Enemy2

2-1 私の名前はトルイド

《破損部の修復を感知しました。システムを再起動します。》

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《システムの再起動に成功しました。》


ゆっくりとまぶたを開ける。そこには見馴れた天井があった。起き上がると、疲れて座ったまま、寝てしまっているノートル博士がいた。前髪を移動させ、彼女の寝顔を確認すると安心してきた。


「良かった。本当に…」


彼女が目を開け、こちらを見る。

「良かった。治ったんだね。このまま、再起動しなかったら、スクラップ送りにするところだったよ。」 

涙目になりながらも、冗談を加える博士。


一瞬、子供口調になった気がするが気のせいか?

「心配かけてしまい、すみません。スクラップは嫌ですね。」

笑顔を作ってみせると、安心したのかゆっくりと息を吐く。


「いいんだよ。治せたんだから。それより調子の悪いところはないかい?」


「いいえ、大丈夫ですよ。少し体が軽くなった気はしますが。」


「そうだろう。君が倒したロボットの頭部に埋め込まれていた。マイクロチップからデータを取り出し、いらないところを削除して、君の頭に入れてみたのだが、どんな感じだ?」

パソコンを確認しながら、自慢げに質問してきた。


「異常は特にありませんね。」


「そうか、うまくいったようでなによりだ。」

うんうんと頷き、なにかを思い出したような顔をした。

「奴らとの戦いで感じた事を教えてもらえないだろうか?これからの対策のために。」


「了解です。劣勢でしたがなんとか勝てたというレベルですね。私個人のアップデートが必要そうです。このままの状態では、次、敵が来た場合負けてしまうでしょうから。」

確かにあのとき、私は負けるはずだった。しかし、博士を護らなければならないと思ったあの瞬間、私になにかが起こったのだろうか…?よくわからないので、今は言わないでおこう。


「なるほどな、これからの課題が明確になったな…?ん?私はお前に名前をつけたか?つけていたならすまないが、忘れてしまった。」

あごに手を付け頭を何度も左右に傾けていたが、わからないという顔でこちらを見た。


「確かに、名前はありませんでしたね。」

おかしな話だが、あのときは私が完成したことがうれしくテンションが上がりすぎてよくわからなかったのだろう。


「名前は何にする?なにかあるなら好きなように決めていいぞ。ないなら私が決める事になるが?」


「お願いします。博士が名前をつけてくれると、とても嬉しいです!!」

私は子供のようにウキウキしてしまった。


「それなら………」

「うーん…」

なかなか出てこないようだ。

「……トルイド。よしお前の名前はトルイドにしよう。」


「ありがとうございます。トルイドですね。博士から頂いこの名前をずーっと使い続けます。」

とても、テンションが高くなり、トルイドと連呼し続けて5分程経過した。598回目のドルイドの余韻に浸っていると、博士が困った顔でこちらを見ているのに気が付いた。


「どうしたんですか?博士、顔が暗いですよ。」


博士は、戸惑った顔をしたが笑顔を作り

「いや、そこまで喜んで貰えるなんてと驚いていたところだよ。」


「ほんとに嬉しいですよ。」


すると、再び困った顔になり謝罪をし始めた。

「今まで名前をつけなくて申し訳なかったな。」


「いいんですよ。博士も忙しかったんですから。」


必死な顔で

「そんなわけには…」


「そんなに謝りたいのなら、もっと名前で読んでくださいよ。」

ダメもとで少しわがままを言ってみた。


「いいだろう。これからはお前ではなくトルイドと呼ぶ事にするよ。」

博士は笑顔をつくってみせた。その後、不思議そうな顔をした。

「にしてもロボットであるはずのトルイドが喜んだり、わがままを言ったりするとはさすがの私でも予想していなかったよ。」


確かにそうだ。私は、ロボットのはずなのになぜこんなに、感情が豊かなんだ。すごい!!やっぱり博士は天才なんだ。


「そろそろ、研究室に戻って。ロボットでも回収しながら、トルイドのアップデートでもするか。」


「了解です!!」

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