第5話 その地へ

 シオウがとても怯えていて、落ち着く迄ゆっくりして、それから買った食べ物を二人で分けて食べた。


 二人っていうのはおかしいだろうけど、シオウは大切な家族なので私と同じってこと。


 肉団子がとても美味しかった。ゆで卵もおにぎりも美味しかったし、全部半分こだ。シオウもしっかり食べた。最近食欲旺盛で嬉しい。ちょっと身体も大きくなったと思う。


「全部美味しかったね。また買ってたべようね。でもしっかり噛んで食べないとダメだよ」


「にゃーん」


 ぺろぺろと手を舐めて顔を洗う仕草が悶絶級に可愛い。


 良かった。元気が出て。


「そうだ、テントのいいのを売ってないか探してみようか?」


 シオウと二人でテント暮らしというのも憧れる。やってみたい。


「にゃーん」


 それで、その後はいろいろと店を見て歩いた。でもテント結構高いな。


 大きさにもよるけど、二人用は最低でも100.000ルビ位からだ。上は幾らでも高いのがある。


 これには魔物除けの魔法付与がされているからだ。付与が多い程高くなる。


「ああ、あんた。さっきの!」


 来た時に話をした金物屋のおばあちゃんの店の前を通ると、おばあちゃんに声をかけられた。


「おばあちゃん、こんにちは、さっきはありがとね」


「あんた、さっきの薬まだ持ってるかい?」


「ん?傷薬の事?」


「そうだよ、あれ、よく効く薬だね。びっくりしたよ」


「そう、良かった」


「あれ、まだ持っているなら、売ってくれないかい?あんないい薬この辺にはないんだよ」


「傷薬なら、まだ沢山もってるから、売ってあげられるよ。どのくらいいる?」


「さっきの包、10包位あるかい?」


「あるよ」


「じゃあ、それをあんたのいい値でいいから売っておくれ」


「うん、じゃあ10000ルビでもいい?」


「そんなに安くていいのかい?」


「いいよ」


「ありがたいねえ。ちょっとまっとくれよ」


 薬は一包1000ルビの価格だ。1000ルビっていうと、1000円位だと思ってもらえばいいかな。


 たかが傷薬と言えど、手に入らない物は高い。だいたい1500~2000ルビ位でギルドなどでは取引されるから、売値としてはとても安い方だろう。


 だけど、値崩れを起こしたり、トラブルの元になっても困るので、この辺りが落としどころだ。なんせ、材料費タダだし。見つかりにくい薬草でも手に入る。




 宿屋は食事なしの素泊まりで、2000~5000ルビ位かな。私はだいたい2000ルビ位の部屋をいつも選ぶ。


 おばあちゃんは、店の中からお金をとってきて、私に一つの包を渡してくれた。


 これは、あたしが作った草餅なんだよ。よかったら食べとくれ。


「ありがとう、おばあちゃん。あとさ、テントが買いたいんだけど、どこで買ったらいいかな?」


「そうだねえ、ギルドの近くにある古道具屋の並びに行ってごらん。普通に買うとテントはかなり高いはずだから、新しいのじゃなくて、古道具屋が良いと思うね。冒険者が新しいのを買う時に使っていた道具を古道具屋に持って行って金にする事が多いはずだから、そこで買うと安く手に入るんじゃないかね」


「なるほど~。ありがとう、おばあちゃん。行ってみるよ」


「そうしてごらん」


 ギルドの近くに古道具屋が何軒か並んでいる。とりあえず一軒一軒みてまわる。


 おばあちゃんのいう通り、中古のテントは半額以下で売られていた。これはありがたい。


「すいません、二人用のテントで使いやすい程ほどの物を探してるんだけど、いいのないかな?」


 こじんまりした店だけど、中が整理整頓されていて、綺麗な店を選んだ。


 他の店はわりと、ごちゃごちゃしていて、何がどこにあるのか分からない様子だった。


「んーテントか、そうだな、これなんかわりと新しいし、雨はじきの付与もされてるからいいとおもうぞ。ちょっと値は張るがな」


 中から出てきたのは30代位にみえるおじさんだった。おじさんというにはちょっと若いかな。


 出してくれたのは、見た目もそんなに古くない茶色のテントだった。生地もしっかりしている。


「お兄さん、これは幾らするの?」


 一応気をつかってお兄さんと呼んでみた。


「70.000ルビだが、子供相手だし、ちょっと安くしてやるぞ。そうだな60.000ルビでどうだ?骨組みは金属で、腐食防止の付与がされている」


 お兄さんで大丈夫だったようだ。


 あちこち見て回った中では一番気に入ったし、値段も手ごろだ。新品で買えばそうとうするはずだ。


「じゃあ、これにするよ」


「ほう、坊主は金持ちだな」


「金持ちじゃないけど、無駄遣いはしないんだ。でも必要な物は買うよ」


「そうか、しっかりしてんなあ」


「そうかなあ?」


「でも、これ持って歩けねえんじゃないか?重いぞ」


「大丈夫。リュックに入れるから」


 お兄さんが並べてくれたテントの部品を、背から降ろしたリュックに入れた。


 長いテントの巻きや、金属の棒がスルスルとリュックに入って行くのをお兄さんは驚いて見ている。


「坊主はスゲーもん持ってるな。只者じゃなさそうだ」


 かなり呆れた顔をして見ている。


「貰ったんだよ。こんなすごいもの買うお金持ってないし」


「いいや、売ってねえよ、こんなもん。大っぴらに見せたら盗まれるぞ」


「うん。他所では見せないようにするよ。それに盗まれないように魔法がかけてあるんだ。大丈夫」


「へーっ。すげーな」


 うん、絶対とは言えないけど、このお兄さんは、悪い人ではなさそうだ。悪い人間ならば、私からこのリュックを盗もうと算段する位だろうけど、そんな悪い気も感じない。


 感は良い方だと思ってる。


「ところでさ、ちょっと聞くんだけど、ドワーフの滅ぼされた村って、あの街道の二つ目の川からどの方向になるの?」


「えっ、お前何しに行くつもりだ?」


 お兄さんは目をみはった。


「別に何もしないよ、村のあった場所を見ておきたいだけ」


「物好きだな、いくら30年経っていようが、気持ちの良いもんじゃないぞ」


「うん、でもね、どうしても行かなきゃいけないと思うんだ」


「・・・そうか。まあ、他人の事情には首は突っ込めねえしな。二番目の川にそって三キロ位上流に行くと、朽ちかけた橋がかかってる。それを渡ると二キロ位先に跡地があるらしいぞ」


「うんわかった。ありがとう」


 古道具屋おお兄さんにお礼をいって、店を出た。


 そう、引き返してドワーフの村のあった場所に行くつもりだ。


 


 

 


 


 


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