土神と狐
fktack
第1話
連休になり、テレビ番組を見ていたらそれはクイズ番組で、芸能人が賞金獲得のためにもったいぶって選択肢を選んでいた。ちょうど最後の問題で賞金は300万円だった。
問題「宮沢賢治の童話を5つ答えなさい」
私はぎりぎり5つ答えることができた。注文の多い料理店は小説かなと思ったが、童話だった。その中に「土神と狐」というのがあった。高校時代の友人に教えられた話だった。あらためて読みたくなって、スマホで検索した。以下は、元の文章に私が手を入れたものである。宮沢賢治ファンの方はご容赦ください。
*****
宮一本木の野原の、北のはずれに、少し小高く盛もりあがった所がありました。いのころ草がいっぱいに生え、そのまん中には一本のきれいな女の樺の木がありました。
それはそんなに大きくはありませんでしたが、幹は黒く光り、枝は美しく伸びて、五月には白い花を雲のようにつけ、秋は金や紅や色々の葉を降らせました。
ですから渡り鳥のかっこうや百舌も、また小さなみそさざいや目白も、みんなこの木にとまりました。ただ、もしも若い鷹が来ているときは、小さな鳥は遠くからそれを見付け、決して近くへ寄りませんでした。
この木に二人の友達がありました。一人はちょうど、五百歩ばかり離れたぐちゃぐちゃの谷地の中に住んでいる土神で、もう一人はいつも野原の南の方からやってくる、茶色の狐だったのです。
樺の木はどちらかといえば狐の方が好きでした。なぜなら土神の方は、神という名こそついていましたが、乱暴で髪もぼろぼろの木綿の糸束たばのようでした。眼も赤く、ワカメのような着物を身につけ、いつも裸足で爪も黒く長いのでした。狐の方は大変に上品な風で、滅多に人を怒らせたり気にさわるようなことをしなかったのです。
ただ、もしよくよくこの二人をくらべて見たら、土神の方は正直で、狐は少し不正直だったかもしれません。
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