第196話 スキル取得の謎
「せ、先輩……」
「ど、どうした。大丈夫か、何があった?」
この日の彼女の口調はいつもとは違った。より、何かに怯えているような、恐れているような口ぶりだった。
流石にこれだけ長く一緒にいたら、それくらいの違いは分かるというものだが、それにしても今日の彼女はおかしすぎる。本当に何があったのだろうか?
普通に彼が強くなったくらいでここまでの反応は考えられない。
「か、彼が……」
「彼が?」
「彼がスキル選定によって大幅な、今までとは比にならないくらいの大幅な強化がなされてしまったんです!!」
「な、何っ!?」
「ふぅ、一旦落ち着きますね。一つずつ説明させていただきます。彼はその選定人にお任せしてスキルを統合していきました。まず最初に、過食、悪食、変換の三つのスキルを統合し、悪衣悪食というスキルを獲得しました」
「ふむ、三つのスキルから四字熟語スキル一つか。そこまで強化されているのか?」
「はい、選定の恐ろしいところがまさにそれなんです。素材となったスキルが単純に足されるだけではなく、掛け算されて統合されるのです。ですから、組み合わせ次第ではとんでも無いことになってしまうのです。コレはまだマシな方ですが、悪衣悪食は、どんなものでも食べれるようになり、その総量に応じて、好きなステータスを三時間の間上昇させる、というものです」
「なるほど、効果を一見聞くだけでは分かりにくいが、おそらくその上昇幅がすごいのだろう?」
彼女がコレだけ怯えているというのはそういうことだろう。コレでまず最初に、だから、ことの大きさがわかるというものだろう。
「はい、あくまで推定ですが、彼の特性も相まってかなりの数値が出ると思われます」
「スキルと称号の効果アップか……恐ろしいな。次は、どんなスキルなんだ?」
「はい、次はですね、花鳥風月と明鏡止水を組み合わせたスキルになります」
「ん、つまりは鏡花水月なのか?」
「と、思うじゃないですか。でも、結果はそうじゃなくて、明烏止風、というスキルになったのです」
「あけがらすかぜやみ?」
「えぇ、明るいに烏、そして止まるに風ですね」
「なんでまた、そんなスキルになったんだ? あ、鏡花水月の逆ってことか?」
「はい、一応そうですが、それに伴って? なのかは分かりませんが、鳥が烏になってるのです。まあ、一応明烏という言葉があるので、それにかけたかは分かりませんが」
「ふむ、SSZSの考えていることはよくわからんな」
「そうですよね、コレに関しては本当に謎でしかないですよね。そして次なんですが……」
「ちょっと待った、まだ明烏止風の効果を聞いてないんだが?」
「ああ、完全に忘れていました、すみませんすみません。効果は自分のバフと相手のデバフですね。コレでいいですか?」
えぇー、雑。このスキルに関しては本当にただただ名前に関して言いたかったんだろうな。
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