第10話 幸せ度が上がる旅

「次にある村はとても小さい村なんだが、知り合いがいるんで泊めて貰うつもりでいる。ココも泊めてもらえないか頼んでやるよ」


「ハンターありがとう。あ、もしダメでもテント持っているから大丈夫だよ」


「テント?そんなの持って歩いてるのか?どうやって???」


 大きな荷物を持っていない私をハンターは不思議そうに見た。


「前に、枯れたエルフの村を浄化をしたら、長老が何でも入れられて、しかも重くならないリュックをくれたの」


「そりゃまた凄いもの貰ったな・・・王族ですらそんなの持ってないと思うぞ。多分、それエルフの宝だと思う」


「うん、ものすごく大切な物をくれたんだね。このローブもそうだよ」


「そうか、長老はお前の正体に気付いていたのかも知れんな」


「それはどうだかわかんないけど・・・。でも、あの村のエルフ達が次に襲われたりしたらと思うとぞっとする。絶対黒いやつらをなんとかしなきゃ」


「そうだな」


「にゃーん」


 懐の中でシオウが応援しているように聞こえた。


「ハンターは精霊っていると思う?」


 『精霊』の話をハンターにはしているので、聞いてみた。


「うーん、ココがいう『白い精霊』が一般に言われている精霊かどうかはわかんないな。でも、お前を助けてくれたっていう『白い精霊』はいると思うぞ。そうでなければお前は元の世界に帰れなかっただろう。お前がいると思ってるんなら、間違いなくいるさ」


「うん。ありがとう。そうだよね」


「だが、お前を違う世界に戻す力を持っていたとして、その力を使ったのなら、それはそいつにとって物凄く大変な事だったと思う。本当にお前を大事に思っていたのは間違いない」


「え”?どゆこと?」


「まあ俺には、召喚術だとかの力はないが、大量の魔力を使うはずだ。お前が召喚された時にどんな状態だったか知らないが、何人もの魔術師を使い潰した筈だ」


 そういわれて思い出す。召喚された時は、神殿みたいな大広間の六芒星の描かれた床の上だった。


 確かに、床にローブを着た人が何人も倒れていて引きずられて退場していたっけ・・・。


 その後、大変な目にあったので、そんな事は忘れていた。


 そうか、そりゃそうだ。それ程に負荷がかかる術を使って白い精霊さんは私を元の世界に帰してくれたんだ。


 七年ずうっと陰から支えてくれた。突然の別れだった。


「じゃあ、もしかしてあの時消えちゃったのかな・・・?」


 ぶわっと涙が溢れてきた。


「あっ、待て待て、そんな事言ってないだろ!泣くなよ、あーあ、鼻でてんぞ」


 ハンターが首に掛けていた汚いタオルで私の顔を拭こうとしたので、ガシッと腕を掴んで止めた。


「自分ので拭く」


「あっそ」


「にゃーん、にゃおーん」


「うん、ごめんねシオウ。もう大丈夫。よく考えてみたら、精霊さんは絶対どこかにいる気がするから、いると思う」


 私の立ち直りは早かった。


 しばらく行くと川があった。


「ハンターお昼にしよう。魚を釣るよ」


「そうだな昼にするか。あとは夕方まで歩けば村に着くだろう」


「うん、じゃあ魚釣るから、その辺りに石で竈を作って火を熾してくれる?直ぐに釣れるから串にする棒きれもいるよ」


「なんなんだ、人使いの荒いやつめ、わかったよ」


 笑いながらそんな事を言いながら直ぐにハンターは動き始める。慣れてるなあ、よし私も釣るぞ。


 オサーンの釣り竿でアッと言う間に15匹釣る。


「なんだーまた反則技つかってるなー」


 呆れたハンターの声がする。

 


 魚を締めるには、目と目の間位をナイフで刺してキュッと左右に捩じるか、ナイフの柄でコンと殴ると良い。


 塩を振って洗い、魚のヌメリを取る。


 街で買って使っている細見のフィレナイフを使って捌く。


 まずは魚の下あごを切り離し、腹を割いて内臓を抜く。そして血を洗い流す。


 採っておいた大きな葉を皿代わりにした。


 すると、ハンターが上手に魚に串を打ってくれた。後は魚を焼く前に、塩を振れば良い。


 オサーンに習って、その後何度もやったから魚を捌くのも上手く出来る様になった。


 

 ハンターは流石にこういう事には慣れていて、石積みの竈を良い感じに作ってくれていた。


 灌木を拾って魔力で火を熾し、炭と灰も良い感じに作られていた。


 魚を地面に刺して焼く場所も作られている。


「うわあ、上手だねえ」


「まあな。しかし、ココも魚の処理に慣れてるな」


「教えて貰ったんだよ。何度も繰り返して覚えた。いい炭が残ったら冷まして持って行こうかな。次が楽だし買わなくてもいいや」


「なかなか生活力があるなあ、感心するわ」


 それから三人で焼き立てでホクホクの魚を食べた。


 シオウの食べっぷりは気持ちが良くなるほどだった。バリバリむしゃむしゃ頭から美味しそうに食べている。


「骨とか大丈夫かな?」


「獣の姿なんだから、小さくても顎の力もすごいんだよ。ははは、よく食うな」


 リュックの中に買って入れておいた握り飯なんかも出して三人楽しむ。金物屋でかったポットで湯を沸かし、茶葉を直接入れて、お茶も飲んだ。


 もちろん、茶葉も自分のお手製だ。自給自足、コレ、素晴らしい。


「大勢で食べるとうめーっ!」


「うん、美味しかったあ」


「にゃおーん」


 幸せ度が上がりまくった所で、30分程休憩し、次の村へと歩いた。








 


 


 


 


 




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