第9話 荒らされたビニールハウス
「一直線に?動物じゃないの?
気にしすぎだって、父さん。」
「いや~、でもな…、」
「あ~、さぶい…、私お風呂入ってくる。
じゃあね、睦月。」
弥生の無神経さに、俺と弥生のお父さんは苦笑した…。
「おじさん、ビニールハウス見せてもらって
もいいですか?」
「ああ、別にいいぞ。ただ、気をつけてけよ。
ほれ、懐中電灯持ってけ。」
「ありがとうございます。」
俺は懐中電灯を受け取り、ビニールハウスへと向かった。
(にしても、一直線ってどんな感じ何だ…?)
おじさんの言う、"一直線"という言葉がどうしても気になった。
弥生の言う通り動物の仕業とも思ったが、今は真冬だ。動物は冬眠しているし、それに動物なら"荒らす"はずだ。通り過ぎるなんてことは考えにくい…。
(お、見えて来たな…。)
頭の中で推理しながら歩いていると、問題のビニールハウスが見えて来た。
近寄って、懐中電灯を当ててみると、
(何だ、これは…。)
弥生の家のビニールハウスは全部で5棟あり、連続して建てられている。そのうち、左から数えた3棟目の右半分と4棟目の左半分が、まるで突貫工事をしたかのようにきれいに"消えて""失くなっていた"。
「おじさんの言う通りだ。本当に一直線に"何か"が通り過ぎたみたいな跡だな。」
さらによく見てみようとビニールハウスの中に入ると、
「なんだ、この臭いは…。」
まるで、生ゴミを腐らせたような異臭が漂っていた。
俺は反射的に鼻を手で隠し、一旦ビニールハウスの外に出る。
息を整えてから落ち着いて中を見てみると、"何か"が通り過ぎた部分の作物がすべて熟れて腐っていた。
「臭いの原因はこのせいか…。」
俺はこの状況を一通り確認したあと、弥生の家に戻った。
「すみませーん!」
玄関に入り声を掛ける。
「おう! ちょっと待っててくれ!」
奥からおじさんの声が聞こえてくる。
「どうだった?」
「僕も、あれは動物の仕業とは考えられないですね…。何より、作物がすべて腐ってましたから、動物なら食べ荒らすと思います。
それに、ビニールハウスの壊れた部分、"消えて""失くなって"います。
これが一番気になりますね…。」
俺が、自分の見解を話すと、
「そうだよな、俺も同じことを思った。
何よりも臭いんだよな…。
ったく、どうなっているんだか、大晦日だっていうのに…。」
「人手が足りなかったらいつでも呼んでください。 暇しているので。」
「おう、ありがとな!」
気を落としているおじさんに声を掛け、弥生の家を出る。
(さて、帰るか…。
母さんに怒られなければいいけど…。
にしても、あの跡は"不気味"だったな…。)
俺の頭には不安が残った…。
睦月が如月家を出た頃、別の家のビニールハウスでは、夜の闇より深い"異形のもの"が蠢いていた。
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