第298話 これは一体何の話?
「それで、彼は心界支配を使えるようになったのか?」
ズズズっと蕎麦を食べなが私は彼女に彼について話を聞いた。彼女はサクサクと天麩羅を食べながらこう言った。
「それが、意外にもまだ使えるようになってないんですよねー。いつも私たちの先を行く彼にしては珍しいというか、意外ですが、何かあったのでしょうか? それとも、私たちの思い通りにはなりたく無いんですかね?」
そう言ってハハッ、と面白そうに笑う彼女だったが、私の心の中は一切笑っていなかった。
ふむ、確かに私たちの予想を何度も軽々超えてきた彼であったが、今回はいわば私たちがレールを引いたも同然なのだ。つまりはそれに対して反発している、ということなのか?
もしそうであるならば今まで作ってきた計画が全部パーになるってことだぞ? だって、計画なんてレールどころかほぼ全ての事項を勝手に決めている様なものだからな。彼に許されている選択は乗るか乗らないか、だ。
彼の行動原理が私たちの予想を裏切る、というものであれば必然的に答えが決まって来るのだが……
「はぁー」
「ん、どうしたんですか先輩? 確かに先輩にはため息は似合いますけど、そんなんだと幸せが逃げちゃいますよー? そもそも先輩の中に幸せがあるのか、怪しいところですけどね!」
キャハハ、と先ほどよりも更に楽しそうに彼女は笑っていた。
今思えば私が最後に笑ったのはいつぶりだろうか。心の底から笑ったことなどないように思うな。
「私の幸せ、かー」
「え、ちょなんでそんな辛気臭そうな顔してるんですか? せっかく高いところのお蕎麦屋さんに来たんですよ!? もっと美味しそうな顔してくださいよ!」
いや、もちろん美味しいに決まっている。とても美味しい。だが、何かが違う、そう思わずにはいられないのだ。
「ふっ、そうだな。じゃあ、今日は久しぶりに飲むか」
「え、先輩飲むんですか? なら私帰りますね、先輩の飲み癖悪いって聞きますし」
「え?」
そういうと彼女はスタスタと本当に帰ってしまった。それは一瞬の出来事だった。
というか、酒を最後に飲んだのなんて、私も記憶にないほど昔だぞ? なんで後輩の彼女が私の酒癖を知っているというのだ?
はぁ、まあ私に付き合いたくないから適当言って帰ったのだろうな。確かに賢明な判断だ。私はあまり記憶にはないが酒癖は確かに悪かった気がする。
「でも、そんなに素気無くあしらわなくてもいいじゃないかよー」
私はすでに回ってきたアルコールを感じながら、十年以上ぶりのお酒を嗜んだ。
その後、私がどうなったかは知らないが、気づくと私は自宅のベッドの上だった。
「人間の帰巣本能ってものは、すごいな」
そう思わずにはいられなかった。
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うぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃー!
明日からは運営編もちゃんと復活したいでござるッ!
ではまた明日っ!!!!
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