第5話 誹謗1②

暑い夏の日。


ノースリーブと短パンで、寝ころびながらスマホを触っていた私の横を通りすぎていくときに、お兄ちゃんは私に聞こえるか聞こえないかの音量で、「うっわ、デッブ」と言ってきた。


険悪な感じになりたくなかった私は、あはは、と必死で笑みを繕って反応した。もちろん、嫌だったが私が我慢すればいいのだろうと最初は思った。


だが、日を重ねるにつれて、お兄ちゃんは私の顔を見れば「あ、デブ」と言うようになった。


それを耳にしたお母さんは、お兄ちゃんを注意した。酷いときには怒った。そして、お母さんは私をなだめてくれた。


「あなたは育ちざかりなの。だから全然太っていないわ。たくさん食べないと」


私にとって、その言葉はとても嬉しいものだった。でも、そう誹謗されてから同じクラスの女の子と比べるようになった私は、お兄ちゃんの言う通り、自分は太っているのだと思うようになった。


怖い怖いお父さんに怒られても、お兄ちゃんはやめなかった。


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