猫と探偵

赤柴 一

第1話 暑い職員室

暑い暑い夏の日、既に夏休みは始まりこの学校も普段と違い静かだった。

窓の外で風に揺れる木々を見つめ、ぼんやりとしていると、一人の男子生徒が話しかけてきていた。


「先生。熱中症にでもなりましたか?」


「あぁすまない。別に体調は悪くない。それで、私に何か用か?」


私としたことが、生徒が戸を叩く音も、失礼しますの声も聞こえないほどに気が緩んでいるとは。


「進路希望調査、随分遅れましたが提出しに来たんですよ。にしても、これ出すためだけなのに制服に着替えなきゃとか、めんどくさいですよね」


「期日までに提出しなかったのだから自業自得だ」


「それはわかってますよ。そうだ、先生さっき何考えてたんです?」


生徒の質問を聞きながら、受け取った紙を確認する。

そこに書かれた懐かしい職業に親友を思い出した。


「少し昔を思い出してだけだ」


あれはまだ夏がここまで暑くなかった頃の話。

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