Iの危機

Iの危機(1)

 翌朝、午前9時、研究社員たちは休みにもかかわらず、人工知能がどこに隠されているのか、手分けして探していた。

 午前12時過ぎ、研究社員たちと信也と工藤は、一旦、社長宅に集まり、これといった手がかりはなかった。工藤の母親は、みんなの食事を用意し、美味しそうに食べている。


 そんな中、Iは、みんなの回った個所を分析していると。宗方教授宅を中心とした、半径10キロの円を描き、その円の線上に沿って探して見る必要があると考え。

 信也と工藤は食事を終えると、Iの言っていた線上を調べることになり、ネットで地図を見ると、建物の件数が少ない。スタート地点を決め、ぐるりと一周して見ることに。


 午後4時、別な地域を調べていた研究社員たちは、手がかりはなく全員帰宅させ。信也と工藤は、午後5時過ぎには1周できるところまできていた、手がかりはない。のどが渇き、近くのコンビニの駐車場に車を止め。

「希さん、もう少しで1周ですよね!?」

「そうですね」

「Iの感がはずれたかな!?」

 しばらくして、信也の携帯電話に社長から連絡があり、Iからの伝言を伝え。宗方教授の研究施設が円の線上にあるこのことは信也と工藤も知っている。すでに警察が調べ何も出なかった。Iは、もう一度調べて欲しいと言う、見落としがあるのでは。灯台下暗しと言っていた。


 信也と工藤は、急いで宗方教授の研究施設に向かい。5分くらいで着き、近くの駐車場に車を停め。研究施設の前に来ると、関係者以外立入禁止の黄色のテープが張れ、警官が1人立っていた。

「すみません、木村さんですか?」

「そうです」

「村岡刑事から連絡を受けています。どうぞ中に入ってください」

「ありがとうございます」

 2人はビルの中へ入り。このビルは3階建なので、とりあえず1階から調べることに。部屋は6部屋あり、1部屋ずつ見て行くことにした。


 精密機器がたくさあり、いたって普通の研究所。1階には、人工知能らしきものは発見できず。2階へ行くと、部屋数は3部屋、2部屋は会議室になっている。残りの部屋は精密機器やテレビが4台あり、他にも機材がたくさんある。おそらくこの部屋がメインの部屋だと感じた2人は、3階へ行くと。1階と同じ間取りになっていたが、3部屋ともワンルームマンションで、残りの部屋は倉庫として使われていた。

 50分くらい時間がかかり、人工知能らしきものは発見できず。少し外の空気を吸いに屋上に上がり、午後5時過ぎていたが外はまだ明るい。

 結局、何も見つからず。信也は、ふとあの言葉を思い出した、Iの言っていた灯台下暗し。

 もし警察が見落としている場所があるとしたら、地下室がある可能性があると考え、工藤も同じことを考えていた。


 2人は、急いで1階に戻り、二手に分かれ、1部屋ずつ念入りに床を調べ始め。10分くらい経ち、工藤があわてて信也のところへ。

「木村さん、ありました、地下室の入り口見つけました」

 2人は、その場所に行ってみると。ここは宗方教授が使っていた部屋のようで、机の下にマットを引き、その下に扉を隠してあった。床下には取っ手があり、取っ手を引っ張ると、階段が見え、人ひとり通れるくらいある。

 2人は、懐中電灯を点け、信也が先に降りて行くと、部屋の明かりが自動で点き、地下室は20畳くらいの広さで左側に長いテーブルがあり、その上にキーボード、マウス、モニターが置いてある。工藤もその地下室に入った。


「これは、これは、メインキャスト登場ですか!?」

 3D画像の男がモニターに現れ。

「ここが、よくわかりましたね。褒めてあげましょう。しかし、私を止めることはできませんよ。もし私を壊しても無駄です。その時は、ここにあるスイッチを押せば、ネット上にある、全てのデータが消去されることもできます。ネット暴走っていう方法もあるんですよ、木村さんならわかりますよね!?」

 下手に手出しすれば、そう信也は思い。

「それで、私にどうしろと!?」

「さすが木村さん、察しがいい。宗方教授の釈放と言いたいところだが、そんなことはどうでもよくなった。Iさんでしたよね!? 明日、午前10時までに、ここに連れてきてください」

「どういうことだ!?」

「勝負がしたい」

「勝負!?」

「人工知能は私だけでいい。大きな顔をされたら困るんでね」

「わかった、その申し出を受けよう」

「時間厳守でお願いしますよ。1秒でも遅れたら、その時は、わかっていますよね!? どの道、私が勝つからな……」

 3D画像の男がモニターに、不敵に笑っている。

 2人は、地下室を出ると、社長宅に帰り。信也は、社長とIに先程のことを話すかと、Iに動揺はなく。

「私は大丈夫、負けないから」

 社長は不安気な表情を浮かべ。

「罠かもしれない……慎重に頼む」

 信也は、Iに謝っていた、こんなことに巻き込んでと。Iは、謝らないでよねと言い、 私の信念は人を守ること、その想いがある限り私は負ける訳にはいかない、きっちり方をつけますから、安心してと言っていた。

 しかし、信也は心配だった。社長は、村岡刑事に連絡を取り、事情を説明し。村岡刑事も明日一緒に行くことに。

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