俺は全部、わかっている!!!

ゼンサイ

第一部 前編 復讐と決意




  皆さんこんにちは!僕の名前は高木駿って言います。ちなみにどこにでもいる平凡な大学生で、チート持ってるとか異世界転生とかしたことありません。


 ですが、そんな平凡な僕にもとびきり可愛い彼女がいます!


ん?自慢でキモい?どうせ単純ヒロイン?ハーレムやれやれ主人公?嘘つき童貞野郎?


いやいや、毒舌すぎるよ…。会ったばっかりで…

僕も一応人だからね?感情ありますよ?


こんなにディスってくる皆さんは知らないかもしれませんがここまで来るのに結構大変だったんですよ!!

少しだけお時間宜しいですかね?


時間がない?


いや、事実を証明するために少し話させてください!

言われっぱなしも嫌なので!


ほら、そこに椅子がありますので座って!!


(ゴホン)


よし、ではお話ししますね。僕の色々あった高校3年間を…



***************


  高1の6月


  「駿!駿!遅刻するよ!緑のベーコンと赤色の目玉焼きが出来たわよ!」


 午前7時、自室で気持ちよく寝ていると一階から母の声が聞こえてきた。毎朝聞こえてくる色とりどりの朝ごはんは俺の心をどん底まで突き落としていた。


 うぅ…今日も失敗か。


 物を焼く時、例え焦げたとしても色は黒になるはず。これは絶対的事実であり覆ることはない。しかしそんな常識は通用する筈もなく、母さんはいつもの如く料理を鮮やかに染め上げる。


 芸術が爆発し過ぎてるよマミー。


 今年の4月から父親が福島県に単身赴任をしてから今まで作ったことがない母親が代わりに料理している。当たり前のように1度も美味しいと思った試しはないし、父さんの料理がどれだけ美味しかったのかが今ではハッキリ分かる。


 (父さんのカレーが今では恋しい…)


 新しい食生活にそればかり思っている毎日だったけど、こんな得体の知れないものを毎日食わされているにも関わらず、なんとかここまで耐えてきていることは我ながら自分の消化器官の能力を疑っていた。



 眠気に襲われながらも、充電してあるスマホを手に取り画面に目をやる。


 そういえば、今日は月曜日か…。


 週末というのはなんであんなにもすぐに終わってしまうのだろうか。寝坊して、アニメ見て、牛のようにぐうたら過ごせる1日は本当に夢のようだ。昨日もお昼にお目覚めして、一日中溜め撮りのアニメを見ていた。


 しかし時間は勝手に進むものであり、また一週間が始まろうとしている。あのイチャイチャラブコメをまた5日間も見させられると思うと心底嫌気がさしていた。


 数分くらいたっただろうか。ベットから出たくなくなった俺は未だにスマホを片手にTwitterやLINEをチェックしながらゴロゴロしていた。


 ラインの内容はいつも通りの相談だっだ。いつになったら付き合うのか…。


 (ドタ、ドタ、ドタ、ドタ)


 ん?


  (ガチャッ!! バタン!!!)


「起きろ!ぼけぇぇえ!!いつまでも布団から出てこないと警察にてめぇの部屋の酸素濃度少なくしてもらうぞ!」


 母さんが起こしに来た。それにしても彼女は本当に人なのだろうか。朝起きたばかりという理由もあってか、彼女の言ってる意味がわからなかった。


 警察って酸素濃度とか少なく出来るの?どういうこと?

 

 「ほら!早く起きなさい!美味しい朝食が待ってるから!!」


 「変色した目玉焼き?」


 「なにいってるのよ!卵は元々赤色でしょ?」


 聞いたことないんだけど…


  「何よその目…。今、今日の夜は成功させるから!そもそも料理は栄養が一番大事でしょ?良薬は口に苦しっていうでしょ?」


 「母さんのもはや良薬じゃなくて汚ぶ…」


 (ドスッ!!)


 母さんの右拳が俺の部屋の壁にぶっさ刺さった。


 「食べるの?食べないの?」(ニコッ)


 顔は笑顔なのにその下はもう鬼そのものであった。


 「食べます!!」(ニコッ)


 

 俺は拒絶反応している体を無理やり起こし、顔を洗った後、恐怖の食卓(鬼ヶ島※家来なし)に向かった…。


  

           *



 とても美味しかった朝ごはんを済ませ、いつもの通学路を1人歩いていた。


 6月のこのちょうどいい気温とたまに吹く心地良い風は澄んだ心を癒してくれる。


  素晴らしい空に、素晴らしい曲がり角。


 あとは素晴らしい女の子がパン咥えて走ってくれば……。


 そんな現実には起こり得ないラブコメ展開を妄想するのが朝のちょっとした楽しみである。


 そういえば、自己紹介がまだだったね。

 俺の名前は高木 駿。凡凡高校に通う平凡な高校一年生。黒髪の身長170センチの顔は中の中…


 実は、そんな平凡な俺にも絶対に曲げられない考えがある。


 それは…『ハーレム系男子の鈍感さマジ○ね』

ということ。


 皆さんは今まで読んだことがあるだろうか。ハーレム漫画、ハーレム小説、Hikaru源氏という作品の数々を。


 別に作品が嫌いということじゃない。登場人物たちにこんなにも感情移入させられてるということは、それだけ作り込みが凄いってことだし。キャラは可愛いし、推しのメイン回はとてもドキドキしてしまう!


 なのにハーレム主人公ときたら、なんであんなにも気づかないのだろう?

ヒロインはあんなに努力して、遠回しかもしれないけどちゃんと気持ちを伝えてるのに。


キスしていい?   を


キムチしていい?


 どうやったら間違えるのだろうか…逆に教えてほしいくらいだ。


 これに関しては共感してくれる人が多数だと思っている。現にハーレム主人公・やれやれ主人公など数々のワードがネットに漂っている。


 たかが二次元と言われるかもしれない。でも!されど二次元。現実に起こり得ないから作品の中で自分の青春を存分に謳歌する。それがアニメや漫画ラノベの素晴らしさだ!


 そしてここは現実、それは間違いない。しかし恐ろしいことにそれは存在していた。高校生活始まってまだ2ヶ月…でもいたんだ。ハーレム気分の超絶ウハウハしてる奴が…


 熱心に解説していると近くの公園の時計が目に付いた。


 あれ…もうこんな時間!?


 今は8時25分うん。 それで学校開始が30分…


 俺は急いで駆け出す。


 おりゃぁぁぁあ!!!!!


 ごめん!話はまた後で!



 その後、誰に話しかけてるのかも分からないのに熱く語った俺はショートホームルームで担任に血祭りにあげられたのだった…。

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