Iの夢(2)

 社長は、昼食はいつも社員たちと一緒に昼食を摂る。

「希、お昼はどうするんだ?」

「あっ、お父さんにお弁当作ってきているんだった」

 工藤は、バックから2人分のお弁当を取り出し。

「初めてだな、希がお弁当を作ってくれたのは、ありがとう」

「私、お茶買ってくるね」

 工藤は自販機のところへ行き。社長は、I見て、つい言ってしまった。

「Iさんは、お昼どうするの?」

「社長、面白くないです、って社長も冗談を言うですね」

「すまない、人気としか思えなくって、希は、Iさんに会って何か変わったような気がする、友達ができて喜んでいたからな」

「嬉しいな、私の初めてのお友達でライバルだから」

「ライバル!? 信也君、彼はいいよな」

「でしょう、私もそうなんですよ、すみません、言葉が過ぎました」

「気にするな、しかし、本当に人間だよな、そうとしか思えない」

「確かに、人間みたいに体があったらって思います。だからと言って、私は人間ではありません。世間から見れば、どうせプログラムにしか過ぎないって思われると思います。事実そうです。ただ、よかったもらいたいことは1つ、私は私なんです」

「そう、そこなんだよ私が悩んでいたことは、感情持ち自分で判断し、でもしょせんはただのプログラムと言われればそれまでだし。でも、その考えは無用ということか。私は私しだな、人格を持って生まれてきたんだから私たちがしっかりしていれば、すむことなんだよな」

「信也さんも言ってました。道具としていいようにこき使われて、壊れたらそれまでっていう風になったらって。私、言ってやったんです。だったらそんなことにならないようにすればいいことだって」

「信也君も心配だったんだよ、そんなことになってはいけないって」

「わかっています」

「1つ質問があるんだが、怒っても構わないが、いいですか? 仮に、ここにあるハードディスクを丸ごとコピーしたらどうなる?」

「当然、同じものができます。勘違いしないでください、確かに同じものができますけど、環境によって個性は変わってきます。ようするに性格が変わることになります。但し、基本的信念だけは変わらないと思います。人を助け、人を守ること」

「怒ってないのか?」

「いいえ、社長が言いたいのは、簡単に同じ物が作れることでしょ?」

「そうなんだ、ありがたみがわからなくなってしまいそうで」

 そこへ、希が戻って来ていた。

「バカじゃないのお父さん、大切な命なんだって、教えて上げればいいことでしょう!? 私だって小さい時にお父さんが買ってくれたぬいぐるみ、今でも大事に持ってるし。確かに、ボロボロだけど変わりは無いって思っているし、私、何言ってるんだろ!?」

 すると、工藤の後ろには、研究社員の1人がお弁当を持って。

「社長、話聞いていました……。みんなもそのくらいわかっていますって」

「すまない、つい心配になってしまって」

「希、お父さんにバカじゃないは言い過ぎ、私も言えた義理ではないけど」

「お父さん、社長、すみませんでした」

 どことなく、社長と信也は似ているような。社長と工藤と研究社員の1人は、食事を摂ることに。Iは、その様子を見ていた。

 食事を終えると、研究社員たちが早々とミーティングルームへ集まり。Iが研究社員たちを見て。

「皆さん、昼休憩は?」

「Iさんとお話がしたくて、そうだよな、みんな!?」

 みんな、そうだと言う。それに対してIは、と言うと。

「えー、私、もてもてなのー? 信ちゃんに叱られるー」

 それに対して、工藤は、と言うと。

「何それ!?」


 みんな思わず笑い出し。午後1時になるまで雑談をしていた。

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