君の未来は曇り空
木成 零
時渡りの少女
プロローグ
将来の自分はどうなっているのだろう。
そんなことを誰しも一度は考えたことがあるに違いない。
もし自分の未来が分かるのなら見てみたい。
幸せになっているのか、不幸になっているか。
あるいは、理想の自分になっているか、目標こそ達成できなかったけど楽しんでいるのか。
それを知ることで、自分がどうすればいいかが分かる。
それはあくまで未来を知れたら、という過程の話でしかなかった。
しかし、それはついにifの話ではなくなった。
ちょうど今、二組の家族が未来に向けて出発しようとしていた。
「未来ってどんな風になってるのかな?」
興奮気味に幼い少女が両親に聞いてみた。
「今とそんなに変わってないと思う」
少女とは対照的に落ち着いていた少年が冷静に返す。
「そんなこと言わないでよ。楽しむが台無しになる」
「だって行くのは十年後だろ? 何百年じゃないんだから」
「そうだけど……私がどう思おうが勝手でしょ?」
「はいはい、二人とも。その辺にしなさい」
喧嘩になりかける絶妙なタイミングで少年の母親が仲裁に入った。
そこへ、一人の男性がやってくる。
「お待たせしました。準備ができましたのでこちらへ」
部屋の奥の扉を開かれ、一行は中へと通される。
「ではこの中でお待ちください」
薄暗い部屋の中央には巨大なカプセル型の装置があり、その中へと案内される。
ガチャリと扉が閉められて少しすると、
「では行きます。5、4、3」
カプセル内に内蔵されたスピーカー越しにカウントダウンが開始される。
中の家族が期待に満ちた表情で顔を見合わせ、今か今かとその時を待つ。
「2、1、0」
徐々にカプセル内部が白い光で満たされていき目を閉じると、自分の身体がふわっと持ち上がるような浮遊感を感じた。
まるで遊園地のアトラクションのようで多少の恐怖を感じ、思わず少年はぎゅっと目を閉じた。
瞼の奥で感じる光量が落ち着くと、恐る恐る目を開く。
すると、宇宙のような空間に自分が浮かんでいた。
真っ暗な空間に、星のような小さな光が点在している。さっきまで一緒だった家族の姿はなく、今は自分一人らしい。
「うわぁ……」
幻想的な光景に少年は思わず見入っていた。
その空間を不思議な力で自分がまっすぐどこかへ移動している。
流れに身を任せていると、唐突に視界が強い光に覆われた。反射的に目を覆う。
「なんだろ」
すぐに光は収まったが、雷鳴のような音も轟き始める。稲光のような横のフラッシュが連発し、幻想的な光景は一瞬で嵐へと変化した。
「うわっ!」
近くで落雷の音が響く。
この事態が異常だということは、少年でも何となく察しがついた。胸の中に焦燥感が募り始める。
「お母さん、お父さん!」
身を丸めて耳を塞ぎながら両親を呼ぶが、返事はない。
「俺はどうなっちゃうの……?」
強い雷鳴が絶え間なく轟く。その激しさが徐々に強くなり、これまでで一番強い雷鳴が響いた。同時に雷光が少年を飲み込んだ。
「うわああああぁぁぁぁ!」
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