第197話 スキルの問題児
「先輩、まだまだ彼の統合したスキルはありますからね、ちゃんとついてきてくださいよ?」
「お、おう、分かった」
はてさて、彼は一体いくつのスキルを新たに獲得したのだろうか? 恐れている自分を隠れ蓑に、どこか楽しんでいる自分がいることに少し驚きだ。
「次はですね、思念の頭突きと、ロケット頭突きが統合されました。では突然ですが、ここで問題です。この二つのスキルは一体何に統合されたでしょう?」
おぉ、本当に突然だったな。スキル名か……
頭突きという括りであるから、安直に考えればロケット思念頭突きだが、コレなら問題を出すとは思えない。しかし、それ以外だと私の頭では何も思いつかないぞ?
そうだ、この選定というのは、足し算ではなく掛け算なのだ。だから、それぞれを強化して足し合わせれば……
「想念スペースシャトr
「正解は、パキケファロ頭突きでした!」
「は? パキケファロ頭突き?」
いや、正直にいうと全く当たる気はしていなかった。いや、問題はそこじゃない、なんだパキケファロ頭突きって。
思念とロケットがどう掛け合わさったら、パキケファロになるっていうんだ。コレばっかりは説明して欲しい。
でもまあ、コレくらい突拍子もない答えじゃないと、彼女も問題を出さないのだろうな。彼女自身、私が正解したら悔しがるだろうし。
ん、そう考えると、私は正解しなくてもよかったんじゃないか? 外れた時は少し悔しかったが、それでも何故!? という気持ちの方が勝ったし、彼女は彼女でご満悦そうだからな。うん、コレでよかったな。
「ところで、効果はどのような感じになっているんだ?」
「はい、このスキルは、パキケファロサウルスという太古に存在した恐竜から持ってきているようで、その効果は、自身の生存を賭けて全身全霊の頭突きを行う、というものです。弾け飛ぶように頭突きを繰り出し、もちろん、実体の内的にも通用しますね。
そして、最大の特徴が、この頭突きで相手が倒れなかった場合に、自分が死ぬ、というものです」
「なるほど、己の命を賭けて頭突きする、パキケファロサウルスからとった、というわけか。ん、でも彼の場合はちゃんと死ねるのか? しっかりと命はかかっているのか?」
「……」
おっと、これは嫌な予感がするな。彼、このスキル使って倒せなかったら、ちゃんと死ぬんだろうな? スキルに書いてあるんだからしっかりとそこは遵守して欲しいのだが……
「あ、でも先輩、彼がこのスキルを使って相手を倒せない状況なんて発生しますかね? 彼も自分が死ぬことわかってるなら、絶対に倒せる時にしか使わないと思いますし、普通にコレ使ったら大抵のモンスターは死にますよ?」
「確かに」
後輩が言っていることも一理ある。ただ、ただ嫌な予感がした時は、必ずと言っていいほど当たってしまうんだよな。
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