第304話 上納金と安心材料


 結局、彼の従魔三体体制で行われた今回の試合はほぼ全てのプレイヤーを倒して終わった。ほぼ、というのは、その試合に参加していた何人かの人達が本来あるべき姿である、プレイヤー同士による戦いで地に伏したからだ。


 まあ、その戦いに勝利したものも結局は従魔たちの血肉にされたわけだが。


「ん」


 そういえば従魔たちにレベルの概念って存在するのか? 彼の従魔たちは普通の従魔たちよりも多くの戦闘をこなし、より多くの経験値を得ているのだろう。従魔もプレイヤー同様、強くなるはずだが、それはちゃんとした規則や数字に則ったものなのだろうか。


 仮にプレイヤーたちと一緒のシステムならば彼ら、とっても強くなっているのではないか?


「どうしたんですか先輩?」


「い、いや。彼ら、従魔たちにもレベルという概念は存在するのか、と思ってな」


「あぁ、そんなことですか。そりゃ存在するに決まっているでしょう。だってそうじゃなきゃ彼らが戦った経験値が無駄になっちゃうじゃないですか!」


 た、確かにそうだな。経験値的なものが発生していなければ従魔に倒させるよりも自分で倒したほうが良いことになってしまう。


「あ、もしかして今回の試合で物凄く強くなってしまうのでは? とか思いましたか? 安心してください、確かにレベルという概念は存在しますし、経験値も彼らはしっかりもらっています。しかし、その一部は上納金みたく主人に送られています。ですので、急激に強くなった! みたいなことにはなりませんよ?」


 なんだそのヤ◯ザみたいな単語は、ウチはそういうのは真っ平御免だぞ。ん、しかしそれはそれで彼が何もしなくても強くなっているということないか? 結局ダメじゃないか。


「そ、れ、に、まだですよ? 従魔たちはプレイヤーたちのように自分で方向性を絞ったりスキルの取捨選択をすることができません。ですので、生来覚えるスキルのみ覚えることになりますし、経験値もいずれ頭打ちとなってあまり成長が見込めなくなるのです。生物としての格、まあ器のようなものでしょうか? それが決まっている限りいくらそこに経験値を注ぎ込んでも強くはなれないのですよ」


 ふむ、そういうことか。確かに、プレイヤーは隠しパラメータである従魔たちのレベルや経験値が見えないからこそ、無駄になっていると気づかないのか。そしてずっと使い続ける、もしくはどこかで乗り換えてしまう、ということか。なんとも不憫な話だ。


 ん、だがちょっと待てよ。彼女は器がいっぱいになる、と言ったよな? 生来覚えるスキルしか覚えられない、とも。


「つまり、器、いや格を大きくすることができればその問題は解消できる、ということか? 私はそれを実現可能な者を一人知っているのだが、しかもに」


「はっ……! ま、まさか」


 そう、そのまさかなんだよなー。私も彼女の説明を聞いている時に不安に思ってしまったのだよ。彼ならば強制進化でその格の限界を取っ払ってしまえるのではないか、とね。しかし、やはりそうかー。まあ、そうだよな。


 もう、ここまできたら驚きもしない。これも計算通りということなのだろうな。全く恐るべし過ぎてもはや恐怖どころか呆れという感情が湧いてくる始末だ。


 だが、今ではそんな彼がこちらサイドなのだ、少しは気が楽になったというものだ。


「あ!! ってか、今日は試合がまだあるじゃないですか! もう始まっちゃいますよ!」


 全く、また殺戮のお時間がやってきてしまったようだ。彼の所業をしっかりと目に焼き付けておくとしよう。





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久しぶりの説明回。しかし、今日は「ん」と「しかし」が多かったように思います。


運営編はまだ固まっていない設定を教えてくれるので本当に助かっています。

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