第6話 悪人矯正・・・
次の日、街を出て三人で獣人の村に向かった。村の名前はラトト村というそうだ。
獣人の村って自給自足だけど、街でしか手に入らない様な物は人の振りして街で買うんだって。
街に近いので浄化の成されている地にいるから、食べ物を育てたり、狩をしたりする事自体は困らない。
ギルドで登録して、普通に商品を卸したりして、人として出入りをしているそうなのだ。
ハンターの普段の姿を見ても、耳と尾が出ていなければ人と外見は変わらないからそうやり方の方が危険が無くてよいのだろう。
私も街でラトト村で泊めてもらう手土産に、色んな物を買った。
「ココ、そんなに沢山菓子を買うのか?」
「だって、甘い物はあまり手に入らないっていうし、それに私、この『ほとぎ』っていうほんのり甘いお菓子大好きなんだよねー。村の子供達にも食べさせてあげたいよ」
「なるほどなあ、でも、それなら黒糖の塊を買って行った方が、いいんじゃないか?」
「ああ、なるほど、それもいいね。黒糖も買って行く。塩も買おう」
そんな風に結構買い物していたのが目についたみたいで、柄の悪い奴らが後をついて来ている。
荷を奪うつもりだろう。セコイ奴らだなあ。
見た目が、子供と、スラリとしたお兄さんの二人連れなもんだから、弱そうに見えるんだろうけど・・・。
大荷物を全部リュックにその場で入れるわけにもいかないので、少し道を行った先で入れようと思い、ハンターにたくさん担がせたのも悪かったかもしれない。
でもよく考えてみてよ、こんな大荷物軽々もっているお兄さんだよ。
「クソどもがついて来たな」
「うん、もうちょっと先に行って人通りが無くなってから始末しようか」
「そうだな」
悪い相談を二人で囁いて、フフフ、ヘヘヘと笑う。どっちが悪人だか分からないって?
そして、少し先に進み、おもむろに荷物を地べたに下した。
「「さてと」」
後ろからついて来てる頭わるそうな連中は、ニヤニヤしながら笑っている。そんなに悪い事する事がうれしいんかい?
「よおよお、いっぱい買い物してたなあ」
「お金持ちじゃんか、重そうだし、俺達が持ってやるよ」
「ついでに財布も持ってやろう。さぞかし重いんだろう?」
「子供の方が可愛い顔してるし、売り飛ばしてやるか?ひひひ」
四人ほどいる。
やっぱり、かわいい子供は売りとばす一択らしい。
世の中の為にならない奴らはお仕置きが必要だ。
「ねえ、ハンター。ちょっとこいつらで実験してみてもいい?」
「実験?なんだそれ」
「悪い人でも良い人になれるかどうかの実験」
「あはは、何言ってんだよ、そんな事出来れば、世の中に悪い奴はいなくなるって」
「うん。実験だよ?まあ、相手にもよるけどね」
私はポケットから例の種をこっそり取り出して道に落とした。
黒い小さい種は、蚤の様に跳ねて男達の方に跳んで行く。誰も気付いていない。
「ひゃっ」
「あひっ」
「うっ」
「ぐげっ」
それぞれが、変な声をだして身体を折り曲げた。
「ん?どうしたんだアイツら・・・」
「にゃーん?」
「「「「ゲギャー!!!」」」」
男達は身もだえしている。絵的にムリ!キタナイ。
鼻の穴や口から男達の体内に種が入って行ったのだ。
「なんだあ?アレ」
男たちはあちこち身体から蔓を生やして苦しんでる。
「悪人矯正ギブス」
「はあ?」
「人喰い蔓、『緑の姫巫女』クラスチェンジバージョンだよ」
「なに、意味わからん事言ってんだ?」
「あれは、『緑の姫巫女』の浄化の魔力でパワーアップした種なのよ。主に心が澱んだ奴を攻撃する特殊な攻撃性を持っている」
「はあ」
「悪い事考えなくなったら身体の中で静まってくれるけど、心が澱んでるうちは、ああやって俺は悪い人ですっていう目印になるわけ」
「バカだろ」
「画期的って言ってくれないかな?」
「カッキテキ?」
「棒読みじゃん。今度から、こうやって悪い人には『緑の布教』をしていこうと思ってる」
「なんだそれ」
「あれは、いわゆる聖なる力だから、神殿に行ってお金を積んで浄化をかければ、もっと症状が進むんだよ。つまり、特効薬は『改心』するしかないワケ」
「スゲー。画期的の意味が分かった」
「そうでしょ、そうでしょ。これからは、静から動へと、攻撃性を持って行動する事に決めたんだよ」
「こえーな、オイ」
男達が転がっている場所に歩いて近づき、説教を始める事にした。
「ちょっと聞いてたかな?君たち」
地面で転び回って苦しんでいる蔓まみれの男達に声をかけたが、パニくって話にならない。
少し魔力を抑えてやると、蔓が縮んだ。だが消えたわけではない。
男達はやっとゼーハー息をついて、脅威の目で私達を見ている。
「・・・という事で、つまり、悪い事を考えて、今みたい他人の物を奪おうなんて思ったら、身体中に蔓がはびこって死ぬよ。死にたくなかったら、善行をしなきゃダメなわけ、ゼンコーってさ、人の為になる事なんだよ。わかる?」
壊れた玩具みたいに、首をガクガク振って男達はズルズルと後ずさっている。
そして、這いずりながらもと来た道を逃げて行った。
「もしかしたら、良い人になるかもしんないな」
「まあ、それを祈るよ」
邪魔な奴らが居なくなったので、ハンターに持って貰っていた荷物をリュックに移し替え、身軽になって、獣人の住むラトト村を目指した。
途中、薬草採取にも余念のない私であった。
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