真昼の限界と深夜の無限〜Infinite garden of mind.

ふぁーぷる

第1話 まあ変なおっさんだろね。

 在宅テレワークも三年目。

 今日はひと月に一回のテレワークで処理出来ない書類処理で事務所に行く日だ。

 出勤の朝の準備のリズムがぎこちないのと感染予防装備の準備が余計に掛かるの

 を予期していつもより30分早く起きて準備する。


 目覚まし代わりの朝のニュース番組の音声から情報を耳で採取しつつ自分を叱咤

 しったしながら指先呼称しながら準備している。


 指先呼称って開発系会社の僕には全く馴染み無く、電車のホームで職員の方の動作

 をちゃんとやってるな〜って眺めるだけだったけど、安全という言葉に重きを

 置く会社に出向してその中で安全意識が高まると自分で行う事も自分自身のミス

 を無くす術として普通に行う様になった。

 安全を話の上だけで語るだけの部類と行動にも取り入れる部類その差は大きい。


 僕も人間、動物。

 ミス、忘却沢山あるのは当然。

 その忘れ物とかの手戻りロスが非常に勿体無い。

 下手したら自分もしくは他人の命を奪う切っ掛けを引いてしまうかも知れない。

 気付くレベルは常に律して再発頻度を下げないとね。


 ニュースはPM3.5、ハイパー黄砂、コロナの感染状況が冒頭天気予報の様に

 流れる。

 通勤は気が進まないが今日は出社するしかないので細心の注意が必要だと思

 いながら準備を進める。

 その他のニュースでウイグル自治区での核実験。

 あの時以来の中国の慣例化したマスク外交の一環で視察団が成田空港に到着

 する事。

 等が坦々と読み上げられる。

 芸能のニュースに切り替わると少し笑みを浮かべて喋り始める。

 芸能はかっての日本の姿を思い出して望郷の思いに似た気持ちが湧き上がる。

 が全ては仕事ネタとして扱うキャスターには悪寒を覚える。


 社員カードよーし。

 ハンカチよーし。


 普段から何が起きるか分からないと考え、自分の記憶や正常行動も危うくなる事

 も予期して

 ショルダーポーチに財布、定期、マイナンバー、カード、印鑑全てを入れている。


 当然スキミング防止紙を表側には挟んでいる。

 これさえ腰に巻き付ければ大方の我が身が必要とする備品は一瞬で装備できる。

 外で無意識にこのポーチに戻す事も自分自身に習慣付けている。

 自分がポーチに定期を無意識に戻している事に自分の躾がよく出来ている事に

 びっくりする。


 極めて用心深い質たちだと子供の頃から親や親戚にはよく言われた。

 定年の方が近い年代でも依然としてその性質は変わらない。

 その所作を身内以外に知られると変に思われそうなので単に天然、滑稽な事を知

 らずにしている程ていを装いながら生きている。


 コロナウィルスで塗り替えられた環境の防御も思いつく限り当然実装する。

 実はコロナが起きる前から巷の人が行き当たりばったりで買いに走っている備品

 は普通に家に少しずつ備蓄していた。

 有事の際の備え常備品は整え続けた。


 守る事の一生懸命さを腰を引いて見ていた偽善者のあの態度や表情が世に毒霧が

 蔓延し有名人が亡くなるとマスクを買い求め奔走し始める。


 誰の意見を主軸に動くのか皆目だ、一体どこまで人目を気にする。

 これは平穏な日常の時こそ危機対応をしっかり行う様にスイス政府発行の危機管

 理の教科書を読んでいたお陰もあるだろう。


 知識は割増で頭に入れとく事がいつか役に立つ。

 神経質だとかネガティブだとか揶揄されたが自分は生きるに一生懸命なだけ、銃

 弾が飛び交う中で虚勢を張って口笛を吹きながら立って歩き回るなんて腹が立つ。


 一体誰に虚勢を見せる必要がある。

 生き物として生命第一で動かないといけない時はそれを優先すべき。

 娯楽や趣向が命に勝るのだろうか。

 何事も準備こそ大事、役に立とうが立つまいが出来る事はやる。

 そのプロセスをある意味楽しむ。


 マスクや携帯式塩素ガス発生カードや除菌アルコール、抗菌化シートと特に買い

 に行かずともほぼ自宅にある。


 洗顔もミューズで洗う。

 こりゃいかん。

 ミューズ洗顔はちょっとやめようと思う。

 顔が荒れて来た。

 使用上の注意は守らねばね。


 出かける準備にはそれらを身に付ける準備も朝の準備の時間に割増で入る。

 マスクには抗菌化スプレーで24時間抗菌化。

 衣類は全て抗菌化シートで拭き上げる。

 塩素ガスカードにマジックで記載した開封日付確認してまだガス発生期間内であ

 る事をチェックして首に掛けてシャツの中に隠す。

 免疫力向上のヨーグルトもヨーグルトメーカでR1を培養しているのをコップ一杯

 流し込む。

 ヨーグルト味は嫌いな方だけど生きる為の行いとして毎日の習慣とした。

 だから今も生存しているのかも。


 背負うリュックも抗菌のシャワーを浴びせる。


 一通り準備できると神棚に手を合わせて簡単な祝詞を上げていざ外へと向かう。

 物理の完備に精神的な霊性も具備する。


 玄関の靴箱の上に置いているプロポリス高含有の飴を一個口に放り込み玄関ドア

 を開け出発。


 <コロコロ>と舌で転がしながら駅まで歩くこと1分半。

 改札を通る時の定期のカードもセンサー部に接触させない様に非接触の距離を

 保つ。

 電車を待つのは列に並ばずに一番後ろ側でモラル低下人を観察してそれ等と違

 う車両に乗る。

 電車内は中程の窓が開けられる前に立つ。

 吊革は手の平で持つ。

 電車の開閉口エリアには絶対に立たない。

 マスクは移さない為の人としてのモラルの面があるが息を切らしてマスク通過の

 比率を各段に上げているのと交差する確率も高くなるので開閉エリアは立ち止ま

 り禁止領域。


 ここまでそうこう一人で推考したりして非常に頭の中は忙しい。

 けどロンリー。


 あの時以来、電車内とかで隣り合って喋くりして居るのは居なくなった。

 だから通勤はみんな一律にロンロリー。


 たま〜に僕と同じ様な格好の人を見掛ける。


 思い付く限りで手が届く防備を施して足早に毒霧を抜けて行く人。


 今、目の前にその類の人が歩いている。

 駅の中央改札ではなく少し離れた外れの改札を人の流れの隙間の壁際をゴキブリ

 のように

 <ソソソソッ>と歩く。

 僕と同じルート。


 が!

 改札を抜けて下り階段の途中でその同じ用心最上位男が手の平で眼鏡のズレを戻

 すのに急に立ち止まる。

 僕は距離を取っていた筈なのに思いっきりぶつかり絡み転がり落ちる。

 歩行も惰性があって急には止まらないんだね。

 ここまでやってて最終的には阿保やな〜。


 そこで意識が途切れた。

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