第3話 戦隊ヒロインと◯◯◯◯と

 リーダーは俺にドヤ顔を向けた。


 それは決して戦隊ヒロインがちびっこに見せてはいけない顔のような気もする。


 俺はちびっこじゃない。


 それに、仮の姿のときはそんな顔をしていた方がいいんだろうけど。


 で、そのドヤ顔の持ち主が言った。




「貴方が秘密を共有してくれる口の固い人かどうか、見極めるのよ!」


 なるほど。俺がバラしたらリーダーは相当困るらしいな。


 俺は高飛車な態度で言った。


「で、俺が口の軽い男だったら、どうするんだ?」

「そのときは、バラすわっ。バラされる前にねっ!」


「えっ?」

「必殺技『シュークリームアタック』で、生身の人間なんかイチコロよ!」


「えーっ」


 俺のことバラすって、どういう意味?


 物騒だよ。俺はなるべく低姿勢に言った。




「でっ、では。わたくしが口の固い男でしたら、いか、如何なさるのですか?」

「それなら安心ね。そのままってことにするわ!」


 良かった。俺さえ黙っていれば、リーダーが俺に危害を加えることはなさそうだ。


 リーダーはかわいいから、今日1日一緒っていうのは緊張するけど、仕方がない。


 早いところ俺の口の固さを証明しよう。なんせ俺、友達いないし。


 こんな美味しいネタでさえ、はなしたい相手がいないからな。


 頑張って、晴れて自由の身を手に入れよーっと。


 はぁ……。




 だがこのあと、俺たちに大きな敵が近付いてきた。


 その名は『お会計』だ。俺は10円しか持っていない。


 リーダーも28円しか持っていない。


 その事実が発覚したとき、俺たちは固まってしまった。




「おい、リーダー。シュークリームなんとかでお店の人を葬ったらどうだ?」

「それはいいアイデアね。早速お見舞いするわ」


「えっ、ちょっと待てよ。冗談だってば、冗談」


 どうやらリーダーは冗談の通じない性格のようだ。




 作戦を変更し、友達に助けを求めることになった。


 だが、俺には友達がいない。


 それをリーダーに伝えると、リーダーは俺のことをバカにしてきやがった。


 何だか腹が立つ。でも仕方がない。


 ここはリーダーの幼馴染とかいう子に甘えるとしよう。




 リーダーの幼馴染がまともな奴だったらいいのになっ!




 俺はそう思いながら、その子が助けに来るのを待った。


 俺から見て右側の窓の外に目をやった。


 どんな奴だかいち早く知るためだ。


 その代わりに、俺から見て左側の、店内への視界はほぼゼロだった。


 その死角からか細い声がした。


「もぉ、リーダーったら。急に呼び出さないでよっ!」

「めんごめんご! 菜花なら授業中でも抜け出せると思って……。」


「まぁ。たしかに私、目立たないから授業中に消えることもしばしばだけど」


 あれ? リーダーのやつ、誰と話してるんだ。


 俺は気になって視線を声の方へ向けた。


 そこには、地味な女子がいた。佐倉菜花。俺たちの同級生、らしい。


 こんな子がクラスにいたかどうかさえ俺には思い出せない。


 それくらい地味。とにかく地味。何を隠そう地味な子。隠せないほどに地味だ。




 大きめの黒縁メガネ。


 ボリュームはあるのにおさげにしているところ。


 スカートの丈も校則通りの長め。


 全く隙のない地味さだ。


 顔の作りは悪くなさそうだし、スタイルだってよさげ。


 だけど地味。兎に角目立たない。




 そんな菜花を交えて、俺たち3人は、仲良くお喋りをした。

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