森を訪れた少女を待ち受ける残酷な運命を、彼女の命を奪おうとする魔女の視点から描く短編。
的確な言葉と行動で少女を嬲るように選択肢を奪っていく深層の魔女が実に邪悪で良いキャラをしており、少女を追い詰める様子はどこか官能的な雰囲気も感じられる。
元々は同一タイトルで作品を描こうという企画の中の一作であり、同じタイトルの作品でも作品ごとにさまざまな魔女のキャラクターが登場したり、「毒を飲む」という言葉にいろいろな意味を持たせたりしているのだが、ここまで悪役に振り切った魔女も珍しければ、ストレートに毒薬を飲むというのも珍しい。少女を殺そうとしていたはずの魔女がなぜ毒を飲むかというのは読んでみてのお楽しみ。ラストで軽い捻りも加わっており、すっきり読める短編である。
本作が気に入った方は同タイトルの作品たちも読んで、同じタイトルでありながら各作者の調理の仕方を読み比べてみるのも楽しいかもしれない。
(「悪い人たちの物語」4選/文=柿崎 憲)