていた馬車だと判断した。
(何かやましいことがあるから、偽装したのか?)
ますます嫌疑は強くなり、カルロは周囲を探ると、とある建物の前に屈強な男性が門番として立っていた。
(怪しいけれど、見つかったらまずいな)
カルロは人目に付かないよう物陰を移動しつつ、丁度いい塀があったので、小柄な体躯を生かし、そこから屋根へと登っていく。
(これなら、見つからずに、あの家の中が見れそうだ)
カルロは屋根の上から何か聞こえないか探ると、ある一点で、男たちの声が聞こえた。
中には数人の男たちが集まっているようで、複数の声が聞こえる、その中の一人が何かを置いたようなドンッという音を響かせた。
男たちの会話がうっすらと耳に入ってくる。
「ゴールドバーグ家襲撃の依頼料はこれだ。それと、これもつけよう」
次にコトッ、コトッと小さな音が響く。
「この魔道具は希少なんだが、キミたちなら有効に使ってくれるだろう」
「おいおい。魔道具っていやぁ、今巷で噂のあれか? ずいぶん大判ぶるまいだな。そんなに俺様たちの力が信用できないのか?」
男の一人が喰って掛かる。
「いや、キミたちの強さを疑っている訳ではないのだよ。むしろ私は評価しているんだ。だからこそ応援したいと思っての魔道具なのだが、気を悪くしたのなら謝ろう」
「はっ! 別に構わないさ。余分に貰える分にはこちとら大歓迎だ」
「さて、この魔道具だが、指輪はモンスターの力が封じ込められていて、そのモンスターの力を使うことが出来るんだ。それぞれに合ったものを選んでくれ。あとは、ゴールドバーグ家には魔物がいると噂されているからな。この瓶はそれ対策だ。使うと気絶する。それと、この剣も特別につけよう。身体能力が強化される一品だ。まぁ、焼け焦げて刃物としてはいまいちだが、鈍器としてならこれでも凄まじい性能を有するだろう」
「OK! 良い取引だ。あんたみたいな上客は大歓迎だ。もしまた何かあったら頼ってくれよな」
そこで会話は終わったのか、あとはバカ騒ぎの声しか聞こえなくなった。
カルロは少し屋根で待機してから、見張りが居なくなったのを確認し、屋根から降りた。
(ゴールドバーグ家って言ったらあの娘の家じゃないか! そんなことはさせない!! 絶対にっ!! あの娘のおかげで母ちゃんは治ったんだ。今度は俺が恩を返す番だっ!!)
こうしてカルロは今度は来た道を戻り、ロメロを探し始めたのだった。
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