第145話 タイミングとタイキック
「あれ? なんか彼、帰らずの塔とは別の方向に向かってますよ? 即死無効という強力なスキルを手にしたのに、何で攻略に行かないんですか?」
「本当か? そっちの方向には何がある」
「え、疑ってるんですか? えーっとこの先にあるのはー……分かりませんね。暗殺ギルドが先にあるんですが何の用でしょう? ここが本当の目的なのかも怪しいですが、ここだとしても検討がつきませんよ?」
確かにそうだな。わざわざ塔の攻略を中断してまで向かうべきところなんてそもそも少ない気もするが、なぜ今ギルドに向かう必要があるのだろうか。
「あ、暗殺ギルドに彼が入っていきます!」
流石にここが目的地だったか。しかし、それでも分からない。一体何をするんだろうか。
「あ、出てきましたね。どうやら中で素材を売り払っていたようですね」
「素材?」
ますます謎は深まるばかりだな。彼が素材を売ること自体滅多にないのだが、それを今、わざわざ行う理由とは?
いや、お金が欲しいというのはわかる。何かを買いたいのだろう。しかし、このタイミングというのが奇妙で違和感なのだ。目の前に攻略しがいのある壁があったら、人は登りたくなるものではないのか?
特にゲーム好きな連中はそうだろう。かくいう私もそうだからだ。
なのに中断する理由、それほどまでに緊急性を要する買い物なんて、このゲーム上にあるのか?
一般プレイヤーであれば、、それこそ回復ポーションとかの消耗品類は補充しなければいけないだろう。しかし、彼がアイテムを使ったことなど一度も見たことはない。
だからアイテムの購入という路線は限りなく少ないだろう。
そうなってくるとなんだ? というか、今まで彼がお金を使ったことあるものってなんだ?
「はっ、装備だ。彼はおそらく装備を作ろうとしている!」
それならある程度まとまったお金がいるから、素材を売り払ったのもわかるし、攻略途中に、自身の装備が心許なくなり、変更するという話はよくあるだろう。これは正解をもぎ取ったのではなかろうか。
「彼は今どこへ向かっている?」
「えーっと始まりの街ですね」
よし、彼の行きつけはあそこの隠し鍛冶屋だったからまず間違いないだろう。
「先輩、嬉しそうな顔してるとこ申し訳ないんですが、彼がスキルの補充をしに向かった、とは考えられませんか?」
「え?」
「いや、彼はもうすでに十分強すぎる装備をしていますし、装備は作るのにかなりの時間がかかりますよ? それなのにわざわざ制作を依頼しにいくでしょうか? 即戦力として使えるのはスキルの方ですし、攻略途中ならスキルの方が可能性としては濃厚だと思うのですが……」
「あ、確かに」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます