目が覚めたら異能学園モノに転生しました。

projectPOTETO

第1話 目が覚めたらここにいた。

 目が覚めると自然の匂いがした。

 上からは日の光が木々の間から差し込まれてきており、程よい暖かさが眠気を誘う。

 背中に感じる硬くも柔くもない感触は草と土だろうか。

 しまったな。こんなところで寝ていると服を汚したと姉に怒られてしまう。

 しかしこの心地よい感覚には抗いたくはない。このままもう一度寝てしまおう。


 ……。

 ………。

 …………。


「いやちょっとまて」


 二度寝しそうになった体をガバリと起こし僕はあたりを見まわした。

 そこには生い茂る木、木、木。

 都会生まれのコンクリートジャングル育ちな私にとってはあまり縁のない光景である。

 ここはどこだ。

 そもそもなんで私はこんな場所で寝ているのだろうか。

 誘拐?

 いや私にそんなことするわけがない。

 自慢じゃないが一般モブが私の特徴だ。

 夢遊病?

 まさか。一度寝たら朝までベッドだ。

 仮にそうだったとしても年中自宅のリビングを占拠している姉が私のことを止めるだろう。

 ……もしかして捨てられた?

 あの姉に?

 お酒とチャーシュー取り上げたのがいけなかったのかな。


「いやいやいや」


 無い無い無い。

 パッと思いつく限りことを並べてみたがどれも可能性は無いだろう。

 いや断言できるわけじゃないけれども。


「よっこらせっと……ん?」


 とりあえず立ち上がると着ている服に妙な違和感を感じる。

 見たり脱いで触ったりして確かめると、それはどこかの制服だった。

 ブレザーの胸ポケットに刺繍されているエンブレムを見るにどこかの学校のだろうか。

 少なくとも私自身が通っている学校のものではない。そもそもウチは学ランだし。

 しかし、この制服はどこかで見覚えがある。

 見ていて懐かしさを感じるぐらいに。


「う~ん」


 首を捻って思い出そうとしてもこれっぽちも思い出せない。

 とりあえずブレザーを着直して周りを探索するか。


「みぃつけたぁぁー!!」


 なんて?

 振り返ると空中から少女が降ってきた。

 いや『舞い降りてきた』という表現のほうがピッタリな気がする。


「えっ、空?人?」

「良かった無事みたいで……」

「いや、誰っ!?」

「はぁ!?何言ってんのこのポンコツ!」

「ポンっ!?」


 いきなり人のことをポンコツ呼ばわりとは失礼な。

 私は睨みつけるようにそいつを見る。

 ルビーのように赤く綺麗な瞳。すっと通った鼻筋と、健康的な肌。

 純白の髪は頭の側面で一本に纏められており、いわゆるサイドテールってやつだ。

 紛れもなく美少女である。

 ……あれ、こいつも見覚えるな。

 テレビか雑誌か?

 でも流石にこんな美少女見たら覚えているはずなんだけれどな。


「はぁ……とりあえず戻るわよ。

 カノン様が待ちくたびれてしまうわ」

「えっ、ちょ」

「言い訳は後で聞いてあげる!」


 白髪の少女が私の手を掴むと同時にその身体がふわりと浮く。

 それに連動するように自分の身体も浮き上がり地面からどんどん離れていった。


「ういてっ、浮いてるっ!?」

「何いまさら慌ててんのよ。

 探すのに時間かかったからちょっと速度出すわよ」

「速度ってなにブァ!!!」


 質問をする前に正面から強烈な風を浴びる。

 走ってる車から顔を出した時、を何倍も強くした感じだ。

 口を閉じ、片腕で顔を覆うようにして風を遮って薄くではあるがなんとか目を開けられるような状態にする。

 私の手を引く少女を見ると、この風の対策の為かゴーグルを装着していた。

 こ、こいつ自分だけ!

 だがすぐに空を飛ぶ感覚に慣れ始めてきて、少しずつ楽しくなってきた。

 案外私は肝が据わっているのかもしれない。


「ようやくついたわ」


 勢いが収まり、空中で静止する。

 ようやくちゃんと目を開けられるようになる。

 視界の先、そこにあるものを見て僕は驚いた。

 同時にここがどこであるのかを、

 大きな六角形のメガフロートを中心として、他にいくつものフロートが繋がった人工島群じんこうとうぐん


 水上戦闘都市・オリュンピア。


 アドベンチャーゲーム作品『バトライズアカデミア』に登場する舞台だった。

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