第二話 ストッキングが盗まれた! 破廉恥! 百足怪人

真夜中の強盗

 宣戦布告を受けて以降グラドルレンジャーの五人は木田の訓練で、五人揃わないと使えないというデメリットはあるものの必殺技を習得して、シキヨクマーの怪人を次々に倒していった。

 しかしシキヨクマーは図太く悪事を続けて、この日もシキヨクマーの怪人が狼藉を働いていた――。


 深更の街並みに溶けこむように森屋靴下の文字がライトアップされた製造所の倉庫で、人間といくらも変わらない大きさの二本脚で立つ百足が蠢いていた。

 倉庫内にはいくつもの段ボール箱が積み上げてあり、どの箱にも森屋靴下の商品がぎっしり詰め込まれていた。

 百足は一箱一箱に貼られた商品識別のシールを、熱心に見る。

 三段目のひとつに目を留めた。その箱のシールにはストッキング・黒という商品名が書かれている。

「これだな」

 積み上げてある箱を上から退かしていき、三段目の箱をひとつ抜き足元に下ろした。

「中身を確認しろ」

 百足が隣に従えている数人のピンクのタイツを全身に被った男の一人に、降ろした箱を開けさせた。

 中身を確認したピンクタイツが百足を振り向き頷く。

「ようし、黒ストッキングの箱を全て運び出せ!」

 百足はピンクタイツ達に指示を飛ばした。

 ピンクタイツ達が箱を腕に抱えて倉庫から出ようとした時、外から疲れたような守衛の男性の声が近づいてくる。

「まだ人がいるのかーい?」

 守衛は倉庫の前で懐中電灯を左右上下に向け人影がないのを知ると、手で倉庫の戸を押し開いた。

 真っ暗な倉庫内に懐中電灯の光が射し百足に当たり、奇怪な生物が守衛の目に触れた。

「ば、ばけものーーーーーーーーーーーーーーー!」

 守衛の叫び声に気づいて、はっとして百足は守衛を振り向く。

 奇怪な生物から逃げようと守衛が身を翻して走り出すと、百足は周りのピンクタイツに命令する。

「あの男を捕まえろ」

 百足の命令に箱を放り出して守衛を追いかけ、守衛の腰が抜けていたこともあり僅か数秒で地面に押さえ込んだ。

「た、たすけてくれー」

 守衛は懐中電灯を手放してのたうち回る。

 彼を取り押さえるピンクタイツに、百足はさらなる指示を出す。

「絞め殺せ」

 ピンクタイツは指示に応じ、守衛の首を人並み外れた膂力で絞めつけた。

「うぐ、う」

 声にもならない呻きを発したのち、守衛の男はこと切れた。ピンクタイツの手が首から離れると、支える物なく地面に倒れ伏す。

 百足はまたもピンクタイツ達に命令する。

「今のうちだ、ブツを運び出せ」

 倉庫内のストッキングが封入されている段ボール箱を、百足とピンクタイツ達はその夜の間に盗み去った。

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