第24話 放課後、主と部下は語り合う(胸)
昼休み、ニルトと模擬戦の約束をした後は滞りなく午後の授業が進んでいった。
そして本日の授業は全て終わり、放課後が訪れる。
さてと……、学院に俺の力を知らしめるのも重要だが……それよりも当初の目的を進めねばな。
俺がここに来た目的は新たな幹部を手に入れ、体に掛かっているこの呪いを解く事だ。
ネスティには事前にゴールドクラスの人間を調べるように言ってある。
今日はこの後ネスティの報告を聞くために会う予定があるのだ。
場所は俺の教室と言っているので、ネスティであれば問題なく来られるだろう。
そういえば、ここまでネスティと離れていたのは久しぶりだな。
俺は自分を含め二人しかいない教室内でそんな事を考える。
初日のため特にこの場所に長居する理由が無いからだろう。
だからこそ、俺とネスティの密会に最適という訳だ。
「それでだテディ、もっと面白い話はないのか?」
「もうねぇよ!? 俺にどれだけ話させるつもりだお前は!?」
「ネスティが来るまでだ。それまで俺の話し相手になると約束したであろう?」
「無理やり約束させたんだろうが!? ったく本当にお前はぁ……!!」
怒りを露にするテディ。
しかし何だかんだ言って付き合ってくれるため、コイツは将来こうやってずるずると色々な事に巻き込まれるのだろうとしみじみ思う。
「まぁよい、後は黙って待つとするか」
机の上に足を乗せ、後頭部に手をやりながら俺は待機の態勢を整える。
するとすぐに教室の扉が開いたかと思うと、慣れ親しんだ顔が現れた。
「イブル様、お待たせしました」
「ネスティ! 一日ぶりだな!」
「はい。このネスティ、イブル様に会える事をどれ程心待ちにした事か……」
心底嬉しそうな顔をしながら俺の部下は俺に歩み寄る。
それを見たテディは、鞄を持ちすぐさま立ち上がった。
どうやら帰るようだ。
ならば伝えておかねばな。
「ご苦労だったテディ、寂しいだろうが一人で帰ってくれ!!」
「お前と帰れなくて寂しいなんて思わねぇよ!!」
「ふっ、照れるな!こっちが恥ずかしくなるだろう!」
「だぁぁぁぁもう!!」
何故かテディは頭を抱える。
「もういいよじゃあな!!」
そう言って彼は足早に教室を出て行ってしまう。
「今のはどなたですか?」
「テディという者だ。俺の下僕……とは違うか、所謂「友人」という奴だ」
「友……人」
俺の言葉に、ネスティは何やら思わし気な表情を作る。
「どうした?」
「い、いえ! 何でもありません!」
「そうか。なら良いが……では本題に入ろうではないか!」
「はい」
こうして俺とネスティが重大な話し合いを始めようとした時、
「ふぅ~、あれもう皆帰っちゃったの~? あ、イブっちいるじゃん!」
見事に邪魔者が現れた。
「ミュー!? まだ帰って無かったのか!?」
「うん。ちょっと先生に用事があってね~、そこにまだ私の鞄あるでしょ?」
「ん……本当だ……」
ミューの座っていた席に目をやるとそこにはまだ彼女の鞄が置かれていた。
くっ……! 俺としたことが痛恨のミスを……!!
「わぁ綺麗な人~、ね~ね~二人何の話してるの~? ていうかイブっちとその人知り合い?」
目をキラキラさせながらミューは質問を重ね続けた。
「イブっち……? イブル様、この女は一体……?」
信じられないものを見るような目でネスティはミューを見る。
「ご、ごほん……ま、まぁあれだ……。この女もテディと同じで、俺の友達……みたいなものだ」
「そ、そうなのですか……?」
「は~い! 今日からイブっちの友達になりました! ミューで~す、よろしく!」
ミューはそう言いながら俺に腕を絡ませた。
「ひゅふぉぁ!?」
するとネスティはとんでもない裏声を上げる。
「ミュー、いきなり何をするんだ」
「え~? その人友達って言っても何か疑ってる感じだったからぁ~、こうやって仲が良いって見せれば納得してくれるかなって」
「わ、分かりました! もういいです! だから早くイブル様から離れなさい!」
「いや、まだこの胸を堪能していたい!」
その通りだ! 早く離れろミュー!!
「イブル様?」
「はっ……!?」
また本音と建前があべこべに……!! くっ、やはり豊満な胸には抗えないという事か……!!
悔しさを浮かべる俺、それを見たネスティは顔を赤らめながら呟いた。
「イ、イブル様は……胸の大きな女性が……好みなのですか?」
とても弱弱しい口調で指をもじもじさせる俺の部下。
くっ……! 一体どうすれば良い……!? 何が正解なのだ……!!
ネスティを見ながら、俺は思考の海に没頭する。
ただ一つ……もっとも穏便に事を済ませる解を求めて……。
はっ……!? これだ……!!
……そして、俺は得た。
「ネスティ、良く聞け」
「は、はい……」
「俺は大きな胸が好きだ……」
「そ、そうですか……」
「だが!! 決してそれは小さき胸が嫌いという訳ではない!!」
「っ!?」
「何言ってるのイブっち?」
驚くネスティ、最もな疑問を投げかけるミューを無視して俺は言葉を続ける。
「大きな胸、小さき胸……どちらも等しく『胸』だ。そこに大きさの大小はあっても、価値の優劣など存在しないのではないか……?」
「本当に何を言ってるのイブっち?」
正直俺も何を言っているのかよく分からない。
「た、例え……そうだとしても私は、イブル様の好みでないと……意味がありません……」
「あぁそれなら大丈夫だ。ネスティ」
「な、何故ですか!?」
俺の冷静な発言に、食い下がるネスティ。
簡単な話だ……。
俺は端的な事実を彼女に述べる事にした。
「お前の胸は……決して、『小さき胸』ではなぁい!!」
ネスティの胸部を指差して俺は叫ぶ。
そう、ネスティの胸は『小さき胸』と呼ぶには無理がある大きさをしている。
少なくとも世の女性の平均よりは間違いなく上なのだ。
ミューという規格外な存在が現れた事で薄れてはしまったが、間違いなくネスティの胸は大きい方である。
「だから安心しろ……。お前は十分に俺の好みの部類に入っている……!!」
「イ、イブル様……」
俺とネスティの目が合う。
そこにはもう
「う~ん? 何これ?」
俺達の様子を見ながらミューは正論を唱える。
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