2人の為に

「ローグのところに来たけど……やっぱり不気味だな」

大和と橘の為に、ローグについて調べる。

少しでも2人の役に立ちたい。

監視カメラのスイッチを切っておいたから、多分大丈夫だろう。

「ローグの部屋、すごい散らかってる」

ふと、調べる手を止めて壁を見ると、大和の写真と橘の写真がピンで止めてあった。

何故か橘の写真の胸部にはナイフが刺さっている。

「ナイフ?どうしてナイフなんか」

写真よりも今は調べるのが優先だ。

意識を机に再度向ける。

「まぁいいや。ええと、次は引き出し……?」

引き出しには鍵がかかっており、開ける事ができない。

力づくで開けるのは無理そうだ。

「どこかに針金とかないかな」


『何か、探し物かい?』


 突然背後から声が聞こえ、思わず振り返る。

見つかってしまったか。

「お前、誰だ」

「ん?ああ。君とは初めまして、かな。よく千尋ちひろ……あ、ローグから話は聞いてるけど。僕はセフィル。ローグの友人だよ」

「セフィル、か」

「うん」

この男からは異様な雰囲気が漂っている。

ローグの友人、と言っていたが、それならば実験施設についても知っているのだろうか。

「何も言わないのか」

「ん?」

「ローグの部屋を調べてる俺を、止めないのか」

「うん。止めはしないよ。鍵が必要なんだったよね。はい、これ」

そう言ってセフィルが渡してきたのは、『引き出し』と書かれたタグのついている鍵。

「え……いいのか?お前、ローグに怒られるんじゃ……」

「あはは、そんな事で僕は怒られないよ。それに、言わなきゃ多分バレない」

都合が良すぎて裏に何かありそうと思うが、セフィルはそれを悟ったのか、「裏なんて何もないよ。ただ、そうした方が面白いかなと思って」と微笑みながら言った。

「そう、か」

 セフィルから鍵を受け取った水樹は、引き出しの鍵を開け、中を調べる。

『大和くんの記録』と書かれたファイルが沢山並んでいた。

「やまとの、記録?」

ファイルの中には、大和らしき子供の写真と、何をしたかが事細かに書かれていた。

「全部やまとの写真と文……」

写真を撮って橘に送っておこう。これは情報になりそうだ。

「やまと、ここにいた事があるって事なのか。でも、そんな覚えないって言ってたし……」

「大和君はローグがすごく気に入ってた子だね」

「気に入ってた?」

「うん。まぁ、僕には見せてくれなかったんだけどさ。僕にも見せないって事は相当気に入ってたんだろうね」

ちょっと見てもいい?とセフィルに言われ、ファイルを彼に見せる。

「ああ、なるほどね。確かにローグが気に入りそうな子だ。素直で人の言う事をよく聞いてくれそうな子」

セフィルから返されたファイルを元に戻す。

「そろそろ帰った方がいいと思うよ。ローグが帰ってくる頃だ」

「そう、なのか。ありがとう」

結構情報は集められただろう。

ここは彼の言う通り、そろそろ引き返そう。

「うん。気をつけてね。水樹くん」

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