第8話(番外編)とあるショッピングモールにて、続き

敵とヒーローのやり取りは特に感動したところはしばらく無かった、というよりも途中で寝てしまった。実際、ここ最近パートに家事、学校のPTAなどと忙しく、まともに寝られなかったから仕方が無いだろう。

あとで子供たちに聞いたら、どうもマホロブラックが敵に襲われて倒れた後、敵の部下の女の子がキレたそうだ。やはり幼く拙い説明だったが、ショーのサブタイトル通り、その子が上司に反論するシーンだったと思われる。


先ほど自分のパートの件について話していたが、決してその職場自体は特別ブラック企業というわけではない。我が家からも歩いて行ける場所に立地しており、基本週末は休める。ただ接客業なので、クレーマーなどの対応に当たることも少なくない。時には新人を指導しなくてはいけない。繁忙期は朝9時から夜8時ぐらいまで仕事という日もある(仕方の無いことだが)。その時に腹がたつのはそんな時すら家で怠けている家族だ。息子達は自分たちのゲームや宿題に必死で、家の手伝いはそっちのけ。夫も夫でテレビ三昧。帰宅してから私は、洗濯・夕飯の支度・風呂掃除をこなさないといけないのだ。そんな時も彼らは呑気に

「母さん、夕飯はまだ?」

なんて言うから我慢ならない。せめて掃除くらい出来るでしょ?と夫に訴えても、俺だって忙しいんだ、と返される。はぁ、なんでこんな男を好きになっちゃったんだろう。こんな感じで、私の生活はブラック企業というのは大袈裟だろうか。


目が覚めたのは、マホロブラックがステージに再登場した時だった。

同時に他のマホロバンもステージ上に現れて、それぞれの自己紹介をした。よくその時も攻撃せずに待っていた、敵!と思いきや、部下の女の子が彼の手から必死に武器を奪おうとしていた。そして殴られた。そして名乗りも終わった頃、悪役は叫んだ。その時には彼の武器はどこにも見当たらなかった。恐らくステージ裏にでも飛ばしたのだろう。


「おい、宮滝!おおおおおおお前は正気か?ここここののののままだと我々まで爆死するぞ‼︎‼︎⁉︎」

「別にいいじゃないですか。どうせこの子達は死んでしまう…それもその搾取機で‼︎わたし達はこのような行為をして日々を過ごすなんて道徳的にどうにかしているレベルではありません。だったら、ここで彼らとともに死のうじゃないいですか!」


その台詞はさっき散々な目に遭った(本人談)次男を怖がらせた。私の服の裾を掴んで怯えている。対する兄は、元々現実的な一面があったからかそれを見て

「バーカ、これは本当に起きてることじゃねえから…。」なんて笑っている。


そんな二人の違いを感じながら、レッドがそのを破壊した時、弟の顔に安堵の表情が戻ったのを確認した。すると悪役の男は腹を立て、部下を殺そうとした。

マホロバン達は次々と彼に立ち向かっていき、攻撃を仕掛けたが、全員がやられて倒れてしまった。間も無く子供達は5人を応援し始める。地面をもがきながら、立ち上がろうと試みてまた伏せる演技は、まさにピンチを伝えた。

上司がステージの裏の方に行くと、先程まで彼らに手のひらを向けていた部下の少女が子供達に応援を促した。どうも彼女がマホロバンを助けるのに協力が必要らしい。もちろん子供達は精一杯応援した。最後の方はあまりの大声に思わず耳を塞がないといけないくらいだった。てかこんな大声で叫んだら喉痛めるだろ。予想通り、マホロバン達は復活。そして決着。


ここで面白かったのは、マホロバンのカウンター攻撃だ。敵の電気か何かの光線をスマホを振り回して返したのだ。これまでスマホで攻撃していたのはずっと見てきたが、このようなのは初めてだったので瞬きをしたことを後で悔やんだ。大ダメージを食らった彼は愚痴を漏らし、更にはさっき応援を促した下っ端に煽られた。精神的にも参った彼は彼女に許しを乞うものの、彼女はツンとそっぽを向いて無視した。それを見てマホロバンは必殺技を放ち、その上司を倒した。

「ったく…俺の人生はなんだったんだよ。青春では良い大学に入るため、仕事では良い業績を得るため、遊びも家族も犠牲にして…。」

と哀しいぼやきを言い放ち、ステージ裏にふらついた足で戻った。ここでお馴染みの爆発音がなるんだろうと予想していたが、実際はエレベーターのアナウンスのような声が聞こえ、途切れただけだったのが少し残念な印象を残した。


マホロバンはさっきの少女を自分たちの仲間に誘ってハッピーエンドだった。そして体ほぐし代わりのダンスタイム。

そこでの彼女の台詞は私の生活を少し変えたのは別の話だが、

「私、誰かに助けてもらうのは恥だとずっと思ってたの。」は、これまで困っていても「手伝って」と家族に言えなかった私を勇気付けた。


その日、夫に風呂掃除を頼んだら快く許可してくれた。



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