第21話
「……リーススの元へ連れていって」、ナイフを向けたまま告げる。おじさんはそろりと壁から背を離し、歩き出した。
「あなた達も行くのよ」
二人の大男はおじさんの前を歩かせる。あたしはおじさんの背中にナイフを向け続けた。しばらく歩くと、崖が崩れてできた洞穴が見えた。中は影になっていてよく見えないが、おじさんは「あそこにいる」と洞穴を指さした。
「入って」、大きな背中を押す。
大男、おじさんに続いて中に入る。しかし、そこにはなにもなかった。
「騙したの? リーススは?」
出来上がったのは狭く薄暗い中に、敵が三人という劣勢だ。二人の男が、こちらに詰め寄る。あたしはがむしゃらにナイフを振った。手応えがある。おじさんが「あいたたた」と声を出す。彼の背中がすっぱり切れているのが見えたが、あたしは男二人に取り押さえられていた。
「なんてね。これくらいの傷、大金が手に入ると思えば、痛くも痒くもないよ」
こちらを振り返り、おじさんは両手を広げた。
「リーススは? 人質にするんじゃなかったの?」
「リーススは見つからなかったよ。崖から足を滑らせたか、腹を空かせて行き倒れているか……。どちらにせよ、人質になるのは君だよ、レーニス。あれを出せ」
おじさんの指示に従い、一人がリュックを下ろし、中から黒い塊を取り出した。
「爆弾……?」
「君たちを殺すにあたって、こちらも万全に備えたんだ。これで土砂崩れを起こし、君たちはその時に巻き込まれて死んだと言えば、信憑性もあがるだろう? 念のために持ってきたものだが、やはり備えはしておくものだな。あのバケモノを銃で撃ち殺そうと思ったら、かなり骨が折れそうだ。見たろ? 銃弾一発当たったくらいじゃ、びくともせん」
「これでコルロルを殺すつもり? 爆弾なんて無意味よ。やつは飛べるもの」
「だからこその人質だろう? 爆弾を仕掛けるにあたって、なにが大事か分かるか? 確実に対象が通る道に仕掛けることだ。つまり、やつの行動を制限する必要がある。なにせやつは空を自由に羽ばたける。あの怪物と君たちを、このアルスト山で再び見つけること。それが一番の難題だった。たしかに君の言う通り、やつを見つけられなければ、爆弾を用意したところで意味がない」
おじさんはあたしに布を噛ませ、声を封じた。そして言った。
「助かったよ、あの男が協力してくれて」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます