第8話 獣人との出会い

 滅ぼされたドワーフの村を浄化したあと、大急ぎで踵をかえした。


 はっはっは・・・。巫女姫の力をこれでもかと使いまくった。


 そして、急いで村を出た。カッコ悪いぞ私。


 まあ、鉢合わせしなくてすんだから良かった。


 街の入り口まで戻り、そのまま中に入らず側道を通って次の分岐点まで行き、それから次の目的地を目指した。


 そりゃあ街の中を突っ切って行った方が早いけど、それだと誰かが見ていて覚えているかもしれない。


 今の私の姿が変わっている事をあの三人が知っているのかどうかは分からないけど、用心に越したことはない。


 それに次に行く目的地は遠い。ギルドで仕入れた地図を見ながら、近隣の街や村の情報を思い出す。


 ギルドがあるような大きい街に行く途中には小さい村が点在する。


 金物屋のおばあちゃんが、どの村も薬が不足しているので、小さい村に行くときは薬が卸せるようなら、卸してやって欲しいと言っていた。だからそのつもりだ。


 小さい村で宿屋がなくても、今はテントを手に入れたから宿が無くても休む事が出来る。そういうのはとても楽しみだ。


 釣りだってオサーンの釣り竿で、もっといろんな所で沢山魚を釣りたい。


 わざわざ回り道して、人気のない街道を行く者も少ない。そういう道は山賊も少ないから、のんびりとシオウと二人で田舎道をフラフラ寄り道しながら歩く。


「あ、チドメール草だ。これ傷薬に混ぜると効果てきめんなんだよね。むっ!こっちは殺菌効果の高いシルシノ草」


「にゃーん」


「ん?あ、それはサンキアの実だね。胃の粘膜を整えるんだよ。二日酔いにも効く」


 タダの素材がたくさん落ちてる。探しっこするのも楽しい。


 すると、少し遠くから足音が聞こえた。サクサクとかなり早いペースだ。


 私達がやってきた方角から来るようだ。足音は一つ。もしもの事を考えて、二人で道からそれた雑木の中に入り通り過ぎるのを待つ事にした。


 足音はそのままサクサクと聞こえ通り過ぎるかに思えたのだが、急に立ち止まった。


「ん、誰かいるのか?何で隠れてるんだ?」


 知らない男の人の声だった。こちらが隠れているのに気付いている。仕方ないので道に出た。


「なんだ、子供がどうして山の中に・・・えっ!?どうして・・・」


 若い男だった。見た目がもう冒険者だ。わりと簡易的なレザー・アーマーを身に着けていて、リュックを担いでいるが軽装だった。胸当て、肘宛てといった感じだ。


 スラリとした体形で、やわらかそうな亜麻色の髪を後ろで一つに括っている。頭にターバンみたいなのを巻いていた。


 その男があまりに驚いているので、こっちが驚いた。


 私を見て驚いているのじゃなくて、シオウを見て驚いているのだ。


 シオウはじっと見られているので、尻尾をピンと立てて毛を逆立てた。


「シャーッ」


「うおっ、怒るなよ。どうしてこんな所に居るんだ!?」


「えっ、お兄さん、シオウの知り合い?」


 私はこの展開に驚いた。まさかシオウの知り合いに出会うとは思っていなかった。


「いや、知り合いじゃなくて・・・」


 棒立ちになって困っているようだ?なんだろう。


「いや、だって、獣人じゃないか。お前分かって連れているんだろ?しかも、その種族は、この間消された種族だ」


「ええっ?どゆこと、ちょっと詳しくおしえてよ!」


 お兄さんは服を掴んで揺すられて驚いている。このお兄さん背が高いし、よく見ると物凄く綺麗な目をしている。


 濃いオレンジ色と黄色の半々のグラデーションの瞳だ。


「あ”・・・?」


 なんか既視感が・・・。


「俺、冒険者やってるけど、獣人なんだ」


 そう言って、お兄さんはターバンの様に頭に巻いていた布を外す。そこには立派な耳が付いていた。


「あ”?」


 ええっ、それでシオウは獣人なの?初めて知った・・・。いやいや、別に獣人だから何って感じだけど。


 そう、消された種族って言った!


 じーっと、お兄さんの耳をガン見した。髪色と同じ毛色で、中から柔らかそうなちょっと白っぽい中毛?が出ていてピコピコ小さく動いている。触りたい。


「なあ、と言うことで、俺はハンター。宜しく」


 手を出されて。思わずにぎにぎしてみた。肉球はなく普通の人の手だ。


「私はココ。こっちはシオウ。一応冒険者登録はしてるから、冒険者かな」


 この獣人のお兄さんには聞きたい事がたくさんあった。

 


 

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